冬眠中のツキノワグマが 筋肉を維持できるのは「省エネモード」のおかけ。
広島大大学院の宮崎准教授たちの研究チームは、ツキノワグマには筋タンパク質の合成や分解を抑えられる特性があるという研究成果を米オンライン科学誌に発表した。
血清が人間の筋肉の細胞量を増やす効果があるとした今年1月の研究に続き、冬眠中の「謎」に迫る間でも筋力低下に伴う寝たきりを防ぐ手法に応用できる可能性がある。
研究チームは筋肉を使わないと短期間で衰える人間に対し、ツキノワグマは3~5ヵ月ほど冬眠した後でも活発に動き回れる点に注目。
秋田県の牧場のツキノワグマ8頭から骨格筋を採取し、同じ個体の冬眠期(2月)と活動期(7月)を比べた。
その結果、冬眠期は筋肉を構成するタンパク質を「作る」「壊す」双方の細胞内の命令系統の働きが、活動期に比べて鈍くなった。
壊す動きでは関連する遺伝子の発現量が4割ほど抑制されたデータも確認され、筋肉量が減りにくい性質を備えていた。
宮崎准教授たちは1月、冬眠中のツキノワグマの血清が人の筋肉細胞量を増やすとの研究成果を発表。
今回の研究と合わせ「『使わなくても衰えない筋肉』という特性が徐々に分かってきた」としている。
ただ、省エネモードに入る「スイッチ」が何なのかは分かっていない。
宮崎准教授は骨折して手術を受けた高齢者が安静にするうちに寝たきりとなるケースを例に「安静中でも筋肉の量や質を維持できれば、寝たきりにならずに済む。
クマの冬眠のような状態を薬や注射の投与で作り出せないか、研究を続けたい」と話している。