花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」感想・番外編

2016-03-05 09:01:59 | 展覧会

「カラヴァッジョ展」感想文を続けたいのだが、ちょっと所用ができ、日曜夜まで時間的余裕が無くなる。なので、番外編として、2011年春のローマ「Caravaggio a Roma」展を観た時に撮った画像を少し紹介したい。

パラッツォ・サピエンツァ「Caravaggio a Roma」展 

以前にもブログで一部紹介したが、この国立公文書館での展覧会には、今回来日しているカラヴァッジョ事件簿などの所蔵史料が展示された。何しろ横文字苦手な私にはインクの滲むイタリア語筆記文字はお手上げで、今回の展覧会での日本語解説は本当に嬉しかった!

 

今回の「カラヴァッジョ展」にも来日している「史料」が展示された。

しかし、カラヴァッジョの取り調べ調書に描かれた剣のイラスト(?!)はしっかり覚えており、今回再会し、思わずニヤリとしてしまったのだけどね(笑)。

この展覧会にはバリオーネやオラッツィオ・ジェンティレスキなどの作品の他に、前回では紹介していなかったが、実はアンニバレ・カラッチ《聖女マルゲリータ》や、カラヴァッジョ《パウルス5世の肖像》も展示されていたのだ。

アンニバレ・カラッチ《聖女マルゲリータ》(1597-99年)サンタ・カテリーナ・デイ・フナーリ教会

この時点で《パウルス5世の肖像》が本当にカラヴァッジョ真作なのか私的に疑問だったので、ブログで紹介するのをためらっていた。

カラヴァッジョ《パウルス5世の肖像》個人蔵 

今回の「カラヴァッジョ展」で作品の世界分布一覧の「個人蔵作品」の中に入っているのを見て、取りえず画像を出すことにした。近年、カラヴァッジョ真作発見報道が多く、カラヴァッジョ偏愛の美術ド素人は戸惑うばかりだ。 

ということで、「カラヴァッジョ展」感想はまだまだ続きます(^^ゞ


国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」感想(3)

2016-03-04 00:59:01 | 展覧会

さて、今回のカラヴァッジョ来日作品の中に3点の個人蔵作品が含まれている。なかでも2014年10月に真作発表された《法悦のマグダラのマリア》は、展覧会直前に「世界初公開!」とセンセーショナルにマスコミでも取り上げられた。 

専門家が真作と判断するにはそれなりの根拠があることは了解している。今回も絵に添付されていた書付け(紙切れ)に基づく調査や、他のコピー作品との比較検証を経てのミーナ・グレゴーリによる真作発表だったのだから。そんな経緯を知っていても、美術ド素人は自分の目で確かめたいと思うものだ。まぁ、哀しくも1枚だけ観て真作だとわかる眼力などあろうはずもないのだけれど(^^;;;

実際に《法悦のマグダラのマリア》を観てみると、「これが真作なのね」と眺めつつ、柔軟さに欠ける心(年寄りだから)は真作として受け入れるのに少し躊躇してしまった(汗)。肌蹴たブラウスの陰影描写がド素人眼に少し気にかかったのだ(多分にカラヴァッジョ偏愛の複雑な心理も含まれている)。しかし、質的には十分納得できる作品であり、とにかく観ることができて嬉しかった!!! 

あ、念のため付け加えると、へそ曲がり的に書いてはいるけれど、カラヴァッジョ作品として本当に質的に素晴らしい作品なのだ。自分の受容過程を書き綴っているので、誤解しないでね。

暗く深く塗り込められた背景の左上方には微かな光とともに十字架が見える。荊冠が掛けてあるようだ。呼応するように仰ぎ見るマグダラのマリアの薄く開かれた眼から零れる涙が美しい。

カラヴァッジョ《法悦のマグダラのマリア》(1606年)個人蔵

この左上方からの光に仰角の顔の陰影は、後の《聖女ルチアの埋葬》(パラッツォ・ベッローモ)に引き継がれているように思えた。しかし、喘ぐようにわずかに開く下唇が、褪色だろうか?灰色を帯び、なにやら異様な情感を漂わす。この下唇、まるで江戸の浮世絵美人のようではないか? 更に、首から肩にかけての曲線も官能的で、もしかして、江戸美人の色気と通じるものをカラヴァッジョは下唇に込めようとしたのかもしれない。 

図録を読むと、グレゴーリ女史は組んだ指の影にご執着のようだが、確かにマグダラのマリアの指はとてもカラヴァッジョらしかった。カラヴァッジョの描く指はたいてい頼りなく、ぐにゃりと曲がりそうな指なのだ(汗)。この他にもカラヴァッジョらしさは作品の中に散見できるし、真作として受け入れなくてはいけないのだろうなぁ、と思ったのだった。などと、ド素人のくせに偉そうにスミマセンです(^^;;;;; ちなみに、感想も続きます(^^ゞ


国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」感想(2)

2016-03-02 23:31:19 | 展覧会

今回の「カラヴァッジョ展」会場は、予想通り照明に工夫が凝らされていた。天井のスポットライトの他に床からのボックス照明も加わり、カラヴァッジョ作品の魅力を最大限に引き出そうとする努力が見える。特に効果を発揮していたのは《バッカス》であり、頭の髷に飾られた紅葉した蔦の葉が、ウフィッツィで観る以上に新鮮な色彩として目に飛び込んでくる。《バッカス》好きとしては嬉しい照明の贈り物だった。 

カラヴァッジョ《バッカス》(1597-98年)ウフィッツィ美術館

しかし一方、ウフィッツィでは平坦な照明の下、近づいて観察できる「フラスコに映るカラヴァッジョの顔」はあきらめなければならない。今回の会場では展示作品と細いロープで仕切られた距離の他に、作品が通常よりも高い位置に展示されており、作品との距離感が実際以上に大きく感じられる。単眼鏡をお持ちの方は必携だろう。

ということで、まずは展覧会構成から。各章に展示されているメインのカラヴァッジョ作品もあわせて記す。

Ⅰ)風俗画:占い、酒場、音楽 《女占い師》

Ⅱ)風俗画:五感 《トカゲに噛まれる少年》

Ⅲ)静物 《果物籠を持つ少年》・《バッカス》

Ⅳ)肖像 《マッフェオ・バルベリーニの肖像》

Ⅴ)光 《エマオの晩餐》

Ⅵ)斬首 《メドューサ》

Ⅶ)聖母と聖人の新たな図像 《洗礼者聖ヨハネ》・《法悦のマグダラのマリア》

☆)ミニセクション:エッケ・ホモ 《エッケ・ホモ》

★)各章および終章に国立古文書館からのカラヴァッジョ関連史料展示あり。 

カラヴァッジョ《エッケ・ホモ》(1605年)パラッツォ・ビアンコ

この構成を見ると、確かにカラヴァッジョ作品の特色を網羅しているのに気が付く。更に一次史料展示を含めると、まさに賢明な構成と評価できよう。だが、限られたカラヴァッジョ作品を補足説明するカラヴァッジェスキ作品の質の高さも嬉しかったが(全部とは言わないまでも)、如何せん、数の少なさが気にかかった。章の多さと補足作品の少なさが全体的にサックリ感を増幅し、最新の調査研究の詳細さがクールさを漂わせるのだった。Cool...褒め言葉でもある。 

ということで、作品感想については次回に続く…(^^ゞ


国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」感想(1)

2016-03-01 23:52:08 | 展覧会

雪の降る仙台から新幹線に乗り、国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」を観た。

感想としては、意外にクールな展開に西美らしさが窺え、学術的な観点から企画されたのだろうなぁと、美術ド素人的に興味深かったし、好もしくもあった。なにしろ、某雑誌のようなスキャンダラスな扱いを極力避けていただけたのも有り難かった(笑)。 

その代りに国立古文書館からのカラヴァッジョ事件録や言及録が展示され、あの短気で喧嘩っ早い変人ぶりを「史料」から見せてくれるし、また、カラヴァッジョ作品がどのように評価されていたのかも知ることができる。さすが、西美、ローマの「Caravaggio aRoma」展もチェックしていたのでしょうね。併せて石鍋先生のご本も出ることだし。 

そして、私的に一番嬉しかったのは、日本語で解説が読めること、音声ガイドが聴けること、図録が読めること!なにしろ、作品とともに、最新のカラヴァッジョ研究の成果を苦労せずに知ることができるのだ!! 

それなのに、ツッコミするのも畏れ多いのだけど、カラヴァッジョ作品分布地世界地図に、個人蔵《ジャンバティスタ・マリーノの肖像》が見えなかったは何故??私の見落としだったのかな??? 真作扱いじゃなくなったの???? 

ということで、詳細は次回と言うことで(続きますよ~(^^;;)