内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

機内で観た四本の邦画『この世界の片隅に』『湯を沸かすほどの熱い愛』『淵に立つ』『ハルチカ』極私的寸評、そして友情が知らぬ間に始まるとき ― 夏休み日記(33)

2017-08-18 16:39:32 | 雑感

 昨日搭乗したエール・フランス便機内で最近の日本映画を四つ観る。
 それぞれ二時間前後の映画だったから、機内では一時間ほどしか寝ていない。見た順に、『この世界の片隅に』『湯を沸かすほどの熱い愛』『淵に立つ』『ハルチカ』。それぞれの作品についての感想と主演あるいは助演の女優さんについての印象は、以下の通り。
 『この世界の片隅に』の評判はネットで知っていたけれど、本当にいい作品だった(『君の名は。』よりずっといいと私は思うけど)。声優としてののんの素晴らしさは特筆に値する。正直に言いますが、後半からラストまで、涙が止まらなかった。
 『湯を沸かすほどの熱い愛』、宮沢りえは立派な女優さんになったものだ。でも、この作品では、杉咲花の演技を私は特に賞賛する。
 『淵に立つ』、日仏合作らしい、光の明るさよりも陰の深さが印象に残る作品。筒井真理子の演技は見事、本当に素敵な女優。
 『ハルチカ』、橋本環奈は確かに可愛い。けれど、青春映画としては、残念ながら、『ちはやふる』にも『チアダン』にも遠く及ばない(といっても、私は別に広瀬すずのファンじゃありませんよ。私が今最も期待している十代の女優さんは、浜辺美波。2012年放映の『浪花少年探偵団』でのクラスのヒロイン役のときから注目している)。
 搭乗したエール・フランス便は定刻通りにシャルル・ド・ゴール空港着。スーツケース二つも問題なく回収。ただ、TGVが三十分遅れの出発。ストラスブール駅到着は定刻より二十分遅れ。駅からはタクシー。零時十五分前にストラスブールの自宅に帰着。
 それほど長旅の疲れを感じない。スーツケース二つの荷物はすぐにすべて出し、それぞれ所定の位置に戻すなり、片付けたり。昨日の記事で話題にした出発直前のハプニングのせいで黄色い染みができたり臭いが付いたりしたシャツはすべて洗濯機に放り込む。さすがに深夜に洗濯機を回すわけにはいかない。染みがひどい白の半袖ワイシャツだけすぐに手洗い。それでも完全に黄ばみが落ちない。漂白剤にしばらく漬けておく。きれいに落ちた。
 今朝は五時起床。自然と眼が覚めた。六時半頃から洗濯開始。八時からはいつものプールで40分ほど泳ぐ。帰宅後、昨日午前中届いて隣人が受け取ってくれていた、五十冊ばかりの仏語の本がぎっしり詰った小包を開梱し、整理する。
 以下の引用は、その中の一冊、わずか四十頁足らずの小著、Maurice Blanchot, Pour l’amitié, fourbis, 1996 の冒頭の段落。

La pensée de l’amitié : je crois qu’on sait quand l’amitié prend fin (même si elle dure encore), par un désaccord qu’un phénonoménologue nommerait existentiel, un drame, un acte malheureux. Mais sait-on quand elle commence ? Il n’y a pas de coup de foudre de l’amitié, plutôt un peu à peu, un lent travail du temps. On était amis et on ne le savait pas (p. 9).

 人は、友情が終わるときを知っている、しかし、友情がいつ始まるか知っているだろうか。それは突然にではなく、徐々に始まる。時の作用によって。だから、人は、もう友だちなのに、そうであることを知らないときがある。知らぬ間に友情の萌芽を枯れさせてしまうことのないように気をつけたい。