日帰りで東京に行ってきました。今回は二つの展覧会を観るためでした。
・東京都美術館「奇想の系譜展」
私も辻惟雄先生の『奇想の系譜』を読んで江戸時代の絵師の絵を色々観るようになったので、今回の展覧会は「おさらい」という感じもしましたが、初見作品もあったり、本当に眼に嬉しい濃い内容の企画展でした。展示は各絵師ごとの展開で、それぞれの濃く強烈な個性を特徴付ける作品が並ぶのですが、もっとディープな作品があるのになぁとか、もっと作品数があったらなぁとか、欲張りな感想も持ってしまいました 。で、若冲は勿論ですが、曽我蕭白の奇想の裏付けの「上手さ」もよくわかりましたし、鈴木基一(今回奇想の仲間に入れてもらえた♪)が若冲から影響を受けたかもしれないなんてね!基一《百鳥百獣図》を観てそれもあり得るかもと思ってしまいました。
・三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡展」
ジョン・ラスキン(John Ruskin, 1819 - 1900)生誕200年記念の展覧会であり、ラスキンの水彩画やラスキンから影響を受けたラファエロ前派作品が並ぶ展覧会でした。ちなみに、個人的にはラスキンってあまり好きじゃないです。『ヴェネツィァの石』でカラッチ派の悪口書いてますし、映画「ターナー」(でっぷりターナー!)でもマザコンのオタクって感じでしたしね。でも、ラスキンの水彩スケッチなどを観ると意外に上手かったり、その評論(ゴシック偏愛なのね)・啓蒙活動などを通して、当時の英国美術界にとっては保守化したアカデミー路線からの革新に必要だった人物だったのだろうなぁとは了解できました。
ちなみに、会場の一部屋だけ撮影可でした。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア》(1863-68年頃)ラッセル=コーツ美術館
展覧会はラスキンやターナー、ファエル前派作品が並ぶことにより、人的つながりもわかったし、芸術家同士の女性トラブルも狭い交友関係から来ているんじゃないかと邪推したり、なかなかに興味深い展覧会でした。でもねぇ、バロック好きにとっては、「だけ」とは言わなくとも、やはり「美しい」絵ばっかりじゃん、と思いましたね(笑)。
Charles Augustus Howellという人がいて、シャーロック・ホームズもの「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」(犯人は2人) のモデルだそうです。URLの当方ブログにネット情報をもとに書いてみました。
ラスキンも周囲の画家たちも、なにやらヤバそうな秘密を色々抱えていたのではないかと...。2年で秘書解雇できて何よりだったかもです(;'∀')。ホイッスラーがハウエルを好意的に見ているのも、ラスキンの敵は自分の味方という認識があったのかもしれませんね(^^;;
で、ミネアポリスの《旭日老松図》がex.バーク・コレクションだとしたら、私も以前「バーク・コレクション展」で観ている可能性があります。会場で確認してみたいと思います。
私的にはキンベル美術館からの出展が驚きです。懐かしい作品に再会できそうです。
これはローマの「メムリンク展」で《祝福のキリスト(Cristo benedicente)》の解説に書いてあったのです。図録購入しなかったので、残念ながら確認はできません。ブログを書いた当時、私もネット検索したのですが、1件だけ不鮮明な画像の「英国個人蔵」がヒットし、それをリンクしたのですが、実物画像だったのかは疑問とするところでした。なので、私的にも何とも言いようがないところです。
一方、都美で展示された《mater dorolosa》も(図録購入していませんが)会場の表記には「ペルジーノと工房《悲しみの聖母(Mater Dolorosa》」と表記されていました。ウフィッツィの現在のサイトではメムリンク作品中《mater dorolosa》のみ画像が出ていません。ウフィッツィにオリジナル作品とペルジーノ(+工房作品)作品の2枚あるというのも考え難いものがあります。都美の展覧会でも「メムリンクの模写」というキャプション無して展示していましたから。
〇>mater dolorosa
失礼しました。
どうもUffiziのこの作品(URL)、最近、イタリア人による模写になったのではないか?と思ってます。最初は、デューラー、1971年のウフィッチ カタログではヨース・ヴァン・クレーブ、最近のネット公開情報ではメムリンクと転々としております。おそらく基底材が松かポプラだったか油彩ではなくテンペラだったか?という科学調査によるものではないかと想像/空想してます。細かいことは別途書く予定
で、帰属問題は最新の研究が日々更新されますから難しいところですね。