声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

少女A

2014-12-29 13:27:17 | アナウンサー 話し方 企業研修 ビジネス

その昔、関西でフリーランスのアナウンサーをしていた頃の話です。

大阪の某大手楽器店のエレベーターに
私よりちょっと背が高い俯き加減の少女とマネージャーらしき男性が乗って来ました。

内巻きにした豊かなロングヘア、
ほぼノーメイクの艶やかなふっくらした顔、

「中森さんですか?」と訊くと

「はい」と消えそうな声で頷きながら答えたのが彼女と私の初めての出会いでした。

ステージ上ではアイドルに「◯◯ちゃん」と名前で呼びかけるのが普通ですが
楽屋裏という事と、初対面の雰囲気で

( この子には馴れ馴れしく話しかけたりしない方がいい )

と、瞬時に判断した結果です。

芸能界ズレしていない大人しい印象と、少し淋しそうな表情が私に、そうさせたのかもしれません。

そしてマネージャーと簡単な打ち合わせの後で臨んだ楽器店特設ステージでの新曲キャンペーン…

サテンとシフォンの薄い萌黄色のミニドレス姿に着替えて登場した彼女は、
まるでお人形のようでした。

最初のうちは、打ち合わせ通りインタビューをしながらスムーズに進行していました。

家族の話など終始笑顔で答えてくれ、会話も弾み、和やかなムードだったのを覚えています。

ただ、何かをきっかけに特設ステージの周りは、ファンたちの異様な熱気に包まれ始めました。

おそらく予想以上に大勢のファンが押し寄せたせいだと思われます。

歌の途中から、前列と後列のファンの押し合い圧し合いが始まり、

後列のファンが立入禁止の商品棚に登り、
興奮した最前列のファンが握手を求めてステージに上って来た時、

主催の楽器店側から中止の決定。

即座に私はMCからガードマンに変身しました。

そして、握手を求めて押し寄せるファンの前に立ちはだかり、彼女を楽屋へと逃しました。


振り向きざま、
泣きそうな顔で「すみません」と言いながら立ち去って行く彼女と目線が合いました。


「ステージに上がったり、商品棚に上るなどルール違反があったため、キャンペーンを中止します!」


MCとしての締めのコメントに、
会場はますます騒然とし、興奮したファンの罵声や怒号が飛び交う中、

悔し紛れに「クソババァ~」と叫んだファンの男の子たちもいましたっけ。

イベントの基本原則は何より事故防止と安全確保です。

安全のためには
クソババァにだってガードマンにだってなる…

そう決意したMCの仕事でした。


あれから30年…

紅白で彼女の姿が見られるかも?と聞いて思い出しました。

あの時のファン達も、彼女を待ち焦がれているのかもしれませんね。

もう、すっかりオジサンになっているでしょうねぇ…
私を「クソババァ~」と罵ったあの男の子たちも。(^^;;



写真は、KBS京都で喋っていた頃の私…

当時のアダ名はクソババァではなく
「島根のカルメン」デシタ(^^;;


清水由美













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