碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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強引な設定がうまい ジャンル崩しの異色ドラマ「カルテット」

2017年01月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、ドラマ「カルテット」を取り上げました。


TBS系「カルテット」
強引な設定がうまい ジャンル崩しの異色作

「カルテット」(TBS系)の脚本は坂元裕二だ。出演が松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平。そして演出は「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」の土井裕泰。これだけのメンバーが、何を見せてくれるのか。

4人のアマチュア演奏家がカラオケボックスで出会う。バイオリンの真紀(松)、チェロのすずめ(満島)、ビオラの家森(高橋)、バイオリンの別府(松田)だ。弦楽四重奏のカルテットを組むことになり、別府の祖父が持つ軽井沢の別荘で合宿生活に入った。この強引な設定がうまい。

彼らはそれぞれに鬱屈や葛藤を抱えている。共通しているのは音楽との関係だ。プロへの夢を追い続けるのか、趣味として音楽を続けるのか、二者択一を迫られている。また、夫が謎の失踪を遂げた真紀。その夫の母親から真紀に近づくことを依頼されたすずめ。さらに家森や別府の本心や狙いも不明のままである。

このドラマはサスペンス、恋愛、ヒューマンといった枠を超えた、いわば“ジャンル崩しの異色作”だ。ここには「重版」の心や、「逃げ恥」のみくりのような、つい応援したくなる“愛すべきキャラクター”はいない。だが4人ともどこか憎めない、気になる連中だ。独特の暗さもあり、万人ウケしないかもしれない。しかし続きが見たくなる、クセになるドラマとしては今期ピカイチだ。

(日刊ゲンダイ 2017.01.25)