熊本熊的日常

日常生活についての雑記

骨董の町

2008年11月23日 | Weblog
骨董というと「お宝」というイメージを持つ人が多いかもしれない。英語のantiqueには、美術品としての価値のある古道具類という意味もあるが、単なるがらくたも含まれる。

ロンドンは町そのものが骨董のようなものなのだが、そのなかでも骨董品店が軒を連ねる地域がある。例えば以下のような地域がある。

Portbello: 2008年4月5日付「骨董考」に紹介したPortbello Roadは約2,000人のディーラーが集まっていると言われており、世界最大規模である。どのような場所であるかは、4月5日のブログをご参照頂きたい。映画「ノッティングヒルの恋人(原題:Notting Hill)」の舞台となる地域でもあるので、映画を観た人なら骨董に興味がなくてもその風景が記憶に残っているかもしれない。

Camden Passage: 似たような名前でCamden Townというのがあるが、場所も内容も全然違うので要注意である。Camden Passageのほうは行ったことがないので、どのような場所であるのか知らない。手元の「ロンドンのアンティーク」という本をぱらぱらと見る限りではPortbelloよりも高級な感じがする。Camden Townのほうは、コーヒー豆の調達に出かける町なので何度かマーケットのほうも訪れたことがあるが、アメ横の巨大版という感じだ。今年2月にその一画が火災で焼失してしまった。私が初めてこのマーケットを訪れたのが、その火災のあった週の週末だったが、その時は火災があったということを知らず、火災跡に気付かないままマーケットを歩いていた。それくらい規模が大きく、人出の多い場所なのである。

Bermondsey: 毎週金曜の早朝に業者間の取引が行われるマーケットである。業者間取引は午前9時前には終わってしまうので、掘り出し物を見つけたければ早起きをして、業者に交じって品物を探さなければならないのだそうだ。平日早朝なので、訪れたことはないし、骨董そのものに興味があるわけでもないので訪れてみようとも思わない。

その他、玉石混淆系: 骨董に限定した市場ではないが、骨董も売っているマーケットとしては、Covent Garden、Greenwich、Spitalfield、St James’s Church、そして先ほど触れたCamden Townの一画などがある。Spitalfield以外は訪れたことがあるが、どこも特に面白いとは思わなかった。

以下の地域は、お宝系骨董あるいはそれに準ずるきちんとした商品を扱っている。なかには事前に予約をしておかないと店に入れてもらえないところもある。

Mayfair: Oxford StreetとPiccadillyを結ぶBond Street界隈である。ロンドンを訪れたことのある人なら、おそらく一度はこの通りを歩いたことがあるだろうし、ガイドブックには必ず載っている地域なので説明は不要だろう。とにかく敷居が高い。骨董に関しては超高級品店が地域内に点在しているのだが、Royal Academy of Arts脇のBurlington Arcadeには多くの高級骨董品店が軒を連ねている。観光客が多い地域なので、殆どの店でクレジットカードが使える。

Kensington Church Street: 留学時代の知人で浮世絵の収集をしている人がいて、その人が帰国直前に足繁く通っていた浮世絵の店がこの通りにある。この通りで気軽に入ることのできるのはそのJapanese Galleryくらいのものである。クレジットカードを受け付けない店もあるし、曜日によっては予約客しか店に入れないところもある。カードが使えない場合はどうするのかというと、銀行振り込みとか、BADAやLAPADAといった骨董ディーラーの業界団体が発行したノートを利用するのだそうだ。

Marylebone Church Street: 通りの名前はChurch StreetだがKensington Church Streetと区別するためMaryleboneを付けるのだそうだ。昨日ここを訪れた。骨董品店はAlfiesという建物のなかに入居している。それ以外では、このAlfiesの周辺に数軒の骨董品店があるだけだ。昨日訪れたときには、このChurch Streetに市が立っていた。通りの市場はごくありふれた食品や日用雑貨を扱う店ばかりである。アラブ人街のようで、商店にはアラビア語の看板が目立ち、街を行く人々もそういう人たちが多い。そうしたなかでAlfiesの店内だけがちょっと違った雰囲気になっている。ここに並ぶ商品は家具とか照明器具、陶器が多い。玉石混淆系のマーケットに比べると総じて上品な店の構えである。自分は陶器が好きなので、壷や茶碗に目がいくのだが、ここに並んでいるものは総じて状態が良く、丁寧に作られ使われてきたことが窺われるものが多い。

その他、高敷居系: Pimlico RoadやLillie Roadに数件の骨董品店が集まっている一画があるそうだ。もともと骨董品店が集まっていたKings RoadやFulham Roadは地価の高騰で業者が営業を続けられなくなってしまい、今では「骨董品街」と呼ぶことのできる状況ではなくなってしまったのだそうだ。

昨日はMaryleboneのChurch Streetを訪れ、その後Cecil Courtを覗いて、大英博物館へ行ってきた。大英博物館の書店に並ぶ同博物館が企画出版した本になかなか面白いものが多く、久しぶりに立ち読みに長い時間を費やした。