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http://mylibrary.maeda1.jp/0530OpecApr2021.pdf
*「OPEC及びNon OPECの協調減産量(2021年4月現在)」(表1-D-2-35)参照。
2.Required Production (所定生産量):720万B/D削減で始まった1-3月の協調減産
今年1月初めのOPECプラス閣僚会合では1月以降▲720万B/D減産、Required Production(以下Req. Prod.) 3,665.3万B/Dでスタートし以後毎月見直すこととなった。昨年4月の会合では7-12月の削減量は▲770万B/Dとし、今年1月以降は▲580万B/Dに緩和(すなわち770-580=190万B/D増産)することとされていた。しかし2021年以降の需要回復に慎重なサウジアラビアと減産緩和を主張するロシアの主張が対立し、結局今年1-3月は昨年7-12月に比べ50万B/D減産を緩和する(▲770万B/D→▲720万B/D) ことで両者は妥協したのであった。
両国のRef. Prod.は同じ1,100万B/Dとされ、減産量▲720万B/Dを各国に平等に割り当て、減産率は▲17%となった。但し協調減産に当初から頑強に抵抗していたメキシコは今回も減産率ゼロとされた。また減産緩和強硬派のロシア及びカザフスタンに対しては2,3月にかけて合計15万B/Dの減産緩和(すなわち増産)が認められた。
1月の会議直後、サウジアラビアは100万B/Dを自主的に追加減産すると発表して関係者を驚かせた。真意は不明であるが、直前に米エネルギー庁長官が来訪しており、バイデン新政権に押し切られたとの見方もある。OPECプラス会合とサウジの自主減産を合わせると、3月のRef. Prod. はOPECが2,111.9万B/D、Non OPECが1,468.4万B/D、合計3,580.3万B/Dとされた。主な国のReq. Prod.はサウジアラビアが811.9万B/D(自主減産100万B/Dを含む)、ロシアは924.9万B/D、イラク385.7万B/D、UAE262.6万B/D、メキシコ175.3万B/D(協調減産に加わらず当初Ref. Pro.のまま)などである。
3月4日の合同閣僚会合では3月のReq. Prod.を4月いっぱい継続することが決議された。
- 5-7月の協調減産
直近の4月1日の合同会合では5,6,7月の削減量が協議され、OPECプラス合計で5月▲655万B/D、6月▲620万B/D、7月▲575.9万B/D減産され、サウジアラビアの自主減産も5-7月の3か月間で解消されることとなった。この結果7月のOPECプラスのReq. Prod.は3,809.4万B/D(内訳:OPEC2,303.3万B/D、非OPEC1,506.1万B/D)となり、国別の減産率はほぼ一律に▲13.7%に統一されている。国別のReq. Prod.ではサウジアラビアとロシアが同じ949.5万B/Dである。その他主な国ではイラク401.6万B/D、UAE273.5万B/Dクウェイト242.5万B/D等である。
- むすび
先に触れた通り昨年4月の合同会合でha
今年1月以降、2022年4月までの減産幅を▲580万B/Dと決定していた。今回の会合で決定した7月の減産幅▲575.9万B/Dはほぼこの水準に戻ったことになる。
翻ってサウジアラビアとロシアについて今年1月以降の実生産量をOPEC月報あるいはロシア石油省統計で見ると、サウジアラビアの生産量は907.7万B/D(1月)、812.3万B/D(2月)、809万B/D(3月)であり、またロシアは1,017.0万B/D(1月)、976.4万B/D(2月)、1,024.9万B/D(3月)であった。一見するとサウジアラビアの2-3月は100万B/Dの自主減産分を含めてほぼ合意を順守している。一方のロシアはRef. Prod.にオーバーしているように見える。(但し同国石油省の統計にはコンデンセートを含むため原油の厳密な生産量は不明である。)
減産枠を遵守できるか否かの最大の要因は原油価格である。代表的な指標油種のBrent原油の値動きを見ると、1月は平均54.77ドル、2月62.26ドルであり、直近(4月15日)は66.34ドルと堅調である。
コロナ禍の石油需要は流動的であり、またOPECプラス各産油国の生産状況もイラン問題等をふくめ見通しが立ちにくい。毎月開催される合同会合で現在のReq. Prod.が維持されるか否かは予断を許さない。
以上
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荒葉一也