ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

既に市場規模は12兆円?

2004年08月04日 | ITS
さて、つい最近(7月27日)に開催されたスマートウェイ推進会議で、ITS関連市場の規模は既に12兆円に達していると発表された。

現在12兆円なら、2010年の11兆円は楽勝じゃないか、と思われるかもしれない。
しかしこの発表も、よくよく見てみると怪しい。

12兆円のうち、ナビ、VICS、ETCの機器で6兆円といっているが、そもそもナビをITSに入れ込む事自体が疑問である。VICSは別として、ナビ自体はITS構想があろうが無かろうが成長をしてきた商品である。

まあ、それは置いておいても、6兆円という数字はどうやら今までの累計出荷金額の様だ。例えばナビは累計で1500万台出荷されている。事実、ナビが市場に現れてから既に10年以上経過している。平均小売価格を25万円として、合計で3兆7千5百万円となり、まあ6兆円という数字もあながちはずれてはいないだろう。

しかし、10年間以上の累計金額をもって市場規模と言っていいのだろうか?私自身、既にナビを1台車と共に廃棄している。

そこで、冷静に近い将来のナビゲーションの年間の市場規模を見てみると、おおむね以下のような物になるだろう。

年間車両販売 600万台
ナビ装着率  max 60%
ナビ出荷  年間需要360万台(参考:2003年度年間出荷300万台)
平均単価   25万円
年間市場規模(小売りベース) 9000億円

車両販売は軽や商用車も含んでいる。また、乗用車でも地方都市の通勤用車両や、買い物用のセカンドカーなど全くナビを必要としない車両がある。
装着率はマックスで60%というあたりがリーズナブルだと思う。
なお、装着率にはメーカーのライン装着も含まれる。

平均単価は今後漸減すると思われ、いずれにしても最大で年間1兆円規模の市場といえるだろう。

これから見ても、2010年の11兆円市場という数字が如何に莫大なものであるかが判ると思う。



ETC標準装備の可能性

2004年08月04日 | ITS
しかし、将来ETC標準装備化はあり得ない話ではないと思っている。

そもそもETCなどいらないという消費者は多いだろう。地方都市であまり高速は使わない、使ったとしても料金所渋滞は殆どないという状況で、ETCは必要であろうか?

そうしたネガティブな見方がある中で、現在の新車販売に対しての装着率は10%程度と思われる。
10%というと少ないように思えるが、自動車のアフターマーケットで装着する部品としては結構な数値である。
一般に、アフターでの装着率が30%を越えると標準装備が急に進むといわれている。
現在10%で、ある程度拡大中であることから、あと3年程度で一気に標準装備化が進むかもしれない。
現在、すでに高級車で標準装備が始まっている。

量が増えればコストが下がるということで更にドライブがかかるだろう。昔は最高級車にしか付いていなかったパワーウインドウが今やほぼ全車に装着されているのと同じようなことが起きる。

ただ、仮に標準装備されていても、使わないからということでセットアップしないユーザーも出てくるかもしれないが。

いずれにしても、私は高速道路でのETC機能自体は全く否定していない。渋滞緩和にも役立っているだろうし、ユーザーベネフィットも十分ある。ただ、それがその他の商取引決済へと拡大するだろうという甘い夢に大いに疑問をもっている。

ETCを全車標準装備にする?

2004年08月04日 | ITS
国交省はETCの全車標準装着をもくろんでいるようだ。
全車標準装着にこだわるのは訳がある。全車標準とならなければ、いつまでたってもインターチェンジの完全無人化は実現しない。また、DSRCによる安全情報提供も、車両装備によって差別をするわけには行かない。そしてETC全車標準装備こそが全ての車のネットワーク化のキーとなっている

全車標準装備を促進する為の施策も打ち出されている。例えば首都高速の従量料金制度やスマートインターチェンジと称する、サービスエリアに設置するETC専用の簡易インターチェンジなどである。
しかし、なぜスマートインターチェンジがETC専用でなくてはならないかが判らない。サービスエリアには沢山の人が働いている。なぜ料金収受所だけ、無人化しなければならないのか。そもそもスマートインターチェンジ自体はETCであろうが無かろうが作れる。良いことならすぐにでもやるべきなのではないのか?

ETCが付いていないと不便になるように仕向けていると思われても仕方ない。

ETCの活用その5

2004年08月04日 | ITS
商業利用とは別に、安全運転支援としてDSRCを活用するという計画もある。

もちろん、路肩に設置された機器からリアルタイムの渋滞や事故情報がとれるという運転支援機能は万人が望むものであろう。
だがそのための公共投資は莫大であり、かつ使用料を回収する手段がない。行政としては民間による商業利用によりドライブをかけていきたいという思いがあるのだろう。

一方で冷静に考えれば、事故・渋滞情報は本当に車載機器に表示する必要があるのであろうか。路肩のハイテクな発信器に替えて例えば信号機の様なものを1キロ毎に設置し、この先1キロ以内で事故発生なら赤信号を点滅させるなどの「いますぐにでも実現が可能な」技術で安く確実に情報伝達が可能なのではないのか。

それすら行っていないのに、DSRCがあるからと云って金のかかるハイテクな方法への投資があり得るのだろうか?

どうも行政と産業界が無理矢理ビジネスとして成立させようとしているかに思える。

ETCの活用その4

2004年08月04日 | ITS
DSRCの活用拡大に横たわる障害はそれだけではない。

いまETCは本格普及期にさしかかっている。車載機も1万円台となり、一般ユーザーが装着を検討する段階に入った。月に20万台のペースで増加している。

一方で今の車載機は高速道路のETC専用である。おそらくその他の電子決済をする為には、ハードウェアの変更が必要となる。

仮にETC以外の電子決済が可能となったとして、それ(例えばガソリンスタンドのキャッシュレス等)を利用するためにすでにETC専用機を持っているユーザーが車載機を買い換えるだろうか?
まずあり得ないとおもう。「クレジットカードを渡す手間」が省けるだけのことに投資する人はいないだろう。

一旦ETC車載機が装着されたら、車を買い換えるまでそのままであると見るべきである。つまり、約7年間、買い換えは起きない。その間にETC専用機はどんどん普及している。

つまりは、もし仮にETC以外での利用が可能になる車載機が登場したとしても、その普及には相当な時間がかかるということになる。

いずれにしても高速道路ETC以外にはユーザーニーズが存在するとはとても思えないDSRCに何故これほどまで楽観的な見方がされているのか、私は全く理解できない。