今日はまた午前中は曇りがち、午後三時頃から強風を伴ったかなり強い雨になり、そのおかげで気温は下がりましたね。ただ、大学の建物の中にいるかぎり、窓から見下すキャンパス内の木の枝の揺れ、窓を叩く雨の激しさ、傘を持たぬ学生たちが走って建物に逃げ込む姿を見て、窓外の天気を知るばかりで、建物内はいささか効きすぎの空調と防音性の高い教室とのおかげでまるで別世界でした。
演習二日目の今日、まず、昨日は時間切れで読めなかったシンモンドンのテキスト、MEOT 2001年版の巻末に付された « Prospectus » を読みました。といっても、フランス語の既習者は学生の中には一人だけで、しかも初級を終えただけですから、学生たちに仏語原文を読ませることはできません。私が段落ごとに内容を紹介し、必要に応じて、用語や命題に注釈を加えていきました。
あっさりと済ませるつもりでしたが、注釈を加えていると、それに付随して言っておきたいことが次々と頭に浮かんできて、わずか三頁のテキストを読むのに二時間かかってしまいました。
十五分ほどの休憩を挟んで、明後日の東京国立近代美術館での校外実習のためにTAのIさんが用意てくれたテキストの解説を本人にしてもらった後、今日のメインテーマである三木清の『構想力の論理』の読解作業に入りました。
まず、私の方で、『構想力の論理』に至る三木清の哲学の展開を、二十代前半に書かれたエッセイから『歴史哲学』まで駆け足で辿ったうえで、『構想力の論理』の序の内容をざっと紹介しました。
その後、今日出席の四名の学生たちの発表を聴きました。みなそれぞれに面白い問題提起を含んでおり、しかも、昨日読んだ私のシンモンドン論と三木の技術・呪術論とをリンクさせて彼らが論じようとしていたのは、まさにこちらの狙い通りの展開でした。
彼らの発表を聴いた上で私がそれにコメントしていく中で、つぎつぎと補足的に言及しておきたいことが頭に浮かんできてしまい、一旦それを口にすると、それが緒になって議論が多方向に発展しかけるので、それに深入りせずに切り上げる頃合いに注意する必要がありました。
今回の演習は、テキスト読解が最終目的ではありません。テキスト読解を通じて、今日の社会における技術の問題についての各自の思考が多方向に伸び広がっていき、それぞれの生活の中で根を張り、持続的に増殖していくこと、それこそがその目的であり、私の切なる願いでもあります。