碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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地震描写がリアルだった、NHK「パラレル東京」

2019年12月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

NHK「パラレル東京」

地震描写が息をのむほどリアルだった

 

先週、月曜から4夜連続で放送された、ドラマ「パラレル東京」。首都直下地震を描くシミュレーションドラマだった。物語の舞台は架空の民放テレビ局だ。このドラマの放送初日と同じ12月2日、夕方の東京をM7・3の巨大地震が襲う。テレビ局のスタジオでは、スポーツ担当の倉石美香(小芝風花、好演)が急きょ、キャスターを務めることになる。

まず、ドラマとはいえ「どこで、どんなことが起きるか」の描写が具体的かつリアルで、見ていて息をのむほどだった。それは被害予測など最新の研究データに基づいているためだ。

初日の建物崩壊、火災同時発生、群衆雪崩。2日目の火災旋風、デマによる情報混乱、広域通信ダウン。3日目には避難所の食料不足、通電火災、閉じ込め被災者救出の難航。そして4日目は余震による土砂崩れ、堤防決壊の危機も迫る。

一方、こうした状況を伝え続けるメディア側も多くの葛藤を抱える。行政も機能停止する中、「未確認だが重要な情報」をどうするのか。テレビの呼びかけで多くの命が救われる場合も、その逆もあり得るからだ。キャスターの美香も悩むが、政府に忖度(そんたく)して躊躇(ちゅうちょ)する上司(室井滋)に向かって叫ぶ。

「起きたことを伝えるだけの報道に意味はあるんですか!」

たった今から準備をしよう。見る側にそう思わせてくれた意義は大きい。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2019.12.11)