碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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清原果耶に “枷(かせ)のある恋愛物語”は大正解! 「ファイトソング」の脚本は岡田恵和

2022年02月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

清原果耶に

“枷(かせ)のある恋愛物語”は大正解!

「ファイトソング」の脚本は岡田恵和



火曜ドラマ「ファイトソング」(TBS系)の注目ポイントは2つある。まず、ヒロインが民放ドラマ初主演の清原果耶であること。もうひとつが岡田恵和によるオリジナル脚本であることだ。

児童養護施設出身の木皿花枝(清原)は、空手の有力選手だったが挫折。さらに聴神経腫瘍で数カ月後の失聴を宣告される。

そんな花枝が、どん底状態のミュージシャン、芦田春樹(間宮祥太朗)と出会う。マネジャーから「恋愛でもして、人の気持ちを知りなさい」と言われた芦田は、花枝に交際を申し込む。

さらに同じ施設で育った夏川慎吾(菊池風磨)が花枝を好きで、その慎吾を施設仲間の萩原凛(藤原さくら)が好きだったりする。

この2人、自分の恋ごころにブレーキをかける姿がいじらしい。それがドラマ全体に漂う、もどかしさと切なさを倍加させている。

耳が不自由になる前の「思い出づくり」を決意する花枝。事務所解雇の期限が迫る芦田。互いに期間限定の「恋愛もどき」のはずだったが、芦田の解雇が早まったことで事態は急展開だ。

もともと“ピュア度”の高い清原だが、岡田が用意した「枷のある恋愛物語」は大正解。人を好きになることと、病を抱えたことで成長していく、難しいヒロインを丹念に演じている。

そして登場人物たちに共通の不器用な生き方を見つめる、岡田のまなざしが温かい。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.02.02)