熊本熊的日常

日常生活についての雑記

統計と現実

2008年11月11日 | Weblog
BRC-KPMG Retail Sales Monitorという統計によると、英国の10月の小売売上が既存店ベースで前年同月比2.2%減となり5ヶ月連続で減少、全店ベースでも同0.1%減となり、2005年4月以来のマイナスとなったそうだ。小売売上が何ヶ月も連続して前年比で減少を続ける現象は日本で経験しているので自分としては珍しいことではない。ただ、統計と生活実感の差というものはこちらのほうが大きいような気がする。

普段、自分が買い物に利用しているのは大手スーパーのSainsbury’sとASDA、中国系スーパーのSeeWooである。このうち最も利用頻度が高いのは通勤経路上にあるSainsbury’sだ。この店は昨年の今ごろ、24時間営業になったが、それ以前も以降もそれほど賑わっているという印象は無い。ただ、このところセールが目立つ。セール自体は恒常的に行われているが、対象商品の範囲が格段に拡大したように感じられる。ただ、それで客が増えたとも思えない。ASDAは利用するとすれば週末なのだが、いつも混んでいて、結局ここで買い物をするのを諦めてSainsbury’sへ行ってしまうこともしばしばである。ここが賑わっているのは、微妙な差でしかないと思うのだが、商品の価格が全般に安いのである。この店が入居しているショッピングセンターが近くのSainsbury’sのそれよりも大きく、集客力があるという事情もあるのかもしれない。SeeWooは扱っている商品が独特なので、週末にしか客が入らない印象がある。少なくとも私が普段利用しているこれらの店の店内の様子に大きな変化があるようには見えない。

英国には大手スーパーのチェーンとして、ここに挙げた2社の他にWaitrose、Marks & Spencer、Tesco、Icelandなどがある。それぞれに対象としている客層に微妙な差異がある。WaitroseやMarks & Spencerは商品の価格帯が他に比べて一段上である。私は週末に出かけた帰りに市内の大きな駅にあるエキナカのMarks & Spencerを利用するのだが、商品の陳列棚を見て思わず声を上げてしまうこともある。「高っ!」と。東京に帰った時に昔の職場の同僚でロンドン駐在経験者と話をすると、彼等が利用していたのはWaitroseやMarks & Spencerなのである。商品の価格という点では微妙な違いしかないのだが、Tesco、Sainsbury’s、ASDAの間にも客層の違いはある。例えば、私が利用しているSainsbury’sとASDAの間は数百メートル程度の距離しか隔てていない。しかし、客の皮膚の色が店によって明確に違うのである。どちらも大きな駐車場があるが、そこを突っ切るときに、Sainsbury’sでは車が停車して歩行者を通してくれることが多いが、ASDAではそのような光景は殆ど見られない。

チェーン毎の業績の違いがどの程度あるものなのか調べたことはないが、可処分所得に占める生活必需品消費の割合は所得が低いほど高くなるはずだ。とすれば、低所得層御用達の店には需要の下方硬直性があるのではないだろうか。一方で相対的高額所得者は所得環境の変動が消費行動に与える影響が大きいと思われる。ホンマもんの金持ちは、そもそもスーパーチェーンでは買い物をしないだろう。

とすると、私の日常からは景気の変化は読みづらいということになる。尤も、読みたいとも思わないのだが。