熊本熊的日常

日常生活についての雑記

花はなくとも

2008年12月30日 | Weblog
年末で、出勤しても仕事らしい仕事がなかったので、自主的に半日で終業として、Courtauld Galleryに寄ってから帰宅した。

ここを訪れるのは7月5日以来である。作品の入れ替えや展示位置の変更があり、特に1階(日本の数え方では2階)の、階段を上がって最初の部屋の雰囲気が変わったように感じた。確か、前回来たときに開催されていたセザンヌ展が終わり、当館所蔵のセザンヌ作品がもとの場所に戻り、それで全体に作品の並びが変わった所為だろう。7月9日付「モネだけの花」に取り上げた「Vase of Floweres」があった位置にはマネの「Banks of the Seine at Argenteuil」が展示されていた。今日はモネの花を見ようと思って来たので、少しがっかりである。しかし、同じ部屋にあったモネの「ANTIBES」にこれまでよりも強い興味を覚えた。なんとなく見たことがあるような風景に感じられるのである。何故だろうと思いながら説明を読むと日本の浮世絵の影響を受けた作品だという。なんとなく了解できたようなきがして、この絵に自分なりのタイトルをつけてみた。「熱海」。

7月頃はそれほど関心がなかったボッティチェリに惹かれるようになった。ここにあるのは「The Trinity with St Mary Magdalen and St John the Baptist, the Archangel Raphael and Tobias」という長い名前の作品だ。全体の構成とか、子供の姿をした人物の顔とかその配置がおもしろい。15世紀まで遡ると、その時代がどのような時代であったのかという興味は減退してしまう。自分のなかで歴史への興味は、現在という時代が最も強く、そこから過去へ向かって弱くなる。絵画は、本来なら古い作品ほど、そこに込められた寓意とか物語が強く反映されているものなのだが、自分の意識としては、そんなものはどうでもよくなってしまう。ただ、そうした意味性や記号性の故に奇妙な表現に見えるものに溢れていて、それが興味をそそる。あと、当時の画家は芸術家というよりも科学者に近い存在であったので、絵の作りに計算された均整のようなものがあり、それが美しいとも思う。

ここにはピカソが描いたアイリスの小品があるが、ちょっとゴッホのような感じだ。この人の作品は何を描いても、大きなものも小さなものも、強烈な存在感を放つから不思議だ。こういう人を天才というのだろう。彼と同時代の人で、モディリアーニの作品もある。この人の作品は、以前はそれほど好きでもなかったのだが、やはりこちらへ来てから惹かれるようになった。特に裸体像が素晴らしいと思う。ここにあるのは、まさにその裸体像「Female Nude」だ。

Courtauld Galleryを出て、まだ日が高かったので、少しぶらぶら歩いてから住処へ戻った。このところ急に冷え込み、日が落ちると、道端に駐車してある車がすぐに白く凍りはじめた。それでも、冬至を過ぎた所為か、なんとなく気持ちは明るめである。

娘へのメール 先週のまとめ

2008年12月30日 | Weblog

先週はクリスマスがあり、こちらは町がまるごと休日という様子でした。ただ、景気が悪い所為か、去年に比べると家々の飾り付けも地味で、あまり華やいだ雰囲気はありませんでした。繁華街は勿論、派手な装飾が施されていますが、商売のほうは厳しいようです。

イギリスは25日と26日が休日で、25日は公共交通機関が全て運休します。私は仕事があるので歩いて出勤するのですが、去年と違って天気が良かったので、朝から出歩いている人が多いように感じられました。去年は風雨が強かったので、ゴーストタウンのようでしたが、今年はテムズ川沿いの遊歩道などはジョギングをする人が行き交い、普通の週末のような風景でした。

いよいよ来週水曜日に、現在の住処を引き払い、ホテル住まいになります。このため、食材などを残さないようにしないといけないので、食事の献立とか、買い物には注意を払うようになりました。

確か、9月に会った時、ミレイ展を見たって言ってませんでしたか? ミレイの「オーフィリア」という作品は記憶にありますか? 小川のなかで女性が仰向けになっている絵です。昨日、あの小川の場所へ行ってきました。ロンドンの中心部から鉄道で30分ほど南へ下ったところにあるユーウェルという町にあります。あの川はホッグスミルズ川といいます。今でも水はきれいで、川の周囲も緑地として整備されているので、なんとなく、あの風景のような感じの場所はいくつもありました。

ミレイは1851年の6月から11月にかけて、毎日のようにそこで絵を描いていたそうです。あの絵の精緻な描写を思い起こしてみれば想像がつくかもしれませんが、とにかく時間をかけて正確に写生して色彩をつけていったそうです。あまりに精緻な作業なので、1日にどんなに頑張ってもコイン1枚ほどの大きさしか描けなかったと、後に本人が語っていたそうです。

私は別にこの絵とかこの作家が好きで、ユーウェルへ行ったわけではありません。ただ、休日にどこか気持ちのよい田舎町を歩いてみたいと思っただけです。たまたま、あの絵の小川が、ロンドンの近くであることを知り、出かけてみました。好天にも恵まれ、冬の半日をのんびりとすごすことができました。

そちらも寒さが厳しいでしょうから、健康管理には十分気をつけてください。

そろそろ誕生日ですね。なにか欲しいものはありますか? 考えておいてください。

では、さようなら。ごきげんよう。