内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「美しいこととは何であるか」― 中井正一『美学入門』(中公文庫 2010年)より

2022-06-05 16:04:25 | 哲学

 来年度の日仏合同ゼミの課題図書選択は迷いに迷った。その挙げ句、今日ようやく、最終的な決断をした。中井正一『美学入門』(中公文庫 2010年 初版 1951年 河出書房)にした。ただ、これはこちらからの提案に過ぎないので、もし先方が難色を示せば、変更せざるをえない。が、私としてはこれを推したい。
 本書では、美とは何かという問いをめぐって、哲学・美学についての予備知識なくても読めるような平易な日本語で多面的なアプローチが試みられており、技術と美の関係など、現代社会において問われるべき問いも提起されており、いろいろな角度から読解を試みることができ、学生たち自身がそれぞれ自分たちの関心に引き付けて一つのテーマを選んで考えてゆきやすいであろうというのが第一の選択理由。
 第二の選択理由は、昨年、きわめてすぐれた仏訳が出版されたので、弊学科の学生たちもその仏訳を参照しながらテキストの理解を深めてゆくことができ、先方の日本人学生さんたちとの合同発表のための共同作業もそれだけ行いやすいだろうということ。
 第三の理由は、比較的コンパクトな著作(本文のみだと164頁)で、安価な文庫本で入手できること(さらには、電子書籍版は青空文庫で無料で入手できること)。