今日の修士一年の演習では、中井正一の『美学入門』に関して先週課題として与えておいた日仏両語での問題提起を各学生に発表してもらった。まだグループ研究初期段階なので、グループとしてテーマを絞る前段階として、グループの他のメンバーと話し合いつつも、基本的には各自の関心に応じて問題提起やテーマの提案をしてもらった。
グループ間で似通ったテーマになってしまうと、日仏合同チームでのテーマ選びの際も相互にかぶりがちになることを少し恐れていたのだが、その心配はなさそうだ。グループ間で打ち合わせたわけでもないのに、実にヴァラエティーに富んだテーマが提起されており、聴いていて感心したほどである。
三グループそれぞれのテーマやキーワードを列挙してみよう。それぞれのチームにまだ名前があるわけではないので、仮にA・B・Cとする。
Aチームが取り上げたテーマは、ミメーシスと複製の二つの観念、陰翳礼讃と美学経験及び陰影の美(谷崎潤一郎『陰翳礼讃』)、観客のカタルシスにおける美の役割、美学における環境美の挑戦、教育と子供の美意識。
Bチームは、自然美・自然の美しさ・自然の中にある美、自然の中にいると自分は自分と巡り会えること、自然の中にある美と技術で作られている美との直面。
Cチームは、「うつす」(映す、写す、撮す、摸す、移す、遷す)あるいはシニフィアンとシニフィエとの関係、遠近法、技術・創造(技法)と行為・美学と倫理、美との出会い・主観性・他者性、映画における美学と主観、個性と美学。
Bチームは早くも自然美をメインテーマとして考え始めており、その点で他のチームをリードしている。
今日は時間がなくてフランス語での発表のみとなったので、来週は日本語で同内容あるいはさらに発展させた内容をグループごとに発表してもらう。
その間、日本側の三グループの関心事項との摺合せを教員間で行い、来週中には、三つの日仏合同チームを立ち上げ、それ以後はそれぞれのチーム内で話し合いを重ねるように促す。