【巨匠・倉本聰の言葉に学ぶ人生のヒント】
第1回
企画と発想は“その場”で考える
「出合い頭」のひらめきが勝負
「北の国から」や「前略おふくろ様」などで知られる脚本家、倉本聰。
なぜ60年以上も書き続けられるのかが知りたくて、半年間にわたる対話を行ってきた。その内容を一冊にまとめたのが、この秋に上梓した「脚本力」(幻冬舎新書)だ。
巨匠が語った言葉の中から、誰もが「人生のヒント」として応用できそうなものを紹介していきたい。まずは、企画と発想について。
「僕ら脚本家はプロデューサーと話すことが多いよね。ちょっと会おうよ、なんて言われて喫茶店とかで会う。実はこういう番組を考えてるんだけどっていう話になる。2時間は話すとして相手の話を聞きながら、すでに僕の頭の中ではね、どう具体化できるか、どんなストーリーになるかってことを考え始めてますよ。そう。絶対、その場で考える。
それで、このストーリーならいけるなって思えたときは、引き受けようと決める。基本的なストーリーがひらめかないのに引き受けるってことはあり得ない。逆に、ひらめいたら絶対にその場でプランを作ります。だから翌日にはもう、昨日の件を僕なりに考えたんだけど、こういう話でどうだろうって、相手に提示することが多いですよ」(「脚本力」から)
日常的に「やりたいこと」をストックしているからこそ、出合い頭の「ひらめき」が生まれるのだ。
碓井広義(うすい・ひろよし)
メディア文化評論家。1955年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。テレビマンユニオン・プロデューサー、上智大学文学部新聞学科教授などを経て現職。倉本聰との共著『脚本力』(幻冬舎)、編著『少しぐらいは大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)などがある。
(日刊ゲンダイ 2022.11.16)