石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(5)

2017-08-22 | 海外・国内石油企業の業績

2017.8.22

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

前田 高行

 

2.2016年第2四半期以降の四半期別業績の推移

 五社の売上高、利益(全体、上流部門および下流部門)、設備投資、原油・天然ガス生産量に関する2016年4-6月期以降今期までの四半期ごとの業績推移は以下の通りである。

 

(1) 売上高の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-61.pdf 参照)

 2016年第2四半期から2017年第2四半期に至る四半期ベースの売上高は昨年末までは原油価格の回復を受けて各社とも増収基調にあったが、Totalが昨年第4四半期以降は下落傾向に陥ると、ExxonMobil、Shell及びBPの3社も今年第Ⅰ四半期をピークに停滞または下降気味であり、Chevronは過去1年間増収が続いている。

 

 各社の推移はShellが584億ドル(’16 2nd Qtr)→619億ドル(3rd Qtr)→648億ドル(4th Qtr)→718億ドル(’17 1st Qtr)→721億ドル(2nd Qtr)と5期連続で売り上げトップを続けている。これに次ぐのがExxonMobilでありその売上高は577億ドル(’16 2nd Qtr)→587億ドル(3rd Qtr)→610億ドル(4th Qtr)→633億ドル(’17 1st Qtr) →629億ドル(2nd Qtr)である。ExxonMobilは2016年第二四半期にそれまでの売上トップの座をShellに譲ったが、それ以降両社の格差は広がる傾向にあり、前期、今期と続けて80億ドル強の差がついている。

 

 この間の四半期平均原油価格(1バレル当たり)の推移をShellの決算資料で見ると39.31ドル(’16 2nd Qtr)→40.43ドル(3rd Qtr)→44.54ドル(4th Qtr)→48.36ドル(’17 1st Qtr) →45.62ドル(2nd Qtr)であり、今年第Ⅰ四半期まで価格回復が続いたが、今期は前期に比べ6%ほど下落している。この価格の変動が各社の売上高の推移に反映していると言えよう。

 

(2)利益の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-62.pdf 参照)

 過去1年間の四半期ごとの利益水準は各社によって異なるものの、全体を通してみると四半期ごとに増益と減益を繰り返しており今期は5社ともに対前期比で減益となっている。なお昨年第2半期にBPとChevronが損失を計上した以外は今期まで各社はいずれも利益を計上している。

 

 5社の中で安定して高い利益を計上しているのはExxonMobilである。同社の利益の推移は17億ドル→27億ドル→17億ドル→40億ドル→34億ドルである。2016年第二四半期にTotalを下回った以外は5社のトップを維持している。ExxonMobilに続くのはShellであり、同社は2016年第2四半期の利益12億ドル以降14億ドル→15億ドル→35億ドルと推移し、今期は大きく落ち込んで15億ドルとTotalを下回る水準にとどまっている。

 

 BPとChevronは2016年第二四半期にほぼ同額の15億ドルの欠損を出した後、続く第3四半期には両社とも利益に転じている。しかし今年第1四半期にはChevronが大きく利益を伸ばしてTotalとほぼ同額になったが、BPは前年第3四半期の利益水準を下回る14億ドルであり、今期は5社の中では最低の1億ドルにとどまっている。売り上げ規模ではBPは5社中の3位であるが(上記(1)参照)、利益水準は低い。

 

(3)売上高利益率の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-63.pdf 参照)

 1年前の昨年第2四半期の五社の利益率は大きな格差があり、最も高いTotalは5.6%、これに次ぐのがExxonMobil2.9%、Shell2.0%であり、BP及びChevronは共にマイナスの利益率(BP:-3.1%、Chevron:-5.0%)であった。第3四半期には全社プラスに転じ、最高がTotalの5.2%、最も低いShellが2.2%と大きな差は見られない。続く第4四半期も各社利益率は団子状態であったが、今年第1四半期には各社の利益率に大きな格差が生まれ、最高はChevronの8.0%で、Total (6.9%)、ExxonMobil(6.3%)がこれに続きShellは4.9%であり、利益率が最も低かったのはBPの2.6%であった。5社の格差は今期も継続し、ExxonMobilとTotalが5%強、Chevron4.2%の利益率に対し、Shellは2%強、BPは0.3%にとどまっている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail;maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(4)

2017-08-21 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.21

前田 高行

 

1.五社の1-3月期業績比較 (続き)

(5)設備投資

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-54.pdf 参照)

  2017年4-6月期の各社の設備投資額はShellが57億ドルと最も多く、これに次ぐのがChevronの45億ドルである。その他の3社は、BP42億ドル、ExxonMobil39億ドル、Total38億ドルと40億ドル前後で並んでいる。Totalが1.5%の微増であるが、その他の4社はいずれも前年同期を下回っており、特にExxonMobilは前年同期の52億ドルから24%減少しており、Chevronも前年同期比18%減である。ShellとBPは2%減にとどめている。石油価格が上昇し資金に余裕が出ているが、石油の需要そのもののが伸びないため、各社とも設備投資に対する慎重な姿勢が続いているようである。

 

 

(6)原油・ガス生産量
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-22.pdf 参照)

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-55.pdf 参照)

 今年4-6月の原油生産量はExxonMobilが平均日産量227万バレル(以下B/D)で5社の中では最も多い。その他の4社はいずれも200万B/D以下であり、Shellが181万B/D、Chevron 175万B/D、BP は135万B/D、Total はExxonMobilの6割弱の130万B/Dで5社の中では最も少ない。ExxonMobilは世界各地で万遍なく原油生産をおこなっており他社を圧倒している。前年同期と比較するとBPは23%増と5社の中では飛び抜けて増加し、Shell、Total、Chevronはいずれも4%の増産となっている。ExxonMobilは2.6%減と5社の中で唯一生産量が落ちている。

 

 天然ガスの生産量はShellとExxonMobilがそれぞれ99億立方フィート(以下cfd)、97億cfdである。これに対して他の3社はTotal65億cfd、BP63億cfd、Chevron62億cfdと並んでおり、ShellあるいはExxonMobilの6割強にとどまっている。前年同期に比べるとChevronが23%、BPが9%増加しており、ExxonMobil及びTotalは横ばい、Shellは5%減少している。

 

 天然ガスを石油に換算した原油・天然ガスの合計生産量ではExxonMobilは392万B/Dでこれに次ぐのがShellの350万B/Dである。その他の3社はChevron278万B/D、Total250万B/D、BP243万B/DでありExxonMobilあるいはShellの7割前後である。石油と天然ガスの比率を見ると、5社はいずれも石油の比率が高いが、その中でもChevronは石油63%、天然ガス37%であり5社の中では石油の比率が最も高い。BP及びExxonMobilはそれぞれ石油56%:天然ガス44%、石油58%:天然ガス42%である。Totalは5社の中では石油と天然ガスの比率が最も拮抗しており、石油52%、天然ガス48%である。

 

 JXTGの決算資料では石油生産量4.5万B/D、天然ガスを加えた合計の生産量は10.7万B/Dである。同社の石油と天然ガスの比率は42%対58%であり、天然ガスの比率が石油のそれを上回っている。ただ国際石油企業と比較した場合、JXTGの生産量はExxonMobilの3%に過ぎず、規模の格差は歴然としている。

 

(続く)

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月21日)

2017-08-21 | 今日のニュース

・Shell、5年ぶりにリビヤ原油船積み

 

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今週の各社プレスリリースから(8/13-8/19)

2017-08-19 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/14 出光興産 平成30年3月期  第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) 

8/14 BP Two more BP projects begin production 

8/16 JXTGホールディングス 「第52回 JXTG児童文化賞」および「第47回 JXTG音楽賞」の受賞者決定について 

8/16 Shell Shell completes SADAF chemicals sale in Saudi Arabia to SABIC for $820mn  

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (12)

2017-08-18 | BP統計

 

2017.8.18

前田 高行

 

(5)主要6カ国の生産・消費ギャップおよび自給率

 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界7位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位である。中東の有力産油国であるUAEも天然ガスに関しては生産量世界15位、消費量は世界11位である。また近年天然ガス輸出国として頭角を現しているオーストラリアは生産量世界10位、消費量は世界31位である。

 ここではこれら6カ国について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)の推移を見ると共に、米国、中国、UAE、英国、インド及びクウェイトの6カ国について天然ガス自給率を検証してみる。

 

(過去10年間1,800億㎥前後の余裕を維持するロシア!)

(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G04.pdf 参照)

 6カ国のうちで2016年の生産量が消費量を上回っているのはロシア、カナダ、オーストラリアの3カ国であり、米国、中国及びUAEの3か国は消費量が生産量を上回っている。つまり前3カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。

 

 6カ国の過去11年間(2006~2016年)の需給ギャップを見ると、2006年のロシアは生産量5,952億㎥に対し消費量は4,150億㎥であり、差し引き1,801億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割ったが、その後は再び上昇して2013年の需給ギャップは過去10年で最大の1,913億㎥に達し、2016年は1,885億㎥となっている。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後の世界景気の回復と新たな国内ガス田の開発及び極東向けのLNG輸出開始により2013年には国内消費の伸びを上回る生産が行われたことを示している。

 

 カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に2006年以降は需給ギャップが縮小している。同国の2006年の生産量は1,717億㎥、消費量は969億㎥で差し引き747億㎥の余剰生産であったが、その後余剰生産量は減少し続け2013年には半分の375億㎥に縮小している。2013年の国内消費量は1,039億㎥であったからこの間の消費の増加は7%に過ぎない。2016年は生産量1,520億㎥に対し消費量は999億㎥であり余剰生産量は521億㎥まで回復している。

 

 2006年に米国は905億㎥の消費超過であった(生産5,240億㎥、消費6,144億㎥)。2010年まではほぼこのような状況が続いたが、同年以降はギャップが急速に小さくなり、2015年のギャップは70億㎥にまで下がった。このギャップは2016年には再び294億㎥に広がっているが、10年前に比べると大幅に縮小している。これは言うまでもなくシェールガスの開発によるものである。

 

 中国の場合、2006年は生産量606億㎥、消費量593億㎥で天然ガスの完全自給国であった。しかし2007年には消費量が生産量を上回るようになり、その後需給ギャップは年々大きくなっている。2016年は生産量1,384億㎥に対し消費量は2,103億㎥に達し、正味719億㎥が輸入されたことになる。この傾向は今後も続くことはほぼ間違いないであろう。

 

 オーストラリアは新規ガス田の開発により2016年の生産量は2006年の2.3倍に増加している。これに対して同じ期間の消費の伸びは1.6倍であり余剰生産量は141億㎥から500億㎥に拡大、LNGとして輸出に回されている。UAEにおける天然ガスの用途は発電及び海水淡水化用燃料であり、かつては油田の随伴ガスで賄っていたが、電力・水の需要が急増し2008年以降は国産のガスだけでは足らなくなり、隣国のカタールからパイプラインで輸入している状況である。2016年の輸入量は148億㎥に達している。

 

(続く)

 

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(付JXTGグループ業績) (3)

2017-08-17 | 中東諸国の動向

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.17

前田 高行

 

1.五社の1-3月期業績比較 (続き)

(3)売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)

 売上高利益率はExxonMobilが5.3%と最も高く、Total 5.1%、Chevron 4.2%、Shell2.1%と続いている。利益率が最も低いのはBPの0.3%である。前年同期はChevronがー5.0%と最も低く、BPの利益率もマイナス(-3.1%)で、もっとも高い利益率を誇ったTotalは5.6%であった。今期は全社が利益を計上したが、利益率はExxonMobil、Shellが5%台であったのに対しShell、BPは両社との格差が大きい。

 

 JXTGの売上高利益率は0.9%にとどまっており、BPよりは良いがExxonMobil、Total、Chevronなどに比べて大きく見劣りする。

 

(4)上流部門と下流部門の利益

(a)上流部門

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-56.pdf参照)

 利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)に分けて比較すると、まず上流部門では前年同期はTotalとExxonMobilの2社は利益を計上したが、その他の3社はマイナスであった。今期はShellが引き続き欠損であったが、他の4社は利益を計上している。この1年の間に原油価格が改善したこと、及び各社が上流部門の投資ポートフォリオを見直したことにより各社とも上流部門の損益が好転していると言えよう。

 

 5社の中で今期の上流部門の利益が最も多かったのはTotalの14億ドルでこれに次ぐのがExxonMobil 12億ドルであり、Chevron及びBPが8億ドル前後で並んでいる。Shellのみは今期も5億ドルの赤字を計上している。

 

 JXTGの上流部門の利益は31億円であり、ドルに換算すると29百万ドルとなる。これはTotalあるいはExxonMobilの2%程度であり、またBP、Chevronの4%どまりである。後述する生産量の比較で示すが、JXTGの石油・天然ガスの生産量は国際石油企業5社に比べ30分の1以下であり、これが利益面でも大きな格差となっている。

 

(b)下流部門

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-57.pdf参照)

 下流部門は今期も好調で全社利益を計上している。利益額が最も大きいのはShellの22億ドルであり、次いでBPが16億ドルの黒字を計上している。その他の3社の下流部門の利益は、ExonMobil 14億ドル、Chevron 12億ドル、Total 9億ドルである。前年同期比では各社で明暗が分かれた。ExxonMobilは70%の増益であり、またShell 及びBPも増益であるが、Chevron及びTotalの2社は前年同期より利益が減少している。下流部門は原油価格の上昇が原料のコストアップとなり上流部門とは正反対の効果をもたらすことになるが、製品価格への転嫁、製油所の効率化・集約化など企業努力の結果が各社の下流部門の業績に反映しているようである。

 

 JXTGの下流部門の利益は225億円(2億ドル)であり、五社の5分の1から10分の1程度とかなり低い水準である。日本の石油産業は構造的な過剰設備と過当競争のため製品末端価格の利幅が小さく利益の出にくい体質である。その対策として今回のJXTGの合併のように設備の集約化と薄利多売の改善を図り、あるいは一部の企業は東南アジアへの進出を進めている。日本のエネルギー産業のためには安定して収益を上げることができる強い体質を築き、世界の石油企業に伍していくことが望まれる。

 

 なお冒頭(1-(2))の総合損益は各社によって石油化学品部門あるいはその他の損益を含むため上・下流部門の利益の合計額とは一致しないケースがある。

 

(c)上流部門と下流部門の比較

 各社の上流部門と下流部門の損益を比較すると、ExxonMobil、Shell、BP及びChevronの4社は下流部門が上流部門を上回り、Totalのみは上流部門の利益が下流部門のそれを上回っている。かつて石油価格が高かった時代は国際石油企業は利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという収益構図であった。その後昨年前半までの約2年間は原油価格が大幅に下落したため収益構造が逆転、上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化した。しかし、昨年後半以降は原油・天然ガス価格が持ち直しており、各社とも上流部門と下流部門の収益が変動しつつあり、それが今期の決算に表れたと言えよう。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (11)

2017-08-16 | BP統計

 

2017.8.16

前田 高行

 

(2009年に日本を超えた中国、増加の伸びが止まった日本とインド!)

(4)日本、中国及びインドの消費量の推移(1990~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G03.pdf 参照)

 ここではアジアの三大国である日本、中国及びインドについて1990年から昨年までの消費量の推移を比較してみる。1990年の日本、中国及びインドの天然ガスの消費量はそれぞれ481億㎥、158億㎥、120億㎥であった。中国は日本の3分のⅠ、インドは4分の1に過ぎなかった。それでも同じ年の米国の消費量5,429億㎥と比べると日本ですら米国の10分の1以下だったのである。

 

 1990年から2000年までの10年間はインドの消費量が急増した結果、2000年における3カ国の消費量は、日本723億㎥、インド264億㎥、中国253億㎥となりインドが中国を追い抜き、日本と中印両国の差は3倍弱であった。

 

 2000年以降は中国の天然ガス消費量が急増、2005年には482億㎥と5年間でほぼ倍増した。2005年以降は増加のペースがさらに加速し2009年には日本を追い抜き、2016年の中国の消費量は2,103億㎥、日本の1.9倍となっている。日本の場合は2000年から2010年までの年間平均増加率は3%であったが、2011年には一挙に対前年比12%の大幅増となり、2012年も前年比11%と2年連続して高い増加率を示した。福島原発事故に伴う火力発電用LNG調達のためであるが、その後の2013年および2014年の対前年伸び率はそれぞれ0.0%および1.0%と増加の勢いは止まり、2015年、2016年は減少に転じそれぞれ前年比―3.9%及びー1.9%の減少となった。インドの消費量は2010年までは順調に伸び2012年には711億㎥に達したが、その後は減少に転じ、2016年の消費量は501億㎥である。これは日本の2分の1、中国の4分の1弱である。

 

 天然ガスは石油に比べてCO2や有害物質の排出量が少ない「環境に優しいエネルギー」として今後需要が拡大することは間違いない。世界的にも新しいパイプラインやLNGの液化・運搬・受入設備が増強されている。米国でシェールガスの開発生産が急増しており、また世界各地で新しいガス田が発見されるなど天然ガスの開発と生産拡大の余地は大きく、それに応じて今後も消費拡大のペースは続くものと思われる。中国は今後ますます需要が伸びるものと見られ、最近ロシアと大型天然ガス購入契約を締結し消費の増加に対処しようとしている。

 

(続く)

 

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(付JXTGグループ業績) (2)

2017-08-15 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.15

前田 高行

 

1. 五社の4-6月期業績比較

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-22.pdf 参照)

 五社を横並びで比較すると売上高、下流部門利益及び設備投資額ではShellがトップである。しかし総合利益、売上高利益率および原油と天然ガスを合計した生産量の各部門ではExxonMobilがトップである。また上流部門利益ではTotalが最も高く、この部門ではShellが5社の中で唯一欠損を出している。原油生産量ではExxonMobilがずば抜けて大きく、天然ガス生産量ではExxonMobilがShellをわずかに上回り、他の3社を大きく引き離している。

 

(1) 売上高(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)

 2017年4-6月の売上高は5社ともに前年同期より増加した。各社の売上高および対前年同期の増加幅は、ExxonMobilが629億ドル(9%増)、Shell721億ドル(24%増)、BP 565億ドル(22%増)、Total 399億ドル(7%増)、Chevron 345億ドル(18%増)であった。

 各社の増収率はいずれも原油・天然ガス生産量の増加率(別項参照)を上回っている。これは今期の原油ガス販売単価が昨年の同期よりも高くなったことによる。因みに販売単価をShellの決算資料で見ると、昨年第2四半期はバレル当たり平均39.31ドルであったものが、今期は45.62ドルと16%アップしている。2011年あるいは2012年のピーク時には年間平均価格が100ドルを超えたが、昨年第二四半期はその時の3分の1であり、今期は2分の1である。原油価格の上昇がそのまま各社の売上高の増加に反映されたと言えよう。

 

 JXTGの2017年4-6月期の売上高は2兆2,252億円(206億ドル)であった。これは国際石油企業5社で売り上げが最も大きいShell(721億ドル)の3割であり、また売り上げが最も少ないChevron (345億ドル)の6割である。

 

(2) 総合利益 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)

 前年同期はBPとChevronの2社は欠損であったが、今期は5社ともに利益を計上している。利益額が5社の中で最も大きいのはExxonMobilの34億ドルであり前年同期(17億ドル)の2倍である。ExxonMobilに次いで利益が多いのはTotalの20億ドルであるが、前年同期比では若干の減益である。ShellとChevronの利益は共に15億ドル前後であるが、前年同期に比較するとShellは32%の増益で、Chevronは前年同期の15億ドルの欠損から大幅に改善している。BPは前年同期はChevronとほぼ同じ14億ドルのマイナスであり、今期は1億ドルの利益に転じているが、他の4社に比べると利益水準は著しく低い。

 

 なおJXTGの四半期利益は200億円(1.9億ドル)であり利益面ではBPを上回っている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (10)

2017-08-14 | BP統計

  

2017.8.14

前田 高行

 

(アジア・大洋州の天然ガス消費量は1970年の49倍に激増!)

(3)地域別消費量の推移(1970-2015年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G02.pdf 参照)

 1970年に9,800億㎥であった天然ガスの消費量はその後1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。2016年の消費量は3.54兆㎥であり、1970年から2016年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年の1回のみで毎年増加し続けており、46年間の増加率は3.6倍に達している。

 

 石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGのいずれにしろ生産国と消費国がほぼ直結しており、また一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

 

 欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6つの地域の消費量の推移を見ると地域毎の消費量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス消費量の66%は北米、29%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の95%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。

 

 その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い越している。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を欧州・ユーラシアが占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2016年は1兆299億㎥と横ばい状態である。このため欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2016年には29%となっている。

 

 これに対してアジア・大洋州の場合、1970年の消費量は146億㎥であり中南米(181億㎥)より少なかったが、その後アジア・大洋州の消費量は急増し、1980年には732億㎥と中南米、中東両地域に2倍以上の差をつけている。この増加傾向はさらに加速し、2000年には2,947億㎥、全世界のシェアの12%を占めるに至った。そして2016年は7,225億㎥でシェアも20%に上昇している。2016年の消費量は1970年の49倍である。1970年と2016年の増加率では北米が1.5倍、欧州・ユーラシアが3.6倍であることと比較してアジア・大洋州の伸びが如何に大きいかがわかる。

 

 北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 

 (続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(付JXTGグループ業績)(1)

2017-08-13 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.13

前田 高行

 

 スーパーメジャーと呼ばれる五大国際石油企業(ExxonMobil、Shell、BP、Total及びChevron)の4-6月期決算が相次いで発表された。ここでは売上高、利益(総合及び上流部門、下流部門)、売上高利益率、設備投資および石油・天然ガス合計生産量について各社の業績を横並びで比較するとともに各社の四半期決算の推移を検証する。

 

 なお今年4月に正式に発足したJXTGホールディングスの最初の4-6月期決算が同時に発表されている。同社は旧日本石油と三菱石油の合併に始まり、その後共同石油・日本鉱業グループとの合併及び東燃グループとの合併を経て成立した日本最大の石油企業グループである。同社初の四半期決算の売上高は2.2兆円、年間ベースでは9兆円に達する製造業としては日本最大級の企業グループである。

 

 同社は石油・天然ガスの開発・生産(上流部門)から石油精製・販売(下流部門)を包含する総合エネルギー企業である。本稿で比較する数値が示すように、五大国際石油企業に比べるとその業績には大きな格差があるが、参考のため比較可能な項目について概要を示すこととする。(円とドルの換算レートは1ドル=110円とした)

 

 決算の詳細は以下の各社のホームページを参照されたい。

ExxonMobil:

http://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-earns-34-billion-second-quarter-2017

Shell:

http://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2017/second-quarter-2017-results-announcement.html

BP:

http://www.bp.com/en/global/corporate/media/press-releases/second-quarter-2017-results.html

Total:

http://www.total.com/en/media/news/press-releases/second-quarter-and-first-half-2017-results

Chevron:

https://www.chevron.com/stories/chevron-reports-second-quarter-net-income-of-1-5-billion

 

JXTGホールディングス:

http://www.hd.jxtg-group.co.jp/ir/library/statement/2017/pdf/jxtg_jp_ts_fy2017_1q.pdf

 

 

(注)五社の前期(2017年1-3月期)、2016年通期及び2009年から2016年までの通年の業績比較は下記レポートを参照されたい。

http://mylibrary.maeda1.jp/0410OilMajor2017-1stQtr.pdf

http://mylibrary.maeda1.jp/0401OilMajor2016.pdf 

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail;maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

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