政府の全世代型社会保障検討会議で最大の焦点だった75歳以上の医療費窓口負担は、現行の1割から2割に引き上げる対象を年収200万円以上(単身世帯)の人とする方針で決着した。
衆院選への影響を懸念する与党などから慎重論が相次ぐ中、「高齢者の負担増に向き合えるか、政権の試金石」(政府関係者)とも言われた今回の改革で一定の成果を残した形だ。
しかし、後期高齢者医療を支える現役世代の負担はなお重いままとなっている。
「2022年度に団塊の世代が75歳以上になり始める中、若者と高齢者で支え合い、若い世代の負担上昇を抑えることは待ったなしの課題だ」。
菅首相は12月14日の会議で、こう強調し、理解を求めた。
厚生労働省によると、「2割」の対象となる高齢者の負担額は1人当たり年3万4000円増える見込み。
施行後3年間は、激変緩和措置で年2万6000円程度まで抑える。
一方、現役世代は後期高齢者医療に支援金を拠出し、自己負担を除く財源の4割を賄っている。
その額は6兆8000億円で、高齢化に伴ってさらに増える見通しだ。
制度改正が実現すれば、支援金の伸びを740億円(2022年度ベース)抑制できる。
ただ、「2割」の対象者の範囲がより広い「年収170万円以上」とする当初案の抑制幅は1220億円だったため、現役世代の負担軽減効果は小さくなった。
医療費の増加は今後も続き、今回の2割負担は「本質的な解決になっていない」(厚労省幹部)との声も漏れる。首相は会議で「次の世代が安心できる社会保障制度を構築し、引き継いでいくのがわれわれ世代の責任だ」と語ったが、少子高齢化の中で「給付と負担」のさらなる見直しが欠かせない。
公明党に妥協する自民党は情けない。