遅ればせながら、東北歴史博物館「大シルクロード展」を観た感想をサクッと書きたい。
※「世界遺産 大シルクロード展」作品リスト
https://www.thm.pref.miyagi.jp/wp-content/uploads/2024/01/9430fb15683979ad103672bc3956d438.pdf
いにしえの「シルクロード」は、私的には憧れとロマンが詰まった地である。イメージするところは石田幹之助「長安の春」と岑参(715-770年)「胡笳歌 送顏真卿使赴河隴」辺りなのだけれど。
君不聞胡笳聲最悲,紫髯綠眼胡人吹。
吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。
涼秋八月蕭關道,北風吹斷天山草。
崑崙山南月欲斜,胡人向月吹胡笳。
胡笳怨兮將送君,秦山遙望隴山雲。
邊城夜夜多愁夢,向月胡笳誰喜聞。
閑話休題、実際のところは砂埃まみれのソグド人、ウイグル人、中国人などの商人たち、それに、荷を積むラクダなどの行き交う、広大で過酷な道程だっただろうと想像する。
《駱駝》(唐・8世紀)洛陽博物館
《尖頂帽》(前8-前3世紀)新疆ウイグル自治区博物館
上↑写真のフェルト帽は砂漠の乾燥地だからこそ、そのままの姿で発掘されたらしい。西洋の時代的には古代ギリシア時代頃だろうか?
で、興味深い青銅造りの騎馬遊牧民族像が展示されていた。
《男子跪坐像》(前5-前3世紀)新疆ウイグル自治区博物館
解説によると、「腰布のみを着け肉体を強調する表現は同時代のギリシア文化の影響とも考えられている。2000年以上前のユーラシア大陸の東と西の文化がうかがえる貴重な作品である」とのこと。なにやら頭の被り物もギリシア戦士の兜っぽく見えるし、なかなかに興味深い。
更に目を惹かれたのは、綴織壁掛けだった!!驚くのは武人像の顔の立体的写実描写であり、例えば、ポンペイからの出土品と言われても信じてしまいそうだ。
《半人半馬および武人像壁掛》(前2-後2世紀)新疆ウイグル自治区博物館
解説によると、「被葬者のズボンの一部だったが、もとは大きな西方の綴織技法で制作された壁掛であった。上部には半人半馬を表し、下部には武人の頭部が見られる。顔の表現は写実的で、糸色の濃淡により立体感を見事に表現している。」とのこと。西と東の文化・物流の痕跡がシルクロードから見えてくる。
更に私的に興味深かったのは、粒金の装飾品であった。
《金製飾り(3点)》(吐蕃・7-9世紀)青海藏医薬文化博物館
地中海世界、特に古代エトルリアの粒金細工は有名である。その粒金細工の技術がシルクロードを経て吐蕃(チベット)まで伝わっていたのが確認できたような気がした。すると、伝弘法大師(空海)所持《金念珠》(唐・9世紀)も了解できるのだよね。
https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/73ed895c106a01022d25af6f143b8878
この展覧会ではユーラシア大陸の東と西を結んだシルクロードの様相が、西域の様々な出土品から身近に感じられた。故に、現代ウイグルやチベットの人々の文化が破壊されるのは心が痛む。