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http://mylibrary.maeda1.jp/0529WorldRank5.pdf
(世界ランクシリーズ その5 2021年版)
(突如急上昇したUAE!)
5.2016~2021年の総合ランクの推移
(図http://rank.maeda1.jp/5-G01.pdf 参照)
ここでは中東4カ国(UAE、エジプト、サウジアラビア及びイラン)に日本、中国を加えた6カ国の過去5回の世界ランクの推移を検証する。
この6カ国に共通してみられる傾向は、いずれも前回(2020年)まで長期に低落あるいは低迷してきたことである。特に中国及びイランは過去5回を通じて連続して世界ランクが落ちている。即ち中国の2016年から2020年までのランクは99位→100位→103位→106位であり、イランは139位→140位→142位→148位であった。日本及びサウジアラビアも同様に長期下落傾向にある。日本の場合は2016年に111位であり2017年に114位に下落した後、翌2018年には110位に戻ったが2020年には121位まで落ちている(注、2019年は格差報告がなかった)。サウジアラビアは2017年の世界138位をピークにその後4回連続で順位を下げており2020年の男女格差ランクは146位である。またエジプトも2016年の132位から2020年の135位まで年々低下した。
しかし前回から今回にかけて中国、イラン及びサウジアラビアがさらにランクを下げた一方、日本、エジプト及びUAE3か国はランクが上昇した。日本は121位→120位とわずかなアップにとどまったが、エジプトは135位から129位に上昇している。特に順位の上昇が際立つのはUAEである。同国は前回の120位から今回は一気に72位に急上昇している。同国の各分野ごとの変化を見ると、政治分野が昨年の74位から24位にアップしており、その他の経済、教育、医療分野では大きな変化は見られない。
追記:各分野のスコアとその配分に若干の問題?
WEFの男女格差指数では日本のランクが極めて低く、特に先進国の中で最低のランクとスコアであることはかなりショッキングな内容と言えよう。日本の政治分野の男女格差が諸外国に比べて際立って大きく、また経済分野でも格差の是正が遅れていることはWEFが指摘するまでもなく明らかであり、その点ではWEFの評価に異論を唱えるつもりはない。しかしながら4分野のスコアの配分あるいは各分野において一部開発途上の国々がかなり高いスコアを出していることには若干問題があるように見える。
まず各分野のスコアの偏差値がかなり片寄っていることが指摘できる。例えば政治分野は0.760(アイスランド)が最も高く、0.000(パプアニューギニア/バヌアツ)が最も低い。その格差は0.760である。経済分野も政治分野同様スコアの格差が大きい。これに対して健康分野では最高スコア0.980(ブラジル他29カ国)に対し最低スコアは0.935(中国)であり、格差は0.045に過ぎず、教育分野では格差指数最大の1.000が37カ国にのぼっている。総合順位は各項目を加重平均したものであるため偏差値の大きい政治及び経済分野が全体のスコアと順位に影響を及ぼしていると考えられる。
各分野の国別スコアも問題含みと言えそうである。例えば健康分野の最高スコア0.980を与えられた39カ国の中にはナミビア(因みに同国は総合世界6位)、ボツアナなどアフリカ大陸の国々、あるいはブラジル、ドミニカ、エルサルバドルなどの中米諸国が上がっている。また経済分野では北欧諸国とともにアフリカのブルンジ、ギニア、ザンビアなど多くの開発途上国がトップグループに入っており、これらの国の中には独裁政権も混じっている。
スコア算定のデータは国際機関が発表したものも少なくないが、原始データはいずれも各国政府が提供したものである。各国政府が意図的に脚色したデータを提出してもそれを検証することは困難であり、このような意図的改ざんは独裁政権では極めてありがちである点を指摘しておきたい。(以上はあくまでも筆者個人の私見であることをお断りしておく。)
以上
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