ローマのパラッツオ・バルベリーニ(国立古典絵画館)で観た「カラヴァッジョ《マッフェオ・バルベリーニの肖像》初公開展」の感想をサクッと書きたい。
感想を一言で言えば、本当に生き生きとした素晴らしい肖像画だった!!
公式サイト(英語):https://barberinicorsini.org/en/evento/caravaggio-the-portrait-unveiled/
この作品は「1963年にパラゴーネ誌に掲載されたロベルト・ロンギの論文「Il vero 'Maffeo Barberini' di Caravaggio」で初めて発表され...バルベリーニ家コレクションの1930年代財産散逸の際に個人コレクションに入ったもので、カラヴァッジョの主要研究者すべてがカラヴァッジョの手によるものと同意している。」(省略意訳あり)
↑ 展示会場風景
ちなみに、作品についてはWikipedia日本語版が一番詳しいようだが、残念なことにマッフェオ・バルベリーニの誕生年が間違っている。多分タイプミスだと思うが、1586年とあるが正しくは1568年である。それと、ベルニーニ描く肖像画の制作年も、1518-1520年とあるが1631-1632年である。(書いた方修正してね)
ということで、単眼鏡片手にしみじみと作品を眺めた感想をば。
カラヴァッジョ《マッフェオ・バルベリーニの肖像》(1598年頃)個人蔵
マッフェオ・バルベリーニは後にローマ教皇ウルバヌス8世となるが、カラヴァッジョの描いた当時は教皇庁の「キエリコ・ディ・カーメラ (会計院聖職者)」であり、意欲ある青年(30歳)の溌溂とした若さと知性が画面から溢れ出るようだ。
彼はガリレオ・ガレリイとも親しくするほどの科学にも文化にも造詣の深い知性派であり、親しいデル・モンテ枢機卿からカラヴァッジョを紹介されたようで、新進気鋭(当時の現代美術)の画家に肖像画を描かせる開明な気質を感じる(教皇になる前だからね)。
絵の中の彼には、画面の左前にいる人物に対し右手で指差しながら何かを伝えようとしている「動き」がある。左手には手紙(書類?)を持っていることから、その内容についての指示かもしれない。カラヴァッジョにしては珍しくもストップモーションではなく、一瞬の動きの見えるリアルなドラマを描いた肖像画であると思う。
何よりもマッフェオの眼が生き生きとヌメヌメとして素晴らしい!!知性の光を宿す眼の質感描写における白の点描(光)の巧みさ!!微妙な唇の形は物言う動きを感じさせる。耳の描き方はちょっと?だったけど。それと、濃青緑のガウンに筋のように見える縁取り(裏地?)が赤色であり、この補色の赤がぴりっと効いていた。
カラヴァッジョの白の使い方は本当に上手いと思う。この白シャツのドレープ表現にも「らしさ」が滲み出る。マッフェオの動きは短縮法を巧みに使った実に自然なポーズであり、この短縮法はロンドンの《エマオの晩餐》に引き継がれるのであろうか? 人差し指の曲がり具合は《聖マタイの召命》に通じるのだろうか? それと、座椅子や書類筒の静物画的描写、特に椅子の金属鋲の光と質感描写も上手い。
とにかく、想像通り素晴らしい肖像画であった!!マッフェオも納品時には満足したはずだと思う。カラヴァッジョは他にも肖像画を描いていただろうが、将来出世が見込めそうな(パトロンとして有望な)「キエリコ・ディ・カーメラ」の肖像画は、多分、特に念入りに意欲的に描いたのではないかと想像してしまった
ちなみに、こちら↓はマッフェオ=ウルバヌス8世が御贔屓のジャン・ロレンツオ・ベルニーニの描いた《教皇ウルバヌス8世の肖像》だ。すっかり老けてしまったけれど若き日の面影はあるよね。
ジャン・ロレンツオ・ベルニーニ《ウルバヌス8世の肖像》(1631-1632年)パラッツォ・バルベリーニ
下↓は同じく胸像彫刻である。ベルニーニ作品としてはボルゲーゼ美術館のパウルス5世やシピオーネ・ボルゲーゼの胸像の方が好きだなぁ。
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ《ウルバヌス8世の胸像彫刻》(1632年頃)パラッツォ・バルベリーニ
ということで、急ぎサクッと感想で相済みませぬ。