ごっとさんのブログ

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抗生物質と耐性菌 その2

2016-07-26 10:34:47 | 健康・医療
前回このタイトルで書いたときに、抗生物質は静菌作用であり菌を殺してしまうわけではなく、増殖を抑える薬であることを書きました。また耐性菌というのは、抗生物質を分解したり無効にする酵素によって、耐性を獲得すると書きました。

こういった酵素は菌がもともと持っていた物ではなく、突然変異によってできてくるものです。つまり突然変異というは、敵がいるからそれをやっつけるものを作り出そうという、目的があって起きるものではありません。あくまでも偶然できたものが、たまたま抗生物質を分解するようになり、それが耐性菌になるわけです。

酵素の中には誘導酵素といって、基質となる物質が多量に存在すると、それを分解したりする酵素が多く作られるという物もあります。人間のアルコール分解酵素などがその例で、酒に弱い人でも飲んでいるうちに強くなるというのは、この誘導酵素のためです。

しかしこれはもともと持っている酵素であり、突然変異でできてくる場合は全く当てはまりません。抗生物質があるから、その分解酵素が誘導されるということは絶対にないのです。

しかし「抗生物質の濫用が耐性菌を生み出す」ということが、あまりにも一般化されており、ほとんどの医者もこう考えているはずです。ですから理論的には抗生物質の有無に関係なく、分解酵素は突然変異で作られるはずですが、何となくこれは受け入れられないような気がします。

抗生物質が発見され使用され始めてからまだ80年ぐらいですが、それよりはるか昔から耐性菌は存在していたはず、という理論は納得されないような気もします。実際には耐性菌の出現には、プラスミドを介した分解酵素の授受のメカニズムなどもあり、必ずしも突然変異だけではありませんので、もう少し複雑な状況です。

この記事での耐性菌が生まれる原因として、「医師による抗生物質の過剰な処方」というのは、私の理論からすると原因ではないということになります。次の「医者が処方した抗生物質を飲み切らない」というのは、ほとんど意味がありません。これはたぶん飲み残した抗生物質を、別なときに飲んだりするのが危険という、全く別の観点のものです。

「病院での不十分な院内感染対策」と続きますが、このあたりは耐性菌とは無関係なことです。前回述べましたように、高齢で重篤な疾患にかかっている人以外、つまり免疫システムが働いている人には、耐性菌など全く問題がありませんので、この程度の認識の記事でもよいのかもしれません。

抗生物質と耐性菌

2016-07-25 10:29:06 | 健康・医療
ひと月以上前になりますが、このブログで耐性菌のスーパーバグの話を書きました。

最近新聞に耐性菌の説明記事が出ましたが、どうもあまり良い内容とは言えませんでした。そこでもう一度耐性菌について取り上げてみます。

まずこの記事では現在抗生物質が効かない耐性菌が増加し、WHOが世界中で危険なレベルに達しているとして、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも対策が論議されたようです。

耐性菌ができる仕組みが図示されていますが、まず感染症にかかると抗生物質が投与されます。そうすると通常の病原菌は殺すことができますが、耐性菌だけが残ってしまいます。この耐性菌が増殖すると、ほかの抗生物質が投与されることになります。そうするとこの抗生物質にも耐性の菌だけが生き残り、多剤耐性菌ができてくるという図式でした。

これが間違っているというわけではありませんが、抗生物質や耐性菌のメカニズムを無視していると言えます。

抗生物質は菌がいるところに行っても、入っていって殺してしまうわけではありません。その菌が増殖するために分裂が始まると、その時に作用して始めて菌を殺すことができるのです。つまり抗生物質は菌の増殖を止める作用があり、これを静菌作用といいます。ですから抗生物質は、厳密には殺菌剤ではなく静菌剤ということになります。

抗生物質を投与してもすべての菌がなくなるわけではなく、耐性菌だけが残るということは実質的にはないと思われます。この残った菌を殺すのは、人間の免疫システムです。病原菌が入ってくると、当然この免疫が働きますが、菌の増殖が激しくなるといわば間に合わなくなってしまうわけです。そこで抗生物質で菌の増殖を抑え、免疫が勝てるようにするわけです。

つまり抗生物質というのは、この免疫システムの手助けをしているだけとなります。院内感染で高齢者が肺炎で亡くなったりしますが、高齢になったり他の重篤な病気があると免疫がうまく働かなくなり、どんなに抗生物質を投与しても治らなくなってしまうのです。

次に耐性菌ですが、病原菌の中で入ってきた抗生物質を分解したり無効にしてしまう酵素を持った菌が耐性菌となるわけです。これは菌が本来持っているほかの目的の酵素が、突然変異によって抗生物質を攻撃できるようになるわけです。

これはあくまでも突然変異ですので、偶然の産物です。しかも酵素を改変する変異は、何回か起こらないと有効なものにはなりません。つまりかなりの偶然の積み重ねでできるものですので、時間がかかり抗生物質があるからといって、簡単にできることはまずありません。

長くなってしまい、中途半端ですのでまた続くことにします。

大麻の成分カンナビノイド

2016-07-24 10:22:03 | 
最近また元俳優が覚せい剤や大麻を所持していて逮捕され、情報番組などでいろいろ取り上げられています。

覚せい剤は体に悪影響があることは確認されていますが、大麻については近年いろいろと効能が明らかになってきて、医療用大麻という概念も出てきたようです。

大麻の成分はカンナビノイドと呼ばれ、おそらく10種類以上の類似物質が含まれています。この特徴としては、通常の天然物の多くは窒素を含むアルカロイド類が多いのですが、これは炭素・酸素・水素だけから成り、既存の物とはかなり異なった面白い構造をしています。

このうち幻覚などの陶酔作用があるのはTHC(名称が長いので略号だけにします)のみとされています。最も多いのが名称の由来であるカンナビノールで、古くから色々な薬理作用が調べられていました。といってもいわゆる精神作用が主体でしたが、治療用にも使われているようです。特に恐怖体験などによって発生したトラウマ症状を緩和させるために、PTSDなどの症状軽減に使われているようです。

こういった成分が発見されると、類似物質の合成研究が盛んに行われます。本来研究用にスタートしたものが、例えば覚せい剤の合成研究が悪用され、多数の危険ドラッグが生まれたりしますので、こういった研究もなかなか難しい部分もあります。こういった中でカンナビノイドの阻害剤なども合成され、食欲抑制剤いわゆる抗肥満薬なども開発されたようです。但しこういった性質の薬剤は、うつ病などを誘発する恐れがあるとして、すぐ発売中止になっています。

これに関連した面白い生理作用として、ランナーズハイという現象が知られています。これは長距離を走り続けていると、気分が高揚してくるという現象で、エンドルフィンという物質の分泌と考えられていました。しかし最近の研究でこれがカンナビノイドの分泌であることが分かってきました。

こういったものを内因性カンナビノイドと呼びますが、人間もこれを作る能力があり、必要に応じて脳内に分泌されていることが分かってきたのです。ストレスの多い現代社会に生きる脆弱な脳が、“快楽”と“忘却”を司る内在性カンナビノイドによって、ストレスの解消を図っていると考えられるようになってきたのです。

そのほかこのカンナビノールがてんかんの発作を抑えたり、ガン細胞の増殖まで抑制するというようなデータも出ていると言われています。麻薬であるモルヒネが医療現場では重要な鎮痛薬として使用されているように、カンナビノイドが使われようになるのかもしれません。

ガン患者数予測初めて100万人

2016-07-23 10:24:23 | 健康・医療
国立がん研究センターから「2016年のがん統計予測では、罹患数予測が101万200例で、100万例を超える予測結果が算出されました。」と発表されました。

これはあくまで今年の累計の予測ですが、あまり100万人という数字には意味はありません。罹患数というのは面白い数字で、必ずしも患者数ではなく。例えば一人の人から大腸ガンと肝臓ガンが見つかると、2と数えられるようで、最近はこういった複数ガンの患者さんも増えているようです。

この記事にはこの予測数の年次ごとのグラフが出ていましたが、1975年の約20万から直線的に伸びています。また今年のガン死亡者予測も37万4千人と、やはり年々増えています。この記事では「ガン対策は進んでいない」のではないとして、この増加の要因を分析しています。

これはガンセンターの解析ではなくあくまで解説者の物ですが、まあ私も納得できるものでした。このブログでも何回か書きましたように、私はガンは遺伝子の複製時のミスによって起きるもので、いわゆる予防方法などないといのが基本です。ですからガン対策としては有効な治療法の開発が重要と思っています。

さてここで述べている罹患者数増加の要素として、まず高齢化をあげています。これは当然のことで、歳をとるにつれてミスが出た遺伝子の修復能が落ちてくることは確かです。ですから色々な部位のガン化率は高くなり、ガンというのは成人病の一種と考えています。ここでも治療の進歩や検診の進歩よりも、がんにかかりやすい人口の増加のスピードが上回っているとしています。

次が早期発見・早期診断の増加としています。最近は検診受診率も上がっており、早期発見の患者が増えており、これにより罹患者数が増加しているとしています。ガンの診断があまり確実でなかった昔は別にして、早期発見が進んでも別に増加につながらないような気もします。

最後が統計データの精度の向上としています。この一つとして昔は死因として心不全や呼吸器不全と書く医者が多かったのが、最近は正式な病名が書かれるようになったとしています。この死亡者数ではなく、罹患者数をどう把握しているのかわかりませんが、ガンが発見されるとどこかに届け出るというシステムがあるのかもしれません。

この記事ではガンに対する取り組みはしっかりしているという内容にはなっていませんでしたが、早期発見が進んでいることは確かですし、ガン対策はそれなりに進んでいるような気もします。

それでもガンという病気は老人病的要素が多いため、このような統計データはこれからも増加するのはやむを得ないと思っています。

エスカレーターの乗り方

2016-07-22 10:31:11 | その他
このところエスカレーターの片側開け乗り方がいろいろ話題になっているようです。

東京などの首都圏では左側に乗って右側を開け、大阪方面では逆に左側を開けるのがマナーのようです。しかしこのところ取り上げられているのは、エスカレーターで歩くのは危険であり、止まって乗ろうという趣旨のものが多いようです。

エスカレーターは本当に便利な乗り物で、デパートなどエレベーターがあってもエスカレーターを使うことが多くなっています。たぶん待たなくて済むことや、乗っていてまわりを見ることができるなどが好きなところのようです。

このエスカレーターの歴史は古いようですが、片側を開けて乗ることがマナーになるまでかなり時間がかかったようです。新聞によると地下鉄千代田線の開通は1969年ということになり、その時から新御茶ノ水駅の長いエスカレーターができたようです。

この年は私が卒業した時ですが、その後しばらく大学に行っていましたので、新御茶ノ水駅にも行ったことがあります。このあまりにも長いエスカレーターにやや恐怖を感じ、手すりにつかまっていたはずですが、どちら側に立ったかは覚えていません。このころは多くの人がエスカレーターに慣れておらず、あまり歩くこともなかったのかもしれません。

これが片側を開けるようになったのは、1989年ごろ同駅でこの現象がみられるようになったという記事があるようです。たぶんその後次々に新しい地下鉄が開業し、当然どんどん深くなっていきますので、より長いエスカレーターが設置されたり、他の場所にもどんどん設置が増えていったのだと思います。

この時期はいわゆるバブル期ですので、急ぐ人を優先するという感覚が共通のものとして現れたのかもしれません。大阪が左側を開けるようになったのは、阪急梅田駅でこのような放送があったため定着したようです。

このマナーというか習慣は今では当然のことのように行われています。混雑している駅などでエスカレーターに乗ろうとすると、人混みができ私も含めて動かずに乗る人が多いようで左側に人が集まります。タイミング悪く右側に乗ると、急いでいなくても歩いていくというのが普通になっています。

それを今頃になり安全のため両側に乗るとか、エスカレーターでは歩かないという論調が出るのはおかしなことです。そもそもエスカレーターで歩いて怪我をする人より、階段で転ぶ人の方が多そうな気がします。どうも最近は「安全」が錦の御旗のようになり、誰かが安全を口にすると逆らうことができないという風潮もやや行き過ぎのような気がします。

何事も個人が責任をもって行動することが最も重要ではないでしょうか。