ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

結局、カーメーカーの思惑だ

2004年08月08日 | ITS
さて、結局、車をネットに繋ぐという一般的な消費者ニーズなんてそんなにないということになった。

では、誰が繋ぎたがっているのだろう?

・故障診断システムと連動したサービス

車には自己故障診断システムが組み込まれている。通常はディーラーの整備工場で専門の端末に接続して使う。
この故障情報を、車の通信機能を使ってメーカー(ディーラー)に送信し、それに応じたサービスをカーメーカー(ディーラー)が行うというサービスである。

これはカーメーカー側からすれば非常に魅力的である。顧客をいつも手の内に囲い込んでアフターセールス収益を確保でき、かつ次の新車買い換えまできっちりとフォローアップが可能となる。

一方で消費者にとっては堅苦しいサービスとなってしまうだろう。例えばオイル交換の時期に近づくとディーラーからメールや電話で勧誘がなされることになる。
それを親切なサービスと受け取る消費者もいるだろうが、一方ではうるさいと思う消費者もいるだろう。なぜなら一般にメーカーサイドは収益を考えた安全サイドにたったサービスを推奨し、それはたいていの場合、カーショップなどよりも割高である。

いずれにしてもこのサービスで本当に恩恵を受けるのはカーメーカー/ディーラーであり、消費者ではない。
ここに、本当の狙いがあるのだ。

車をネットに繋ぐということ 続き 盗難対策

2004年08月08日 | ITS
その他の可能性として以下の様な物がある。

・リアルタイムのトラフィックインフォメーション

ネットワークに接続されている車両データーから、リアルタイムで渋滞をはじめとするトラフィックインフォメーションを受け取ることが出来る。
これはホンダのインターナビで実現しつつある。しかし、VICSと比べて遙かに優れているのかどうかは疑問。たしかにVICSのタイムラグや精度には不満があると思うが、その解決のためにネット常時接続というほどのものなのか。

・盗難車追跡

これは真に有益なサービスだといえよう。車両が駐車時もネットに繋がっていれば、盗難された後追跡が可能になる。
車自身に携帯端末が埋め込まれていなければならない。そして、このサービスはセコムなどで既に始まっている。

しかし、当然のこととして大衆車には無縁のサービスであり、車をネットに繋ぐためのキラーコンテンツとは成り得ない。
また、ベンツ、セルシオやランクル等の盗難高リスク車には必要なサービスであるが、業界の思惑とは異なり、専業者による単品サービスとして発展してしまう可能性も高い。

車をネットに繋ぐということ 続き 地図の更新等

2004年08月08日 | ITS
次に必ずいわれるメリットは、ナビゲーションの地図のリアルアップデートである。

確かに、ナビゲーションに記憶媒体が装備され始めており、地図差分データーのアップデートがリアルタイムに出来るならとても便利なことである。

しかし、地図アップデートって本当にそれほど頻繁にする必要があるのか?ナビがなかった時代には皆ドライブ地図を車に積んでいたものだが、毎年買い換えたりしたか?
現実的には、もし必要ならば3年一度ぐらいDVDを買い換える、という程度のニーズだろう。

もう一つ、「地図データをサーバーにおいて、車載機には現在地周辺情報だけを持たせることで、車載機に大容量記憶装置や光学ドライブを持たなくてすむため、コストダウンが可能である」という議論もあるが、残念、光学ドライブは十分安くなってきてしまった。

次によく言われることは「最新の目的地情報入手」である。
感覚的にはよくわかる。しかし現実はというと、

・計画的にドライブにいく場合は、事前に調べているだろう。
・携帯でも、同様のコンテンツはあるが、あまり活性化していない。
 特に有料コンテンツは不振
・無料コンテンツは基本的に宣伝なのでだれもありがたがらない

結局これは優れた無料の口コミ系コンテンツが出てくるのを期待するしかない。

車をネットに繋ぐということ 続き メールについて

2004年08月08日 | ITS
「車をネットに繋ぐ」ことにはさしたる消費者ニーズがない、ということを検証してみよう。

誰も想像できないサービスは私にも想像できないので、今あるサービスの将来性について検討してみたい。

1.Eメール
車の中でもEメールを使いたいというのは極めて自然な考え方だと思う。これをキラーコンテンツという人も多い。
しかしすでに既にほぼ100%の人が携帯メールを受信できるはずだ。
そこで、運転中に見るのは危険なので車のディスプレイに大きく表示したり、音声読み上げをするというのが、自動車専用アプリケーションになる。

しかし、Eメールというのは仕事以外は極めてプライベートな物である。同乗者がいるときに受信メールが車のディスプレイに表示されたり、読み上げられる事は容認できるか?

仮に「俺は人間関係に全くやましいところがない」という場合でも、家族でドライブ中に「寂しい人妻の云々」というような迷惑メールを読み上げられては困るだろう。

結局は信号停車中に携帯メールをチェックするだけで十分なのである。

車をネットに繋ぐということ

2004年08月08日 | ITS
通信型ナビゲーションに限らず、車が何らかのネットのに接続されるという事については既定路線のような考え方が官民に蔓延しているようだ。
「2010年には全ての車がネットに繋がる」という話を良く聞く。国交省だけでなく、民間のコンサルタント会社や調査会社もそのような分析をしている。
そして、それはテレマティクスという新しい自動車関連市場への期待でもある。

自宅もオフィスも、そして携帯電話もネットワークに繋がっている。次は車が繋がるのは自然の成り行きだ、といわれると、そうかなとも思ってしまう。

しかし、何のために繋がなくてはいけないか、繋ぐことの消費者のベネフィットは何かという事になるととたんに怪しくなってくる。

調査会社の報告書を見ても、これを明確に指摘しているケースはない。
「全ての車がネットに繋がれば、いままで誰も想像しなかったような新たなビジネスチャンスが生まれるだろう。携帯電話が出現したときに、メールやI-modeを誰が想像出来たであろうか?」
こうした楽観論が横行している。

ローランドベルガーによる日経メカニカル2003年7月号への寄稿のなかでも、テレマティクスは未だにカーメーカーとしてのビジネスモデルとしては確立しておらず、消費者向けサービスもなかなか活性化しない事を認めた上で、その将来は「様々なサービスの中から真のキラーコンテンツを見つけだし、提供することが重要である。」と述べるにとどまり、具体的なサービスを提示出来ずにいる。
私には蜃気楼を追いかけているようにしか思えない。

というか、実は(消費者以外の)誰かが、車をネットに繋ぎたがっているのである。
消費者から見ればユビキタスにネットに繋がりたいのは自分自身であり、車ではない。
車それ自身をネットに繋ぎたがっているのは誰か。それはいうまでもなく、カーメーカーや通信キャリアである。