熊本熊的日常

日常生活についての雑記

習慣破壊

2010年11月29日 | Weblog
個展の案内はがきの草稿が上がってきた。思わず「うっ」となった。「うっ」の意味は敢えて明かさない。しかし、よくよく眺めてみると、これはこれで面白いかもしれないと思った。

校正を入れて、その確認をして、というようなことを2回ほど繰り返し、印刷へ出してもらった。パソコンの画面で見るのと、葉書という形になった実物とは、全く同じではないだろうが、印刷代を抑えるのに納期を長く取ったので、出来上がりは2週間後の予定だ。

陶芸展の案内はがきのデザインというのはある程度決まったものがあるように思う。それで、自分の個展はその決まったものとは違ったものにしたいと考えた。陶芸展に限らず、催し物の案内はがきというのは、気をつけてみてみると、街中の至るところで配布されている。カフェやギャラリーには当然に何種類ものはがきの束が並んでいるし、ダイレクトメールで送られてくるものも少なくない。ここ一年ほどの間、そうしたはがきを集めてみた。「集める」といっても積極的に蒐集するというのではなく、手元に舞い込んできたものを捨てずにおくとか、出先で目に付いたものをいただいてくる、という程度の「集める」である。

そうやって案内はがき類を眺めてみると、あまり面白いものが無い。おそらく自分でデザインしているのではなく、定型化されたテンプレートのようなものを使って部分ごとに入れ替えているだけだから、あるいはそうしたものを見慣れた眼に、案内はがきとはかくあるべし的な固定概念ができあがっているからではないかと思う。そうしたなかで目を引くものは、イラスト風のものだったので、自分の個展の案内状にイラスト風のものというのは当初から自分のなかでは候補のひとつとしてあった。

しかし、デザインの打ち合わせのとき、最初に検討したのは写真を使ったものだった。茶碗にご飯を盛って、どんと置いてみる、というようなことを考えた。写真を使うとなるとカメラマンを手配しないといけない、とか、撮影場所を考えないといけない、というようなこともあって、いろいろ大掛かりになってくる。今回は最初ということでもあるので、イラストということに落ち着いた。

私には絵心と言うものが無いので、イラストと言ってもイメージがあったわけではない。ただ、見る人の目を驚かせるような、既存のイメージとは違ったものにしたいという希望だけはあった。果たして、あがってきた案は、確かにその狙い通りではあった。但し、これが好きか嫌いか、というのは別の問題だ。

昔、「モンティ・パイソン」という番組があった。オリジナルはイギリスBBCの制作で、私が中学生の頃に観ていたのはテレビ東京が作った完全吹き替え版だ。ポニーキャニオンからVHSが出ていたので、見かけるたびに一巻ずつ買い揃え、1巻から7巻まで持っている。そのなかでオープニングの画面のなかで決まり文句のように使われているもののひとつに
“It’s something different.”
というものがある。この番組はコメディなのだが、誰もが思うことと何か違うことに人の感情を揺り動かすものがある、ということだろう。”Something”は日本語の「何か」以上に微妙に深い意味がある。何がしかの意味を持った「何か」なのである。ビートルズの曲で”Something”というのがあるが、そこで歌われているのはまさにそういう「何か」あるいはその「何か」を持った人のことだ。どのようなことであれ、日常のルーティンから外れて、何事かを世に問うてみるなら、そういう「何か」がなければ問う意味が無いと思う。何を問うのかは、敢えて語らないが、そういうことも考えながら、個展の準備をしている。