本のサイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。
https://shimirubon.jp/reviews/1677149
「子役」が抱える問題は、
すべての子どもの問題でもある
すべての子どもの問題でもある
2001年に、『マリオスクール』(テレビ東京系で放送)という番組をプロデュースしていた。
司会が、渡辺徹さんとこずえ鈴(りん)チャン。毎回、マリオバディ(バディは相棒の意味)と名づけた複数の子どもたちが、ゲームをしたり(任天堂の一社提供だった)、様々な挑戦(カトリーヌあやこサンにイラストを習ったり)をしていた。私の狙いとしては、テレビの中に<架空の学校>を作ってみようと思ったのだ。
この番組を始める際、マリオバディとして出演する子どもたちを、オーディションで選んだ。対象は、小学校高学年から中学生までの男女。集まった子どもたちの中には、すでに「子役」としてドラマやCMで見たことのある顔もあったし、これが「子役」としての初オーディションという子もいた。できるだけ、まっさらな”新人”を選んだ。
彼らは、収録を重ねるごとに、本当のクラスメートのような、仲間のような雰囲気になっていき、最後の頃は立派なユニットとして画面の中で生き生きと動いていた。そう、彼らは番組を通じて「プロ」になっていったのだ。
ちなみに、この時のマリオバディの一人が、『涼宮ハルヒの憂鬱』などの声優として人気者となった平野綾さんである。元気な笑顔の13歳だった「アヤちゃん」も、今は29歳のオトナだもんなあ(笑)。
かつての「天才子役たち」と、かつての「天才子役」が対談するという、ちょっと変わった本がある。中山千夏『ぼくらが子役だったとき』(金曜日)だ。
ただし、年齢的に、私は千夏さんの子役時代の舞台もドラマも見ていない。私にとって最初の<ちなっちゃん>は、1960年代の人形劇『ひょっこりひょうたん島』(NHK)の天才少年・ハカセの声だ。ハカセ、懐かしいねえ。
その後は、突然、70年代。学生時代の愛読誌の一つ『話の特集』で”再会”する。それから、『話の特集』が母体みたいな政治団体「革新自由連合」の活動が始まり、千夏さんは革自連の闘士(?)といった感じ。80年には参議院議員になっちゃった。現在は著述家であり、市民運動家でもある。
さて、対談集『ぼくらが子役だったとき』。
ここには、14人の元「子役」が登場する。松島トモ子・小林綾子・長門裕之・浜田光夫・四方晴美・柳家花緑・小林幸子・和泉雅子・水谷豊・風間杜夫・矢田稔・弘田三枝子・和泉淳子・梅沢富美男。豪華メンバーだ。
リアルタイムで子役として知っているのは、四方晴美、水谷豊、小林綾子あたりだろうか。だが、直接その子役姿を見ていない人たちの話も面白い。
特に、「オトナばかりの中で働く、(普通の)子どもらしからぬコドモ」という共通点はあるものの、彼らがオトナをどう見ていて、自分というコドモをどう感じていたかという点は、意外や結構ばらばらだった、というところだ。
千夏さんによれば、子役とは「オトナ社会を子どもが生きる体験」である。この対談集で語られていることのいくつかは、「実年齢よりも幼い」と言われてしまう昨今の「新社会人」や「新人君」が、会社や社会で”体験”していることにも通じるような気がする。ふーむ、新人君は子役だったのか!?