町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

登場から30周年を迎えた新京成電鉄8900形

2023年10月31日 | 京成グループの鉄道

京成電鉄の子会社でありながら独自仕様の車両を導入していた新京成電鉄は、8800形の増備が終了した1991年から僅か2年後の1993年に車体構造・設計を大幅に刷新した8900系を登場させました。親会社の京成3700形を参考にしながらもスムーズな乗降を目指して標準的な1.3メートル幅から1.5メートルに拡大したワイドドア、旅客向けサービス機器に自動放送装置、京成グループの通勤型電車で唯一のボルスタレス構造の台車に、当時は極めて珍しかったシングルアーム式パンタグラフの採用など、新機軸をふんだんに盛り込んだ意欲作で、首都圏エリアでVVVFインバーター制御を普通鉄道で初採用した8800形と共に、準大手私鉄の通勤型電車としては一際異彩を放つ存在でした。当時は在来形式の置き換えは考慮されなかった為、8両編成3本のみの製造に留まっています。

正面は普通鋼製で塗装され、地下トンネル区間を走行することは無いものの非常用貫通扉を備えている正面が特徴の8900形。登場時はクリアブルーの太帯、その下と幕板部にチェリーピンク(後に濃い目のルビーレッドに変更)の細帯が入り正面はチェリーピンク帯で新京成の「S」字を表現したデザインでした。他形式に合わせた6両編成化・新塗装化・走行機器更新は20149月からで、8918編成から実施されています。シングルアーム式パンタグラフは現在こそ東洋電機製造の標準的なものですが、登場時から2015年頃までは工進精工所製のKP系を搭載していました。これは日本では極初期の仕様で、ヨーロッパの鉄道車両で見られるようにアームの上部がYの字のような形態の外観で、本系列の目立つ特徴の一つでした。

6両編成化で余剰サハを廃車にしている為、現在は3編成18両体制ですが、少数派である為に京成千葉線乗り入れからは除外され登場時と変わらず新京成線松戸〜京成津田沼間の運用にのみ充当されています。なお、次の新型車であるN800形は親会社の京成電鉄3000形との共通設計とされ、新京成独自デザインの車両はこの8900形が最後になっています。

ワイドドアが目立つ車内。登場時は化粧板仕上げの角ばった窓のドアでしたが2008年に現在のステンレス無塗装仕様に交換されました。他にもドア間の開閉式+ブラインド無し固定式+開閉式の3分割となっている側窓などかなりの独自仕様が際立ちます。類似した窓構造はかつての千葉ニュータウン鉄道9000形が採用しており、ブラインドを下ろした際に外の駅名標が見えなくなることがないように、という車内案内表示が普及する以前のアイディアでした。本系列は登場時より車内案内表示器を設置していますが、どの席からでも現在または次の駅が確認しやすくなるようにとの想定なのかも知れません。

車内案内表示器は当初デジタル時計を併設したLEDスクロールタイプでしたが、現在は液晶画面に換装されました。写真は新京成サンクスフェスタで撮影したもので、定期では絶対有り得ない京成千葉線直通の千葉中央行きです。余談ですが、本来なら不要な筈の非常用貫通扉や使用されていない列車番号表示器らしきものの存在から、当初はもっと増備が見込まれており他路線区間への乗り入れを目論んでいたのではと色々想像が膨らむ部分です。

8900形は今年で登場30周年を迎え、記念乗車券の発売やヘッドマーク取り付けが行われています。既に首都圏に於いては古参の部類に入りつつありますが、8800形と共に今後も個性豊かな一時代の新京成車として末永い活躍を願いたいですね。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 制定30周年目を迎えた「鉄道... | トップ | 新京成電鉄、親会社の京成電... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。