体が徐々に動かせなくなる難病「筋萎樟性側索硬化症(ALS)」の新たな治療法開発を目指し、人工多能性幹細胞(ⅰPS細胞)を使って探した白血病の薬を患者に投与する臨床試験(治験)で、京都大の井上治久教授らの研究チームは6月12日、第2段階の治験で病状の進行抑制を確認したと発表した。
最終段階の治験実施を目指す方針を表明、根本的な治療法がないALSの新薬実用化に向け一歩前進となった。
活用も視野に、結果をさらに精査するという。
今回は、発症後2年以内など条件を満たした患者26人を対象に、慢性骨髄性白血病の薬「ボスチニブ」を24週間投与。
主要評価項目には、運動機能の度合いを示す指標を用い、ALSの既存薬の治験で使われた偽薬のデータと比較した。
その結果、今回の治験クループでは低下の抑制を確認。
別の分析では、少なくとも13人で病状の進行抑制が認められた。
ボスチニブで起こりうる下痢や肝機能障害などが一部でみられたが、今回の治験特有のものはなかった。
いずれも用法用量の調整や起こった症状の治療で対応でき、安全性に問題はないとした。
チームは、ⅰPS細胞を使って既存薬から有望な薬を見つける「ⅰPS創薬」という手法を採用した。
患者の皮膚からつくつたⅰPS細胞をもとにALSの病態を再現。
千以上の薬を振りかけて調べ、候補の薬を選んだ。
第1段階の治験では、9人中5人で病状の進行抑制を確認。2022年春から第2段階を始めた。