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東京新聞に連載中のコラム「言いたい放談」。
今回は、ついつい入手したくなる、あの「ハコ」をめぐって書いています(笑)。
わが家の箱モノ行政
ケンカの火種は“箱モノ”である。以前から多くの批判を受けていた。政敵はこれ以上箱モノが増えることを拒否し、現存するものも仕分けが検討されていた。そこを強行突破したのだから、もめるのは当然だ。
新たに登場した箱モノの名は「007製作50周年記念版ブルーレイBOX」。第一作「ドクター・ノオ」から第二十二作「007/慰めの報酬」までの全作に加え、特典映像や豪華収納ケースも付いている。中学時代からこのシリーズを見続けてきた者として入手は当然だった。
しかし、あちらの主張も一理ある。箱モノとしては、すでに「スター・ウォーズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ゴッドファーザー」などが山積みだ。しかも、いずれのシリーズもすべてVHSと普通のDVDを持っており、それで十分ではないかと言うのだ。「おっしゃる通り。確かに必要性はない。だが必然性はある」などと答弁するので、また集中砲火だ。
ついに最後の弁明。いいかい、私が大富豪だと想像してごらん。そして映画会社に私だけのために二十二本の007映画を発注する。請求書の数字は恐らく天文学的だろう。ところがこのBOXはまさにそれを実現したのだよ、このわずかな予算でね。
いや、もちろんこれで政敵が納得するはずもなく、我が家の箱モノ行政をめぐる攻防は今も続いている。
(東京新聞 2012.11.14)