「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
野坂昭如 坪内祐三:編
『俺の遺言~幻の「週刊文春」世紀末コラム』
文春文庫 864円
一昨年12月に亡くなった著者が、「週刊文春」に連載していた時評コラムだ。1995年からの約3年半分から、坪内祐三氏が厳選した55本が並ぶ。戦争、憲法九条、原発、都政、北朝鮮。古びないどころか、今現在を射抜く力に驚かされる。価値ある文庫オリジナルだ。
小中陽太郎
『上海物語 あるいはゾルゲ少年探偵団』
未知谷 2700円
著者が幼年期を過ごした戦時中の上海を舞台に、ゾルゲのいた時代を描いた最新長編だ。主人公の須磨雄が著者自身の投影であるだけでなく、「太陽の帝国」のJ・G・バラードから四方田犬彦までが実名で登場。情報戦をめぐる、虚実皮膜の自伝的実録小説でもある。
山田宏一 『ヒッチコック映画読本』
平凡社 2,160円
名著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』の翻訳で知られる著者。卓越したサスペンスの手法、女優とヒロインなど、40年におよぶヒッチコック研究の集大成。『めまい』のキム・ノヴァクへのインタビュー、『海外特派員』をめぐる蓮實重彥との対談も著者ならでは。
(週刊新潮 2017.01.26号)