会期終了間際となった五島美術館での源氏物語絵巻展を観て、三井記念美術館に移動してやはり会期終了間際の円山応挙を観てきた。渋谷でJRから東横線に乗り換えるのだが、渋谷に着いたのが11時半頃だったので、渋谷で腹ごしらえをすることにした。
2000年8月から2001年11月まで渋谷で働いていたので、渋谷から青山にかけてはランチエリアだったのだが、さすがに10年も経つと店は殆ど入れ替わっている。そうしたなかで当時と変らぬ佇まいを見せているところもある。「かつ吉」はそういう変らない店のひとつだ。ちなみに「吉」の字の上半分は「士」ではなくて「土」なのだが、そういう文字が私のパソコンに入っていないので便宜的に「吉」とさせていただく。尤も、この文字が入っているものは珍しいだろう。
明治通りに面したビルの地下にあるのだが、そこへ下りる階段から店が始まっている。この階段の石から店主はこだわったらしい。この石は店主が世田谷の豊前屋という銘石店でみつけたものだそうだ。この店で見つけたという石灯籠も据えられている。この石灯籠は江戸時代の終わりごろに茶人が自分の庭に据えるために白河石でつくらせたものだという。
その石の階段から店の入口に至るところが、ちょうど茶室の露地のような風情だ。店の入口は昔の大店の戸のような重厚な硬木製で、自動ドアなので開閉にその重厚さは感じられないのだけれど、入口前から店内へとつながる欅や栃や楢のような硬い木の一枚板をふんだんに使った内外装や建具類は古民家のような雰囲気を醸し出している。外食店に多く見られるMDFや合板にそれらしい木目プリントを施したよくある建材とは違って、その空間自体に店の主人の思いのようなものが表現されているように思う。テーブルの天板も耳付の天然木だが、さすがにあまりやりすぎると多少煩い感じがしないこともない。
ちょうど牡蠣の季節なので、カキフライと椎茸のコロッケとヒレカツが盛り合されたセットをいただく。味のことは書かないが、旨くなければ、目的地へ向かう途中であっても、わざわざ足を運んだりはしない。料理が盛られている器も堅木で作ったものや染付の陶器が多い。これらも店主の好みや考えがあって選ばれているのだろう。箸置も堅木で、箸置にしてはごついのだが、店の雰囲気には合っている。これを持ち帰ってしまう客もいるらしいが、この箸置が似合う家庭がそうそうあるとは思えない。欲しいと思うと衝動的に手が出てしまうという猿のような輩が多いのか、人を猿にしてしまうほど魅力があるのか。
ここは味噌汁、ご飯、サラダがお代わり自由で、他にキムチやナムルや香の物もお代わりできる。若い頃ならいざ知らず、50近くなるとそれほど代謝も活発ではなくなるので、お代わりなどしたくてもできない。一見するとカキフライもコロッケもカツも一個ずつなので、上品な印象だが、揚げ物ということもあり、美味しいということも勿論あって、十二分に満足感を得て食べ終えることができる。
満腹になったところで店を出て、東横線と大井町線を乗り継いで上野毛に行く。駅改札を出たところに五島美術館の入場までの待ち時間を書いた看板を持った人が立っている。90分だという。そのとき12時40分だったので、5分ほどで美術館に着いたとして、そこから90分だと展示室に辿り着くのは2時過ぎになってしまう。これではゆっくりと観ていられないかもしれない、と思いながら、行ってみなければわからないので、まずは美術館へ急ぐ。
美術館の入口でも展示室までの待ち時間は1時間30分と書いてある。しかし、一見したところ、行列はそれほど長いとは感じられなかったので、チケットを買って並んだ。果たして、実際の待ち時間は表示されていた時間の半分ほどで1時半過ぎには展示室の中に入ることができた。並びながら考えた。食事を済ましてから並ぶべきだったのか、食事は後にして並ぶべきだったのか、と。腹が減っていると、どうしても落ち着かないので、行列ができるものでもできないものでも、美術展に出かける直前に腹ごしらえをすることが多い。今回は実際に並んでみて、食べておいて正解だったと思った。ただ並ぶのもそれなりの体力は消耗する。少し並んで腹が落ち着いた頃に展示室に入場したおかげで、落ち着いて展示を観ることができた。
2000年8月から2001年11月まで渋谷で働いていたので、渋谷から青山にかけてはランチエリアだったのだが、さすがに10年も経つと店は殆ど入れ替わっている。そうしたなかで当時と変らぬ佇まいを見せているところもある。「かつ吉」はそういう変らない店のひとつだ。ちなみに「吉」の字の上半分は「士」ではなくて「土」なのだが、そういう文字が私のパソコンに入っていないので便宜的に「吉」とさせていただく。尤も、この文字が入っているものは珍しいだろう。
明治通りに面したビルの地下にあるのだが、そこへ下りる階段から店が始まっている。この階段の石から店主はこだわったらしい。この石は店主が世田谷の豊前屋という銘石店でみつけたものだそうだ。この店で見つけたという石灯籠も据えられている。この石灯籠は江戸時代の終わりごろに茶人が自分の庭に据えるために白河石でつくらせたものだという。
その石の階段から店の入口に至るところが、ちょうど茶室の露地のような風情だ。店の入口は昔の大店の戸のような重厚な硬木製で、自動ドアなので開閉にその重厚さは感じられないのだけれど、入口前から店内へとつながる欅や栃や楢のような硬い木の一枚板をふんだんに使った内外装や建具類は古民家のような雰囲気を醸し出している。外食店に多く見られるMDFや合板にそれらしい木目プリントを施したよくある建材とは違って、その空間自体に店の主人の思いのようなものが表現されているように思う。テーブルの天板も耳付の天然木だが、さすがにあまりやりすぎると多少煩い感じがしないこともない。
ちょうど牡蠣の季節なので、カキフライと椎茸のコロッケとヒレカツが盛り合されたセットをいただく。味のことは書かないが、旨くなければ、目的地へ向かう途中であっても、わざわざ足を運んだりはしない。料理が盛られている器も堅木で作ったものや染付の陶器が多い。これらも店主の好みや考えがあって選ばれているのだろう。箸置も堅木で、箸置にしてはごついのだが、店の雰囲気には合っている。これを持ち帰ってしまう客もいるらしいが、この箸置が似合う家庭がそうそうあるとは思えない。欲しいと思うと衝動的に手が出てしまうという猿のような輩が多いのか、人を猿にしてしまうほど魅力があるのか。
ここは味噌汁、ご飯、サラダがお代わり自由で、他にキムチやナムルや香の物もお代わりできる。若い頃ならいざ知らず、50近くなるとそれほど代謝も活発ではなくなるので、お代わりなどしたくてもできない。一見するとカキフライもコロッケもカツも一個ずつなので、上品な印象だが、揚げ物ということもあり、美味しいということも勿論あって、十二分に満足感を得て食べ終えることができる。
満腹になったところで店を出て、東横線と大井町線を乗り継いで上野毛に行く。駅改札を出たところに五島美術館の入場までの待ち時間を書いた看板を持った人が立っている。90分だという。そのとき12時40分だったので、5分ほどで美術館に着いたとして、そこから90分だと展示室に辿り着くのは2時過ぎになってしまう。これではゆっくりと観ていられないかもしれない、と思いながら、行ってみなければわからないので、まずは美術館へ急ぐ。
美術館の入口でも展示室までの待ち時間は1時間30分と書いてある。しかし、一見したところ、行列はそれほど長いとは感じられなかったので、チケットを買って並んだ。果たして、実際の待ち時間は表示されていた時間の半分ほどで1時半過ぎには展示室の中に入ることができた。並びながら考えた。食事を済ましてから並ぶべきだったのか、食事は後にして並ぶべきだったのか、と。腹が減っていると、どうしても落ち着かないので、行列ができるものでもできないものでも、美術展に出かける直前に腹ごしらえをすることが多い。今回は実際に並んでみて、食べておいて正解だったと思った。ただ並ぶのもそれなりの体力は消耗する。少し並んで腹が落ち着いた頃に展示室に入場したおかげで、落ち着いて展示を観ることができた。