ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

コストモデルならあり得る

2004年08月11日 | ITS

実は車をネットワークに繋ぎたがっているのはカーメーカーだ。
車の状態を手許で管理することで、顧客を囲い込める。
故障診断システムと連携し、修理、メンテナンスが必要になったら、積極的にサービス勧誘をすることで、アフターセールス利益を確保すると共に、囲い込みによる次期車買い換えを狙える。

消費者にとってこのサービスはどう評価されるのであろうか?
車の整備はディーラーにお任せ、という人(おおむね50%程度だろう)には、便利な仕組みではある。しかし、このサービスはあくまで「有料サービスのご案内」であり、消費者が利用料を払うという性格のものではない。
もともとディーラーのサービスを利用しない人たちにとってはなおさらであろう。

そこで、カーメーカー側は様々なサービスを付加して、何とか利益の出る有料サービスにしようとしている訳だが、肝心のキラーコンテンツが見つからない、というのが現状だろう。

ビジネスモデルとして残された道は、車載機器と通信費をカーメーカーの囲い込み促進費として計上する「コストモデル」化である。
囲い込みによる収益アップがコストを上回れば、ビジネスモデルとして成立する。

ありがちなパターン

2004年08月11日 | ITS
ここまでの所を一度まとめてみよう。

国交省及び関連産業団体などが主張する「2010年にはITS関連マーケットが11兆円規模になる」という予測は全く心許ないものである。

特にETC技術(DSRC)の他商業決済への利用はほとんど現実性がない

車をネットワークに繋ぐという発想も、キラーコンテンツが見あたらず、盗難防止などの特定利用は散発的に広まるかもしれないが、爆発的に普及するとはとても考えられない。

そもそも、

・ユビキタスになりたいのは消費者であり、車ではない。
・車は移動のための道具であり、その中で生活している訳ではない。
・携帯電話という情報端末は既に普及している
・車両情報機器としてのナビゲーションも、スタンドアロン型が既に普及・確立している

以上の条件を冷静に受け止めれば、楽観的にはなれないことぐらい誰にでもわかる筈だと思うのだが。

何故こんな事になってしまっているのだろうか?
おそらくは、ITという巨大マーケットと車という巨大マーケットがお互いに相手に対して過大な期待を抱きながら、「何とかなる」と思っているのだろう。船頭が二人いることによる、ありがちな失敗のパターンである。

自動車の専門家はこう考えているのだろう
「車がネットに接続されたら、今まで考えも付かなかったようなビジネスチャンスが生まれるはずだ。インターネットしかり、携帯電話しかり。そうした新しいビジネスチャンスのアイデアは車屋には思いつかない。ITの専門家やベンチャービジネスにまかせろ。」
一方ITの専門家はこう思っているのではないか。
「自動車のマーケットは巨大だ。車がネットに接続されれば本当のユビキタス社会が実現し、そこには大きなビジネスチャンスがある。自動車産業は莫大なマーケットを用意してくれるだろう」

お互いが何とかしてくれると思いながら、もはや大風呂敷は後戻りできない所まできている。