ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

欧州のカーナビ事情 なかなか普及しない訳

2006年03月06日 | ITS
時差ボケで目がさめてしまった。
アジアと違いホテルの部屋から簡単にネット接続できるので、時間つぶしにはたすかる。

欧州でも、カーナビに対する注目は最近極めて高くなってきているが、日本のような普及には至っていない。

そもそも、欧州は世界でもっともカーナビが必要な地域だ。
多言語が混在し、かつ陸続きの欧州大陸では数百キロ走れば言葉が通じなくなる。
文化保存のため都市計画が出来ない旧市街の道は複雑に入り組んでいる。
さらに、森林地帯の中に点在していた町や村を繋ぐことから始まった道は、三角形の網目のくもの巣のようになり、それがそのまま地方道となっている。

勿論、自動車の普及、道路交通網の発達という下地も十分だ。
本当ならナビが普及しない訳がないのだ。

普及が進まない理由は主に3つある。

第一に、カーナビはまだ高い。高い理由は市販のカーナビが量産による価格ダウンを招くほど売れていないからだ。

ではなぜ、市販のカーナビが売れないのか。
欧州では会社員が管理職クラスになると、会社から通勤用の車を支給される。いわゆるフリンジベネフィットというものだ。
この支給される車は週末プライベートに使うことが許されており、多くの人はこの車に中型セダンやミニバンを選び、自腹で買う奥さん用をセカンドカーとする。

メインの車は平日は決まった通勤の往復で、ナビはいらない。むしろセカンドカーで使いたい。
しかし週末にはその車出かけるのでナビが欲しい。ということで、取り外せるポータブルの方が使い勝手がいいのだ。

そして、盗難の問題だ。
市販ナビはモニターを後付けする。もし欧州で日本によくあるようなダッシュボート据え置き型のモニターをつけたら、一週間も持たないだろう。
従って、どうやっても外せそうもない、または外しても再販できそうもない組み込み型のナビしか、車両には装着されない。ということは、メーカーライン装着しか成立しないのだ。
結果、市販ナビ市場が存在せず、市場が活性化しない。

こういった500ユーロ程度の小さな画面のポータブルナビが結構売れている、というのが現状だ。

要約P-DRGSにまつわる話 要約

2006年03月06日 | ITS
欧州に来ている。ホテルは無線LANが24時間15ユーロという、まあまあリーズナブルな環境。タイと違いブロードバンドなのがありがたい。

さて、いままでP-DRGSにまつわる話を書いてきた。一旦要約しておこう。

鳴り物入りで始まったITSであるが、一向に盛り上がらない。

その中で、紆余曲折はあったがETCが普及にむけて加速をはじめた。

近い将来過半数の車がETC用にDSRC通信機を装備することは確実である。

従って、国交省はETCに高速道路料金収受以外DSRCの機能をもたせ、DSRCを応用した各種サービスを展開することでITSを活性化する、という方向を模索している。

しかし、駐車場や給油所の決済といった民間サービスや車に対する情報提供などといった商業サービスは事業者・利用者双方に思ったほどの魅力がなく、ドライブがかからない。

結果、残された可能性としてカーブ先の渋滞状況などの安全情報通報とITS車載器搭載車を「プローブ」として活用する渋滞予測に期待がかかっている。

しかし、それを本格的にやろうとすると二つのハードルがある。ひとつは、路側機の設置に巨額のインフラ投資を必要なこと。
もうひとつは、ITS車載器と呼ばれるETC(高速道路料金収受)以外の機能をもった車載器の普及に目処が立たないこと。

そもそも、これらの費用がかかる部分を民活、つまりは駐車場や給油所での商業利用などでドライブをかけよう、という計画であったため、要するに「袋小路」に入ってしまっている。

残念ながら、いま私にも明確な解決策はない。
唯一いえることは、「車が通信機能を持ったらすごいことができるぞ」というシーズ発想を、きっちりと生活者感覚で検証することなく、「誰かがブレイクスルーをしてくれるだろう」という甘い期待のまま皆が走りつづけてしまったことにある。

実はすでに1999年頃から、こうした懸念はITS関連有識者の間ではされていたのだ。
マネジメントによる意思決定の仕組みが明確でない官民共同プロジェクトおいては、往々にしてこうした事が起きる。結果、被害をこうむるのは納税者なのだ。