2月26日
明治/大正/昭和/平成/令和
江戸蒔絵赤塚派三田村の漆藝家としての家訓は、同じ表現はしてはいけない、というものでした。 先人の努力の結晶
である技法は受け継ぎつつも、一目で作者がわかる作品を発表しなさいということです。 それぞれが自分を模索する中で
漆以外の美と技法も学んできました。 明治から続く三田村家4代、5人が創り出す漆藝作品は、受け継がれて来たものと
自らが創始したもの、時代の美意識の違いが合わさり、さまざまな表情をしています。 まさに伝承から創新の結果なのです。
5人の個性が創り出す漆藝の世界を鑑賞していただければ有り難いことです。( 三田村 有純 )
富士山の手前の山にも雪が少し積もっていた晴れ渡った月曜日。
中学の同期の三田村君の展覧会に同期生3人と一緒に伺いました。
よくわからないストレスフルな渋谷駅からバスに乗って世田谷区のギャラリーへ。
三田村君のギャラリートークで作品を鑑賞しました。
この部屋に三田村家のすべてがあるとのことでした。
三田村自芳 (祖父)
朝顔の葉とコスモスの花・・そして朝顔の種。
命の移ろいを描いています。
三田村秀芳 (父)
大正から昭和にかけてのモダンなデザインの画風の作品です。
多くのデザインも手掛け、今でも私たちの身近な商品にも使われています。
昔はグラフック・デザイナーもいなくて、工芸家等が依頼されてデザインしていたと
後から1階のパッケージの前で奥様に伺いました。
三田村有純
三田村君のテーマは天と地とその間の水(龍)・・
いつも壮大な宇宙観の作品です。
三田村雨龍 (長男)
木彫の分野でも活躍されている雨龍さんの新しい感覚の漆工芸のオブジェ。
自芳氏のまいた種がここまで飛んで芽を出しました。
三田村有芳(次男)
りんごを時間軸の変化ともに。
中国精華大学で学び金属工芸をベースとして15年間中国で研鑽を積まれたとのこと。
祖父から息子さんたちの作品が一堂に会していました。
祖父がまいた種がはじけてひ孫までつながった三田村家4代がそれぞれ古い技法を学びながら
新しいものを追求していった結果です。
隣にはお孫さんの作品もあり、三田村家5代が繋がっていました。
古いものを守るだけでは滅びてしまうという祖父の教えを守り、それぞれが独自の世界を作り上げ見事なものでした。
祖父に当たる三田村自芳氏の生命に対する表現が素晴らしく、牧野富太郎の植物画のようでもあり、小動物が必ずいたり、
新しい命が生まれることを予期する、自らは滅びゆく姿などただ美しい蒔絵でない宇宙や自然を感じさせる作品でした。
自然に対する思いはひ孫の代までしっかりと伝わっていました。
三田村君はペルシャ絨毯の研究者でもありました。
ウィリアム・モリス研究のことは知っていましたが・・
小さなアリも描かれています。
テントウムシも
三田村君の春の雨が感じられる漆の絵も素敵です。
木の実をイメージしたペンダントトップ
水分を芽に与えるさまを表現したお芋
昼と夜、遠近を描いたもの。 時間と空間の変化を一枚の絵に込めています。
私は月の光かと思ったけど・・・
どれが明治時代か大正か、昭和か楽しみながら見ました。
三田村君が戦争中紙にくるんで防空壕の下に隠して作品を守ってきたと話していましたが、文化財を守ってきた
三田村家は女性が支えてきたからこそ存在したと語っていました。👏
その奥様からもたくさん説明をお聞きして、漆の世界がより分かるようになりました。
縄文時代から受け継がれてきた日本の伝統工芸。抗菌・防火作用もあるのに、使い捨ての物に変わっていく時代。
大切に守って行きたい文化だと改めて思いました。
Feb. 26 2024 Setagaya