ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ITSのキラーコンテンツはなんなの?

2004年08月09日 | ITS
結局、何が車のキラーコンテンツになるのだろう。

携帯電話のキラーは、本来機能の通話を別にすればメールだった。その次が着メロダウンロードか。あるいは、カメラ機能と写メールだろう。

このキラーコンテンツを見る限り、どうも友人とのコミュニケーションツールであり、一般的な意味での情報ツールであることが重要なのではなさそうである。

友人とのコミュニケーションツールとして、車がネットに繋がることの意味はあまりなさそうである。個人の携帯電話で必要十分である。

エンタメ系コンテンツがキラーになるという人もいるが、携帯有料コンテンツでエンタメ系がうまくいっているという話はあまりない。

携帯ではゲームがコンテンツとしては有力となっているが、これは通勤や授業中の暇つぶしでしょう。基本的に車の中では運転業務があるので、ドライバーは暇をつぶす必要がない。

安全運転支援がキラーになるだろうという見方がある。
確かにこれは最も実際的な意見である。でも、何があるのか?車載レーダーによる追突防止とか、車線フォローによるふらつき防止などは基本的に車両の装備であり、ネットワークとは無縁のスタンドアロン機器である。

「この先危険」などという情報提供を車載機器に送るという構想もあるだろう。大変結構な話である。でも、今でもローテクで出来る事がされていないんじゃないか?

ついおとといの5人亡くなった山陽道のトンネル事故であるが、パンクをして走行車線に止まっていた車にトラックが突っ込んだ。追突は全てした方の責任だが、トンネル内で車が立ち往生しているということを予測するのは極めて難しく、とても事故が発生しやすい状況だと言えよう。

このケースなど、例えばトンネル内で立ち往生している車を察知して、トンネル入り口に進入禁止の非常警報サインを出すなんてことは、今ある技術で今すぐできる事なのではないのか?ハイテクのITSなんかより、それが先なのではないか?

プローブカーって何?

2004年08月09日 | ITS
「目指す社会」のなかに、「プローブから天候、渋滞など」という項目がある。これは個々の車を「移動するセンサー」として位置づけ、さまざまな情報を移動体通信を使ってサーバーに発信し、その情報を蓄積、加工することで活用するという考え方である。

渋滞情報はリアルタイム且つ正確な情報が入手出来る。現在のVICSよりも精度が上がることは間違いない。また、VICSセンサーが無い場所でも情報がとれる。ホンダのインターナビのアプローチである。
これは、現状のVICSがこの先どうなるのか、また消費者ニーズとしてさらなる精度が要求されているのかがポイントになろう。

ネットワークに繋がった車両の情報を集めるとこのほかにも色々なことが出来るという。例えばワイパーの稼働状況からどこでどの程度雨が降っているか、きわめて局地的な情報を集めることが出来る。

実はこれはこの話になると必ず出てくる有名な例である。逆にいえば、これしかないのである。で、この情報(局地的な降雨状況)はいったい誰にとってどれほどの価値があるのか、教えてもらいたい。

私はプローブカーは結局渋滞情報でしかないと思う。


インターネットITS協議会

2004年08月09日 | ITS
インターネットITS協議会という団体がある。名古屋万博を間近に控えたトヨタが中心となり、慶応大学など産学協働で進められているもので、サイトを見てもらえばわかるとおり通信キャリア、カーメーカー、損保、ソフトウェアなどそうそうたるメンバーが参加している。

目指す社会はIPv6をベースに全ての車がインターネットに接続されるということで、そのための実証実験、市場性の検証、技術の標準化、新ビジネスのインキュベーションを行うことを目的としている。

さて、その「目指す社会」を見て欲しい。

計画されているサービスは、広告の発信、故障情報、予約など、殆どがコマーシャルオリエンテッドであり、消費者オリエンテッドとは思えない。というか、これらのコンテンツのために車載機器を買って、月々の通信料、接続料を払うかといわれても大いに疑問である。

要は、キラーコンテンツがないんだよな。

楽観的シナリオ

2004年08月09日 | ITS
さて、ここまで車がネットに繋がるという未来について否定的なことばかり書いてきたが、この辺で楽観的なシナリオについても検討する必要があるだろう。

まず、通信料の低下でモバイル常時接続の負担が小さくなるということが考えられる。これを根拠に楽観的な見方をしている人も多い。
問題はいつ頃までにどのくらい安くなるのか、という事だと思うが、これとてユーザーサイドでは依然として携帯電話やモバイルPCとの競合がある。つまり、モバイル常時接続がリーズナブルな料金となった場合にまず何をするかということで、常識的には運転中しか使えない車載端末よりも通常のモバイル機器での契約が先になるだろう。

さらに廉価化し、個人で複数回線を持つ時代になれば、車もネットに繋がってくるかもしれない。IPv6がこの話にどのように関連するか、浅学で判らないが、いずれにしてもこれは単純な価格と効用の経済方程式である。

次に、車載機器の標準装備化による加速の可能性がある。
カーメーカーは商品の差別化のために、実際の需要はそこそこでも話題性がありニュースバリューのあるコンポを装備することがある。

これが成功すると、他のメーカーもマネをし、結果的に普及がアッという間に拡大する。

ETCは今後このシナリオで行くと思う。
ネット接続はG-Book,カーウイングスなど色々試行されているが、まだ離陸には至っていない。

車をネットに繋ぐ プライバシーの問題

2004年08月09日 | ITS
今までの所を少し整理してみる。

まず、ITS構想の根幹には、全ての車がネットワークに繋がるという事があるようだ。その通信方法の主流となるのは、3GなのかDSRCなのかまだ流動的ということだろう。

繋ぎたいのは誰なのか?
一つは国である。これによって高レベルの交通制御が可能になる。渋滞解消にも多少は寄与するであろう。
(ただ、本当に渋滞解消に寄与するのはもっとベーシックかつローテクな交通インフラの整備だ。)

次にカーメーカーである。顧客の使用情報を手許に置くことで囲い込みが出来る。

そして、通信キャリアである。当然ビジネスチャンスである。

さて、ここで一般消費者としてはどうなのかを一度冷静に考えてみよう。まず、個人情報を含む車両情報を、あなたは国のサーバーもしくは自動車会社のサーバーに無防備に発信しますか?

位置情報、移動情報、走行情報、故障情報などで、その中にはかなりプライバシーに関わる情報もある。
これは結構デリケートな問題の筈だと思う。

そして、高度な交通制御をすることと、個人情報を集めることに何か関係があるのだろうか?「交通量をベースにした信号制御による渋滞緩和」なんてことは、勝手に車両の台数をカウントすればいいだけの話だと思う。

そして前にも書いたが、道路情報などの提供は路側の表示板で行えばいい。何故わざわざ費用と手間をかけて車内のディスプレーに表示する必要があるのか?

また、故障診断にしても、別にその内容をカーメーカーに発信してもらわなくても、ドライバーが判るように計器板に表示されれば良いだけの話だと思う。修理にどこへ持ち込むかは消費者の自由であり、これまた独占禁止法に抵触しかねないデリケートな問題をはらんでいる。