こうした現象は東京だけではないのである。ここロンドンでも、クリスマス前になると熱に浮かれたように商店街に足を運ぶ人々が増えるのである。毎度書いているように、通勤の行き帰りにショッピングセンターの駐車場を横断している。核テナントのSainsbury’sというスーパーは昨年11月から24時間営業になっている。それでも朝の通勤時間帯は、駐車場は疎らである。それが12月になった途端、朝から駐車場が4割程度埋まっているのである。去年もそうだった。こんな朝早くにスーパーで買わなければならないものとは一体何なのだろう?
単なる習慣なのかもしれないが、習慣で気持ちばかりの安売り商品を買うために雑踏のなかを歩いたり、朝早くからスーパーに車を走らせたりするものなのだろうか?世の中には不思議なことがたくさんあるのだが、師走の風景というのも自分のなかでは永遠の謎である。
第九もよくわからない。といいながら、一度だけ合唱団に参加したことがある。9月から週1回の割合で仕事帰りに練習に参加し、11月になるとそれが週2回になる。11月までは私のような素人だけの練習が、12月からは東京都民合唱団というセミプロ級の人たちと合流し、最後の仕上げとなる。年末に上野の文化会館大ホールで本番を迎える。観客の多くは合唱する人の身内や友人たちだ。合唱に参加する人には最大4枚までチケットの割当がもらえるのである。当日は緊張と、発声という全身運動と、照明の熱で汗びっしょりになる。多少間違えても異様なほどに合唱団の規模が大きいので気にするほどのこともない。そもそも自分の声など聞こえない。演奏が終わると、観客席は総立ちだ。スタンディングオベーションを頂けるほどのものかと思いつつも、気分は最高に良い。しかし、第九の合唱に参加したのは、このときだけだ。かねてから一度参加したいと思っていたので、その思いが叶って満足できたのである。そして逃れることのできない現実に直面したのである。私は音痴だ。