碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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J-CASTニュースで、「スーパーハイビジョン」についてコメント

2013年06月10日 | テレビ・ラジオ・メディア

スーパーハイビジョン「8K」
2020年放送開始 
消費者「テレビまた買い替えか」の冷たい反応

国内で地上デジタル放送(地デジ)への完全移行が完了してから間もなく2年。今日では、さらに先を見越して高精細な映像技術が研究されている。

フルハイビジョンの16倍の解像度となる「スーパーハイビジョン」は、2020年にも本放送開始を目指す。だが十分な番組コンテンツがそろうのか、視聴者がそこまで高画質な番組を見たがるか、など不透明な部分も残されている。

サッカーW杯や五輪開催に間に合わせる

総務省が2013年5月31日に開催した「放送サービスの高度化に関する検討会」で、次世代の高画質放送に関する具体的なスケジュールがまとめられた。現行フルハイビジョンの4倍の画素数となる「4K」は2014年、より高画質な「8K」は2020年に、それぞれ商用サービスを本格化する予定という。

「8K」はスーパーハイビジョンとも呼ばれる。2014年はサッカーワールドカップ、16年にリオデジャネイロ五輪とビッグイベントが目白押しで、2020年の五輪は東京が招致を目指している。「東京五輪」に間に合うように、日本が世界に先駆けてスーパーハイビジョンの開発を成功させたいとの思いがありそうだ。

「4K」はすでに、主要電機メーカーがテレビ受像機を発売している。ソニーの最新モデルは55型で50万円程度。「初代機」である84型・168万円と比べると価格はずいぶん下がったが、普及を考えるとまだ高額だ。

それでも、調査会社GfKマーケティングが6月3日に発表した「薄型テレビ市場動向」によると、50インチ以上の大画面テレビの需要は伸びており、2013年5月では数量で前年比18.3%増を記録したという。同月の4Kテレビの販売数量も前月比5.4倍と急成長を記録。メーカーにとっては価格下落と需要減に悩まされているテレビ販売で明るい兆しが見えてきたかもしれない。

ここで思い出すのが「3Dテレビ」だ。国内で2009年に公開された米映画「アバター」が火付け役となり、3D対応の映画が次々と制作される一方、電機メーカーは急ピッチで3Dテレビを市場に投入し、家電量販店では一時3Dテレビが売り場の主役となった。

だが3Dで見られるテレビ番組がなかなか増えず、テレビ受像機の価格も一般の薄型テレビに比べて割高。「どうしても3Dテレビが欲しい」との消費者ニーズが高まらず、市場の活性化にはつながっていない。

「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現

4Kをも上回る高精細のスーパーハイビジョンは、NHK放送技術研究所のウェブサイトに概要が載っている。「あたかもその場にいるような臨場感」「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現し、100度の視野角で見られるという。専用のカメラやプロジェクター、ディスプレーの開発も進めてきた。

4Kやスーパーハイビジョンと技術の進歩は望ましいが、商用サービスの開始時に十分な映像コンテンツがそろうだろうか。3Dテレビでの「つまずき」の再現が心配だ。

またテレビ受像機は地デジ移行前に「買い替え需要」が一斉に高まったが、その数年後に4K、さらにスーパーハイビジョンと短期間で新方式が導入されても、決して安くない高画質テレビに変えようとするか疑問だ。

「また買い替えか、のひと言に尽きます」と話すのは、上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)。J-CASTニュースの取材に、4Kやスーパーハイビジョン対応型のテレビが、一般家庭には容易に普及しないとの見方を示した。

テレビの主要コンテンツは、情報と娯楽。ニュースのような情報は速報性が重要だが、高画質である必要はない。娯楽も「クイズや、お笑い芸人のバラエティー番組をスーパーハイビジョンで見たいと思う視聴者がいるでしょうか」。

ドラマやスポーツ、映画では効力を発揮しそうだが、それでも新型テレビが「価格破壊」でも起こさない限り、購入間もないデジタルテレビから「超高画質」に乗り換える気にはならないだろうと碓井教授は考える。

コンテンツを提供するテレビ局も、NHKやキー局に比べて資金が潤沢でない地方局にとっては負担が大きいと指摘。ようやく地デジ対応が済んだばかりなのにスーパーハイビジョン導入でカメラをはじめとした機材の総入れ替えとなれば、莫大なコストがかかり経営体力がもたないというわけだ。

碓井教授は、映画館の大型スクリーンや街中に設置されるデジタルサイネージのような「パブリックな場面」なら、4Kやスーパーハイビジョンといった鮮明な映像を流す価値はあると話す。

技術開発を進めていくのも賛成だ。だが「1960年代の白黒からカラー、2011年のアナログからデジタルのような家庭での『テレビ総入れ替え』を今の時期にまた進めよう、というのは違和感があります」
とこたえた。


(J-CASTニュース 2013.06.09)


久米宏さんが、先日の「講演」で話したこと

2013年06月10日 | テレビ・ラジオ・メディア

先日の放送批評懇談会の創立50周年記念式典。

この時、「50周年記念賞」を受賞した久米宏さんが講演を行った。

久米さんにお会いするのは久しぶりだったので、講演前に会場ロビーでご挨拶した。

相変わらず、張りのあるいい声だ。

ただ、講演自体は、式典およびギャラクシー賞贈賞式の取材陣への対応で動いていたため、聞くことができなかった。

ロビーでは、その映像は流れていたが、音声が出ていなかったのだ(笑)。




残念に思っていたところ、産経新聞がその要約を掲載してくれた。

当日の雰囲気が伝わってくる。

以下、転載です。


久米宏が明かす
「Nステ」「ザ・ベストテン」裏話 
国会招致覚悟したことも…

優れたテレビ、ラジオ番組などを表彰するギャラクシー賞を主催し、放送批評発展に力を注いできたNPO法人放送批評懇談会は今年、創立50周年を迎えた。

3日に東京都目黒区で開かれた記念式典では、「50周年記念賞」が贈られたフリーアナウンサーの久米宏氏(68)が「ラジオとテレビと格闘した46年。ほぼ50年です。」と題して講演。「ザ・ベストテン」や「ニュースステーション」など数々の有名番組の舞台裏を明かした。

 ■「話したのは一度」

「よく大きな賞をいただいた方が『身に余る光栄』と仰るのを不思議に思っていたが、本当に身に余る光栄があるんだと、初めて知りました」

受賞の喜びをそう表現して講演を始めた久米氏。これまで講演依頼はすべて断ってきたため、意外にも、講演という形式は初めてという。

久米氏は、長年のキャリアの中でも「記憶に残る年」として、20年前の平成5年を挙げた。サッカーJリーグが始まり、衆院選で自民党が過半数割れして非自民8党会派による細川連立政権が誕生した年だ。

老眼が進んでいたという久米氏は、衆院選に備えてこの年の夏から「ニュースステーション」で眼鏡をかけ始めたという。

細川内閣は、久米氏やジャーナリスト、田原総一朗氏のテレビ番組での自民党批判が発足の後押しをしたとして、「久米・田原政権」とも呼ばれた。

そして、この年の秋、テレビ朝日の当時の報道局長だった椿貞良氏が偏向報道を認める発言をしていたことが発覚。国会で椿氏が証人喚問されるなど、同局の放送免許取り消し処分が検討される事態になった。

久米氏は「報道局長と口をきいたのは、夏の開票特番の壮行会で『今年の夏は寒いですね』と一言話しただけ」と説明。

「私も国会に呼ばれる覚悟を決めていた。スタッフからも『国会に行くのは小学校の見学以来でしょ』と言われたり…。非常にこの年はよく覚えています」と懐かしそうに振り返った。

 ■「運が良かった」

久米氏は早大卒業後の昭和42年、TBSに入社し、アナウンサーとして歩み始めた。ただ、入社直後に体調が悪化して結核などを患い、「最初の3年間はほとんど仕事ができなかった」という。

そんな久米氏に目をかけたのが、放送作家でタレントの永六輔さんだった。45年からは、永さんがパーソナリティーを務めていたラジオ番組「土曜ワイドラジオTokyo」に出演。団地を訪れ、番組を聴いている実際の世帯を調べる「聴取率調査」を担当した。

番組の収録先で、タレントの萩本欽一さんに遭遇したことがあった。萩本さんから「(番組)聞いてたよ。ガムあげる」とガムをもらったという久米氏はその直後、萩本さんも出演したクイズ番組「ぴったし カン・カン」の司会に抜擢(ばってき)される。

「僕は永さんや萩本さんに引き上げてもらった。全部、運が良かっただけなんです」

53年から歌番組「ザ・ベストテン」に黒柳徹子さんとともに出演すると、久米氏は瞬く間に人気司会者に。このころTBSを退社しフリーアナウンサーに転身する。

久米氏は「ベストテンには教訓がある」と思い出話を明かす。出演者の誕生日を祝うためケーキが振る舞われた放送で、ある歌手がケーキのついた指をテーブルクロスでぬぐうシーンが画面の隅に映り、苦情のはがきが多く寄せられた。

「1000万人が見ているということは、どんなささいなことも見逃してはくれない。テレビでは、細かいことに注意を払わなくてはいけない」

 ■「体形維持が一番大変」

60年に始まった「ニュースステーション」でのくだけた司会ぶりは、賛否が分かれつつも注目を集め、18年半続く長寿番組になった。

久米氏は番組で、フリップボードの裏に張られたコピーが見えないように持ち上げる方法など、「テレビの向こうから見ている人に気を使った」演出方法を心がけたという。

ニュースステーションで最も大変だったのが、「体形の維持」だった。

「ニュースをやっている人間ほど、隅から隅まで残酷に画面にさらされる人はいない。オーダーではなく最新流行の既製服を着るためには、体形を維持しなければならない。
一緒に住んでいるスタイリスト(久米氏の妻)に、そううるさく言われまして…」

笑顔とユーモアを絶やさない軽妙な話しぶりが、会場を大いに楽しませていた。ニュースステーション終了後はテレビ出演の機会が減ったため、「最近はほとんど隠居状態」とも笑っていたが、名司会者の鋭い舌鋒(ぜっぽう)は“現役時代”そのままだった。(三品貴志)

◇久米氏は現在、TBSラジオの「久米宏 ラジオなんですけど」(毎週土曜午後1時~2時55分)に出演中。

(産経新聞 2013.6.9)