熊本熊的日常

日常生活についての雑記

狼煙

2010年11月05日 | Weblog
先週の金曜に橙灯で町内会長と話し込んだときに、陶芸の個展を開きたいというようなことを口走った。会長はカフェマニアで、いくつかギャラリー・カフェが思い浮かんだらしく、昨日、ハニービーンズ経由で十条のFINDという店を推薦してきた。さっそく今日、ハニービーンズに託してあったFINDのチラシを受け取りに行き、出勤前にその店を訪れた。

駅から徒歩5分ほどで、住宅街のなかに位置していながらもわかりやすい立地だ。もとアパートだった建物を改装してギャラリー・カフェにしたという。土地が旗地だが、アプローチには植栽が施され野外席も設けられていている。野外席の傍には炭が熾してしてあって、側を通過するだけで心地よい暖かさが伝わってくる。旗地であることで、かえってこうした心地よい空間を演出できている。木造二階建てで1階がカフェ、2階がギャラリーになっている。カフェの客席部分には窓が多く、2階に設けられている天窓から階段の空間を通して1階にまで外光が届いて、住宅密集地の旗地内の建物でありながら、室内は穏やかに明るい。

内装は古い道具類を巧みに組み合わせていて、建物の梁などを塗装する程度にとどめて、建物の古さを活かそうとするかのような印象だ。客席は4人がけのテーブルが3つと2人がけが1つ。落ち着くにはちょうどよい大きさではないだろうか。

店の人たちも感じがよく、深煎りのブレンドと手作りのシフォンケーキをいただいたのだが、どちらも美味しかった。

会長がお気に入りのカフェというのは、自転車で行くことができる範囲内で、しっかりとした仕事をしている店で、それでいながらあまり知られていないところ、なのだそうだ。店の人にギャラリーのことを尋ねる際に、会長からの紹介だと言うと、今日も私と入れ違いで来ていたという。今月は橙灯の休業日が多いので、こちらに流れてきているのか、橙灯にもこちらにも頻繁に出没しているのか、たまたま今週は連続してこの店を訪れたのか、そのあたりは今度お目にかかったときの話のネタにさせていただこうと思う。ちなみに会長の本拠地は茗荷谷だが、自転車といっても本格的なサイクリング用車両なので、行動範囲はかなり広い。

会長と知り合ったのは、8月の終わり頃にハニービーンズでたまたま一緒になり、羽入田さんに紹介してもらったのがきっかけだ。以来、彫刻のワークショップでご一緒させていただいたり、地元の落語会を一緒に聴きに行ったり、橙灯で出くわしたり、という具合で、会えば互いに話好きなので長話を交わす。話題に困ることがなく、時間が許せばいくらでも話をしていられる相手なので、知り合ってまだ2ヶ月ほどだが良い縁に恵まれたと、少なくとも私は喜んでいる。

ところが、会長と会うのは偶然頼みに近い状態だ。今回、FINDのチラシの受け渡すのも、前にコーヒー豆のおすそ分けを頂いたときも、ハニービーンズ経由なのである。携帯の番号とかメルアドを交換すればよさそうなものだと思われるかもしれないが、こういうアナログのつながりというのも面白いと思っている。別に意識をして直接連絡を取り合わないわけではなく、そういう流れになればその流れに従うだけのことだ。ただ、狼煙を上げ合うように、人伝や偶然を頼りに交際を結ぶほうが、人間関係としては健全であるようにも思う。偶然に出会うということは、互いに素の状態であるわけで、そうした状態で交流できる相手というのは見つけようと思って見つけることができるものではない。勿論、電話やメールを交し合う関係も、それはそれで大切にしなければならないとは思うが、多様な関係性を持つことで、自分の考え方というものにもそれだけ深みのようなものが出てくるのではないだろうか。