1963年の登場以来、東武鉄道の各線に配置されていた8000系は登場以来実に40年余りの長期間に渡り、不慮の事故を除いて廃車が発生しないまま運用が続いていました。しかし2004年12月に伊勢崎線太田〜伊勢崎間と小泉線・佐野線・桐生線の各線で普通列車のワンマン運転化を進めるに辺り、対応する3両編成の800・850系へ東上線所属の8両編成を種車とし改造するため余剰になった付随車が廃車とされ、41年目にして事故以外で初の事例となりました。編成単位での廃車は2007年8月からで、伊勢崎線系統では50050系増備、入れ替わりで東上線には30000系を転用する形で廃車が進められ2011年6月30日には車内修繕は受ける一方、先頭車の前頭部は登場以来の形態を保っていた最後の編成である8111Fが定期運用を離脱します。離脱後は廃車になるかと思われた同編成は正面未修繕であることが幸いし、休車扱いを経て動態保存車に選ばれ2012年3月24日で東武鉄道から東武博物館所有になり南栗橋車両管区に移り塗装も登場時に変更、各種イベント列車に用いられるようになりました。
各種ツアーやイベントで活躍した8111Fですが、2020年の新型コロナウイルス襲来により稼働する機会が激減し、2021年頃には休車扱いになっていました。しかし2023年、東武鉄道から野田線に転属の上で営業運転に充当する発表があり、同年10月28日にツアーを兼ねて七光台支所へ回送され、11月1日より一般列車へ復帰しています。1963年の製造より60年目の出来事で、一度は保存車両になった編成が一般営業に再び戻る極めて珍しい事例となりました。東武鉄道では復帰に関して、6両編成を有効活用できる路線を検討した結果野田線で使用することになったとしています。
8111Fが営業入りしたことにより、入れ替わりで運用離脱〜廃車になった編成は8150Fでしたが、こちらも54年を迎えており8000系同士で尚且つ、最古参の編成で置き換えが実施される珍事も発生しました。正式な発表ではないものの、8111Fの復帰はメモリアル的な意味合いと共に、80000系導入までに8150Fの検査入場を避ける目的もあったのだろうと思われます。
2017年度の東武ファンフェスタで臨時列車用に残存していた急行用電車1800系と並んだ場面。2012年の保存後は登場時塗装になりますが2016年8月から2023年までは1974年から1986年まで見られたセイジクリーム一色塗装になっており、復帰前の整備で再び登場時塗装に戻されています。ちなみに前頭部に復元された標識灯は営業運転でこそ不使用ですが本物で、2012年11月18日の東武東上線森林公園ファミリーフェスタにて実際に点灯させている姿が確認されています。
車内は化粧板が修繕され、座席も緑系に交換済みですがドア内側は登場時をイメージした濃い目のクリーム色で塗装されており、他に在籍している車体修繕車とは違う雰囲気を出しています。所有は野田線転属後も変わらず東武博物館のままとされ、広告類が一切掲示されていないのも特徴です。
来年度から運用を開始する80000系も落成し、一時は8000系だらけだった野田線からも遂に引退が近づいて来ましたが、ワンマン対応車は今しばらく活躍が続くとはいえ8111Fの今後の処遇もどうなるか気になりますね。