碓井広義ブログ

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「鎌倉殿の13人」で楽しむ三谷流 歴史の見方

2022年02月05日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

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「鎌倉殿の13人」で楽しむ

三谷流 歴史の見方

鎌倉幕府の二代目執権、北条義時を主人公とするNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。脚本を担当する三谷幸喜にとっては3回目の登板となる大河だ。

香取慎吾が近藤勇を演じた「新選組!」(2004年)の時代背景は幕末。堺雅人が真田幸村となった「真田丸」(16年)は戦国時代末期だった。

しかし、今回描かれるのは平安末期から鎌倉前期だ。戦国や幕末のように、なじみのある時代とは言えない。また源頼朝や義経はともかく、「北条義時って何者だっけ?」と思う人も少なくないはずだ。その点もこれまでの三谷作品とは異なる。

なじみの薄い時代の、よく知らない人物たち。三谷脚本はそれを逆手にとる形で想像力を発揮している。狙いは大河らしい重厚さと三谷らしいユーモアの共存だ。義時(小栗旬)をはじめとする登場人物たちが、それぞれ独特の“おかしみ”を持っている。

たとえば父の時政(坂東彌十郎)は突然再婚を宣言し、家族から真意を問われると「さみしかったんだよ~」とすねたりするのだ。

平家を憎むあまり暴走気味の兄・宗時(片岡愛之助)も、流罪人である頼朝(大泉洋)に猛アタックした姉・政子(小池栄子)も、義時にすれば危なっかしくて仕方ない。

北条家の平安を守るため、家族をなだめたり、すかしたりしながら、無理難題に対応していく義時。この優れた“調整能力”が、後の執権という地位につながるのではないか。

いわば「頼朝騒動」ともいうべき事態に巻き込まれていく主人公を、小栗が過去に出演した大河では見せなかった軽妙さで演じる。

頼朝役の大泉からも目が離せない。三谷が造形する頼朝は一筋縄ではいかない人物だ。何より本音がどこにあるのか、よく見えない。

その挙兵も自らの意思なのか、坂東武士たちから“お御輿(みこし)”として担がれた結果なのか、判然としない。穏健で優柔不断かと思うと、非道な選択も残酷さも見せる。そして何気に女好き。硬軟入り交じるキャラクターが大泉によく似合う。

歴史学者の磯田道史が井上章一との対談本『歴史のミカタ』で語ったところによれば、歴史は史実の集合体ではない。歴史の正体とは「物のミカタ」である。

過去のどの部分を、どのように見るかであり、人それぞれなのだ。しかも義時について、頼朝挙兵以前の史料は伝わっていないという。オリジナル脚本である「鎌倉殿の13人」は、三谷が面白いと思う時代と人物の見方を、笑いながら楽しむのが一番かもしれない。

(北海道新聞 2022.02.05)


芥川賞作家の西村賢太さん死去 合掌

2022年02月05日 | 本・新聞・雑誌・活字

番組収録のスタジオで、西村賢太さんと

 

 

芥川賞作家の西村賢太さん死去 

「苦役列車」「暗渠の宿」

 

「苦役列車」「小銭をかぞえる」などの破滅型の私小説で知られる芥川賞作家の西村賢太(にしむら・けんた)さんが5日午前6時32分、東京都北区の病院で死去した。54歳。東京都出身。

中学卒業後、アルバイトで生計を立てながら小説を執筆。同人誌に発表した作品が2004年に文芸誌「文学界」に転載され、07年に「暗渠の宿」で野間文芸新人賞、11年に「苦役列車」で芥川賞を受けた。

受賞決定後の記者会見での型破りな発言が注目され、同作はベストセラーに。映画化もされた。

関係者によると、4日夜、タクシー乗車中に意識を失って病院に搬送されていた。

(共同通信 2022.02.05)