録画してあった映画の中から11月の終わり頃、「博士の愛した数式」を何気に見てみました。
作者の小川洋子さんはデビュー当時、私が勤めていた学会が鉄鋼関係だったため、彼女のご主人が
当時の川鉄水島製鉄所に勤めていたので職場でもかなり話題になりました。
私は彼女の本は読んだことはないけれど、母が残した本の中にこの本がありました。
特に持ってくることもなかったのだけど・・・
興味深い作品でした。映画だけしか見ていないけれど数学という不思議な世界が広がり、
人間のつながりというのものを感じました。
キャストがどれもぴったりですごくよかったです。寺尾聡はやっぱいいいですね。
浅丘ルリ子もただものではない感があり、ぴったりの役柄でした。
薪能のシーンでは小川洋子さん自身も写っていて、大鼓が若いころの亀井広忠でした。
私が初めて能を見たときに心揺さぶられた大鼓です。
2006年 1時間57分
監督:小泉堯史 原作:小川洋子「博士の愛した数式」 脚本:小泉堯史 撮影:上田正治 北沢弘之 美術:酒井賢
音楽:加古隆 衣装コーディネーター:黒沢和子
出演:寺尾聰 深津絵里 斎藤隆成 井川比佐志 図師佳孝 伊藤紘 茅島成美 観世銕之丞 吉岡秀隆 浅丘ルリ子
ロケ地:上田市、真田町、立科町、千曲市、軽井沢町、小諸市ほか
この映画で衝撃的だったのは主人公の博士が記憶が80分しか残らないけれど、義理の姉の
記憶だけは残っているという設定。
自分自身の記憶も消えていくだろうと思うと、今、この時間を生きるということをすごく
大切に思います。
ほか、サンテクジュペリのような言葉が出てきたり、数式の説明がなぜか面白かったです。
聞いたことのある法則もありましたが、新鮮でした。ときに分子とか宇宙とかロマンを感じるの
ですが、直線についての会話が印象的でした。
直線を紙に書くことはできますが、厳密に言えばそれは直線ではありません。
本物の直線というものはどこまでも無限に続いていくものであり、どれだけ細い鉛筆で書いても「幅」ができてしまいます。
では「真実の直線」はどこにあるのでしょうか。
「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目に見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。」
永遠とか時間とかそんなことがちりばめられていました。
To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand,
And Eternity in an hour.
映画のラストに不意に私の好きなウィリアム・ブレイクの日本語訳が出てきたときには
その突然さに涙が出てきました。
味わい深い映画でした。