石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

原油価格暴落が直撃、売上、利益は前年同期比で大幅減:五大国際石油企業2015年7-9月期決算速報(2)

2015-11-05 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本速報は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0360OilMajor2015-3rdQtr.pdf

 

 

1. 五社の7-9月期業績比較(続き)
(2)利益

 (図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-26.pdf参照)
 ExxonMobilの期間利益は42億ドル、前年同期(81億ドル)から半減している。ExxonMobil以外の4社の利益はさらに悪くChevronは64%減の20億ドル、Totalも7割減の11億ドルにとどまっている。さらに悪いのがBPで、同社の利益額は4,600万ドル、前年同期の13億ドルの30分の1である。そして5社のうちShellは昨年同期の利益45億ドルから一転して今期は74億ドルと言う大幅な欠損を計上している。BGの買収が当面の財務状況を悪化させており、アラスカ、カナダオイルサンドなどの開発事業を中断し、従業員の7%をリストラするなど 経営の先行きに赤信号がともっている。またBPは2010年のメキシコ湾原油流出事故の賠償問題が現在も糸を引いており前期の欠損58億ドルに続き今期も水面すれすれの利益水準にとどまっている。

 国際石油企業の利益構造はこれまで利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという構図であったが、昨年後半以降の原油価格の大幅な下落により収益構造が様変わりしている。即ち上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化したのである。

 因みにChevronの場合、今期の上流部門の利益は6千万ドルに対し下流部門のそれは22億ドルと圧倒的に下流部門の利益が大きい。ExxonMobilも上流・下流部門の利益はそれぞれ14億ドル、33億ドルであり、BP、Totalも同様の傾向である。Shellの場合は上流部門は4億ドルの赤字で、下流部門は26億ドルの黒字である。

(3)売上高利益率

(図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-27.pdf参照)
 売上高利益率はExxonMobilが6.3%と最も高く、Chevronが5.9%で続いている。TotalはChevronの2分の1の2.7%にとどまり、BPの利益率は0.1%である。大幅な赤字決算となったShellの売上高利益率はマイナス11%である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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(復刻)ボルネオ便り(第4信)

2015-11-04 | その他

*本稿は筆者が1990年から1992年までマレーシアのボルネオ(サラワク州ミリ市)で石油開発のため駐在した時期に思いつくままをワープロで書き綴り日本の友人達に送ったエッセイです。四半世紀前のジャングルに囲まれた東南アジアの片田舎の様子とそこから見た当時の国際環境についてのレポートをここに復刻させていただきます。

第4信(1990年10月)
  現代は情報の時代と言われ、TVや新聞で世界中の出来事が時々刻々報道されています。最近はとりわけイラク問題が連日ニュースに取り上げられ、日本人を含む人質の安否が気遣われています。実は私の会社(アラビア石油)は30年以上も中東で石油の生産を続けており、クウェイトにも事務所を持っていたため、数人の社員が今なおイラクの人質となっています。石油生産現場はクウェイト国境から数十KM離れたサウジアラビア領内のカフジと言う街にあり、今も紛争勃発前と同じ規模の生産を続けていますが、一刻も早く事態が解決し、安心して操業できる日が来ることを願って止みません。

 ボルネオでTVの世界ニュースが見られるのか、等と言わないでください。ここではマレーシア2局と隣国ブルネイ1局のTVを見ることができます。7チャンネルで、しかもオールナイト局もある東京には比ぶべくもありませんが、人間の目は二つあっても、どうせ一度に1局しか見られないのですから、大した違いでは無いと勝手に納得しています。

 TVは全て国営放送ですが、自動車、家電、化粧品等のコマーシャルもあります。宣伝のほとんどは日本及び欧米からの輸入品、あるいはライセンス生産の商品ですから、CMはさながら日本対欧米の宣伝合戦の様相を呈しています。今、マレーシアは東南アジアの優等生として、かつての日本の高度成長期のような状況にあり、CMにもその影響が強く表れています。「明日という字は、明るい日と書くのネ」と言う歌詞そのままに、未来は限りなく明るく、豊かな消費生活への願望が溢れています。

 そのような典型的なCMの一つをご紹介しましょう。
 競走馬のラップタイムを測る青年実業家(もちろん凛々しい美男子です)。突然、調教師が携帯電話を持って走り寄ってきます。電話で何事かを話し込むと、彼はすぐにスポーツカーを運転し空港に駆けつけます。場面は替わって大都会の事務所での緊急会議。激論を経て、彼は自身に満ちたポーズで決断を下し、そして最後は、顧客と商談成立の握手を交わす場面で終わります。得意満面の青年実業家の側には美人の秘書が寄り添い、彼を頼もしげに見つめているのです。

 今の日本ではクサイ芝居だと笑いものでしょうが、CMはその時代の大衆の願望や心理を忠実に反映していますから、このCMは現在のマレーシアの一面を象徴していると思って間違いないでしょう。

 ところでこのCMのスポンサーは誰だと思われますか。実は英国の有名な喫煙具メーカーなのです。ここミリで働く英国人の話では、このメーカーは母国での嫌煙運動による業績不振を挽回するため、東南アジアに販売攻勢をかけているそうです。なお、CMに喫煙シーンはありませんでしたので念のため。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(11月4日)

2015-11-04 | 今日のニュース

・米シェブロン、設備投資を25%削減  *

・ノルウェーStatoil、リグ多数を解約、投資は今年11%、来年8%削減

 

*「五大国際石油企業、7-9月期決算速報」(本ブログ掲載中)

 

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原油価格暴落が直撃、売上、利益は前年同期比で大幅減:五大国際石油企業2015年7-9月期決算速報(1)

2015-11-03 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本速報は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0360OilMajor2015-3rdQtr.pdf

 

 スーパーメジャーと呼ばれる五大国際石油企業(ExxonMobil、Shell、BP、Total及びChevron)の7-9月期決算が相次いで発表された。ここでは売上高、利益、売上高利益率、石油・天然ガス合計生産量及び設備投資の五項目について各社の業績を横並びで比較するとともに各社の前年同期との増減を検証する。

 決算の詳細は以下の各社のホームページを参照されたい。
ExxonMobil:
http://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-earns-42-billion-third-quarter-2015 
Shell:
http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2015/third-quarter-2015-results-announcement.html 
BP:
http://www.bp.com/en/global/corporate/press/press-releases/third-quarter-2015-results.html
Total:
http://www.total.com/en/media/news/press-releases/third-quarter-and-first-nine-months-2015-results 
Chevron:
http://www.chevron.com/chevron/pressreleases/article/10302015_chevronreportsthirdquarternetincomeof20billion.news

 なお前期(4-7月期)及び2008年から2014年までの通年の業績比較は下記レポートを参照されたい。

前期:http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0351OilMajors2015-2ndQtr.pdf 
2008-14年通年:http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0337OilMajors2014.pdf  

1. 五社の7-9月期業績比較
(表:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-22.pdf 参照)
 五社を横並びで比較すると売上高ではShellがトップである。しかし利益、売上高利益率および生産量の3部門ではExxonMobilがトップであり、Shellは利益面でただ一社大幅な欠損を出している。設備投資ではChevronがExxonMobilを上回っている。

(売り上げは軒並み3~4割減!)
(1) 売上高

(図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-25.pdf参照)
 2015年7-9月の売上高は5社ともに前年同期に比べ30乃至40%の大幅な減少であった。これは言うまでもなく原油価格が暴落したためである。因みに北海Brent原油で見ると、昨年第3四半期はバレル当たり平均102ドルであったものが、今年は50ドル前後と半値以下になっている。原油価格の下落がそのまま各社の売上高減少に反映されたと言えよう。

 この結果、ExxonMobilの売上高は673億ドル(前期比-37%)、Shell692億ドル(同-37%)、BP 547億ドル(同-42%)、Total 406億ドル(同-33%)、Chevron 343億ドル(同-37%)であった。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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