”男女共学”の中等部
毎年、この時期になると、息子の中学受験の時の「親子面接」が話題になることがあります。
今思えば、まさに笑い話なのですが・・・・
そもそも我が家の中学受験は変則的でした。
息子は「お父さんの後輩になる」と、親を泣かせるセリフを吐いて(笑)、私の出身大学の付属中学を3校受験。
というか、その3校しか受けていません。
落ちたら、近所の公立中学へ、という予定でした。
実は、姉である娘も大学受験で、やはり私と同じ大学を目指していました。
中学、大学のダブル受験、しかも第一志望が同じ(笑)。
さて、弟のほうは、運よく3つの付属のうち、2校の1次試験を通過します。
今度は、それぞれの2次試験ですが、どちらも「親子面接」有り、でした。
で、2校のうちの1校での出来事です。
「親子面接」の日の朝、ちょっと慌てました。思ったより、時間が切迫していたのです。
それは面接の順番が早かったためで、「現地に着いてから着替えよう」ということにして、親子3人、大急ぎでクルマに乗り込みました。
都内へ向かって高速を順調に進んでいき、家と学校の真ん中あたりまで来たところで、ふと家内が私に聞きました。
「私のスーツ、どこかな?」
え、何のこと?
私は家内に頼まれた通り、二人のスーツをクローゼットから取り出して、家内のものは「ここに置くよ」と声をかけながら、わかるところに置いて、出てきました。
当然、家内は自分のスーツを持ってクルマに乗ったはず、です。
ところが、家内によれば、「ここに置くよ」と言われた記憶はなく、家内のスーツも私がクルマに持ち込んであると信じていた!というのです。
さあ、大変。
家内は、コートは着ていますが、現地で着替える予定でしたから、その下はセーターにジーンズという“リアル普段着”のままです。
でも、家に引き返していると、面接に間に合いません。
怒る家内。
弁明する私。
困惑する息子。
3人を乗せたクルマは、もう学校のすぐ近くまで来ています。
「私は面接に出ません。二人でやってきて下さい」と家内。
それもどーかなあ、と思案する私。
走る車内で緊急家族会議(笑)が行われ、家内は“セーターにジーンズ”という完全な普段着で、親子面接に臨むことにしたのです。
待合室というか、親の控室は最悪でした。
何しろ、家内はコートを脱げない(笑)。
他のお母さま方は、もちろん、きちんとした“身なり”をしています。
ひと目で“高級ブランド”と分かるスーツ姿も、あちこちに。
やがて、呼び出しがあり、廊下へ。
そこで待つ間も、コートを脱がない(脱げない)家内。
我が家の番が回ってきました。
部屋に入ります。
そして、面接の先生方が何かを言い出す直前に、私が声を発しました。
「すみません。実は・・・」。
必死のお詫びと説明。
すると、先生方は笑顔で「構いませんよ」とおっしゃる。
まさに救われたような気持ちです。
家内は恥ずかしかったと思いますが、覚悟を決めたのか、その後は落ち着いて話に加わりました。
もう怖いものはないというか、文字通り“素で勝負”(笑)するしかなかったわけです。
気がつけば、面接終了。
やるだけは、やった。これで落ちても仕方ないじゃないの、と外に出ました。
そして、合格発表の日(上の写真)。
驚くべし、掲示板には、ちゃんと息子の番号がありました。
セーターにジーンズの“ふだん着”でも合格したのです(笑)。
親の服装なんて関係なかった。そんなものを見ているのではなかった。
なんて度量の大きい学校なんだろう、と感激しました。
結局、付属3校のうち、2校から合格をいただき、息子が自分で選んだほうに入学しました。
しかも、それは「ふだん着合格」ではないほうの学校でした(笑)。
家内は「せっかくなのに、モッタイナイ」と惜しんでいましたが、まあ、本人の選択ですから。
不合格だった1校は、付属3校の中で唯一の“男子校”。
ずっと「共学じゃなきゃ(女子がいなきゃ)、やだ」と言っていた息子の気持ちは、男である私には何となく分かりますが、母親からは“手抜き受験”を疑われました。
真相は、今も藪の中です(笑)。
ちなみに、娘も無事、第一志望の大学・学部に合格できました。
この年の4月は、大学とその付属中学、ダブルで入学式に参加。
以後4年間、姉と弟は、同じキャンパスに通い続けました。
特に息子は、中学、高校、大学と、トータルで10年間、このキャンパスのお世話になり、ついにこの春、卒業です。
あの「ふだん着面接」は、我が家の大きな試練、そして転機だったのかもしれません。