熊本熊的日常

日常生活についての雑記

583

2008年11月20日 | Weblog
たまたま某新聞社のサイトで新潟と大阪を結ぶ急行「きたぐに」についての紹介記事を見つけた。使用されている車両は583系だそうだ。連載記事だったが、思わずその連載のバックナンバーまで読みふけってしまった。

583系と言えば、世界初の電車寝台特急で、運行開始当時の日本の在来線では最速の時速120キロで走行可能という画期的な車両だ。しかも、足回りは同時期に開発された481系とほぼ同じで開発コストを節約、運用面では、昼間はボックスシート、夜間は寝台に転換して使用と経済性にも優れた設計であった。当初は新大阪と博多を結ぶ寝台特急「月光」、新大阪と大分を結ぶ昼行座席特急「みどり」として581系が1967年に運用を開始した。翌年、東北本線の全線電化に合わせて581系を改良し、3電源(直流1,500V、交流50・60Hz20kV)対応となって更に利用範囲が広がった583系が開発された。

私は、高校生の時、修学旅行で583系の「ゆうづる」に乗車した。上野から常磐線経由で青森に出て、青函連絡船で函館に渡り、そこから函館本線の特急で札幌まで行くという経路だった。札幌からは札幌市交通局の観光バスで移動し、帰路は函館から青函連絡船、「ゆうづる」を乗り継いで上野へ帰ってきた。

小学生の1年生か2年生の頃、友人の池上君の家にはHOゲージの模型がたくさんあった。彼の父上が趣味で車両を自作していたのである。彼の家に遊びにいくと、その581・583系やEF66に20系の客車を連結したものを走らせて遊んだものである。一度だけHOゲージのレールを芝生の上に直接敷いて走らせたこともあった。今から思えば無謀なのだが、当時はそんなことはあまり考えもしなかった。当然、砂が車輪に絡み付き、そのうち走らなくなる。そして、当然、池上君は父上に怒られるのである。それでも彼は「ゆうべとうちゃんにおこられちゃったよ。えへへ。」とあっけらかんとしたものだった。

私と583系との接点は、この2つのエピソードだけだ。そんなことはどうでもよいのである。

新幹線網の拡大と、羽田空港の沖合展開や地方空港の整備による国内航空の利便性向上に伴い、寝台特急というものへの需要は必然的に低下する。そうしたなかで、もともと特急用車両として開発されたにもかかわらず、運用環境の変化に応じて、格下の急行だろうが、臨時列車だろうが、なりふりかまわず使いつぶされて、やがて老朽化により廃車されるという車両の歴史が、人の生活史と重なるように見えて興味を引かれるのである。

結局、581・583系は1967年から72年にかけて434両が製造されたそうだ。このうち現存しているのはJR東日本に6両編成2本の12両、JR西日本に10両編成5本の50両だけでだそうだ。JR東の2編成は臨時列車用、JR西のは主に急行「きたぐに」として使用されている。今度、乗りに行ってこようかと思っている。