内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日本に残した最後の蔵書に別れを告げた後、北海道四泊五日の旅に出る ― 夏休み日記(22)

2017-08-07 12:11:21 | 雑感

 今日の午前中、古書店主が自分は自家用車で、運送業者はトラックで来て、玄関先にうず高く積まれた本を全部持っていってくれました。ダンボール箱に詰めるのかと思ったら、店主が手渡す本を運送業者の兄さんが金属製の高さ1.8m、1m四方のケージ三つに順次本を積み上げていきました。確かにダンボール箱にいちいち詰めていてはそれだけ時間も手間もかかるだけだと得心しました。
 タイミングよく明日すぐに古書市場に出品してくれるそうです。そのプロ同士の買い付けの場で値がついたら、こちらに連絡が入る手はずになっています。今さら売値に何の期待もしてはいませんが。
 英仏語の哲学書を運び出しながら、店主が「これら本の翻訳だったら高く売れるんですけどねぇ」と言うので、「それじゃまずこっちが訳さなくちゃならないし、そんな時間ないしなぁ。残念」と冗談で返し、笑い合いました。店主は、「場所があれば自分の店でじっくり売りたい本がいっぱいあるんですけれどねぇ」とも言ってくれました。店は駒場東大駅前だから、確かにあそこなら売れるであろう良書が揃っていることは私も自信を持って言えます。
 まあ、それはともかく、誰にも紐解かれることなく書庫で眠っているよりも、市場に出回るほうが本のためには良いでしょう。良き読み手に出会わんことを。本を積み終えた店主に挨拶をして、空になった玄関先を見て、何か肩の荷が下りたというか、すっきりした気持ちになりました。
 今日夕方、北海道に向けて羽田から発ちます。四泊五日の旅で、札幌の友人家族と旭川の旧友をそれぞれ二泊ずつ訪ねます。この旅行の前後は、集中講義はもちろんのこと、会食とはいってもどこか仕事が絡んでいることがほとんどなので、この旅行だけがこの夏の日本滞在中の本当の「ヴァカンス」なのです。ほんの数日ではありますが、そして台風の進路が気にはなりますが、旅行気分を満喫してきたいと思います。
 明日から金曜日までの記事は、「北海道友人訪問記」になります。写真も現地で撮ったものをアップします。