ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

既存ETCの民間利用 その可能性

2006年03月18日 | ITS
さて、DSRC、特に今回国交省から発表があった既存ETCの民間サービス利用は今後どういった発展を見せるのだろうか?

給油所利用はありえない、と書いてきたが、ちょっと見方が変わった。
消費者にとってたいした利便でない、という見方に変わりはないが、元売の出方次第では普及のシナリオがあるのだ。

私は現在エクソンモービルの「スピードパス」を使っている。小さなピンのようなものにクレジットカード情報と紐ついたICが埋め込まれていて、セルフ給油機にかざせばキャッシュで給油が出来る。

サイフからクレジットカードを出して読み込むのと、手間の上では大して差はないが、クレジットカードよりも安いのだ。
そして、その割引はエッソ、モービル、ゼネラルのセルフならどこでも適用になるのだ。

つまり、スピードパスは石油元売にとっての顧客囲い込みになっている。
一方、他のエクソンモバイルでも使えるということは、給油所にとってのメリットは小さい。少なくとも割引をするメリットはない。この施策はあくまで元売のための施策なのだ。

元売各社にとって、ETC決済はこの囲い込みに極めて有効な施策となる可能性を秘めている。ある系列でのみ使えるようにすれば、顧客は移動先でもその系列を使うようになる。
どこかの元売がはじめれば、他も追従しなければ負けてしまうということで業界全体に広がる可能性がある。

一方、ETC読み取り対応の給油機は高額となり、個人経営の給油所が自発的に導入するとは考えにくい。元売からの相当の支援がなければ、設備投資は進まないだろう。結局は元売がこれに投資するか否かにかかっている。

ひとたび元売が力を入れれば、普及はさほど困難ではないと思う。
利用者にたいした利便はないといっても、少なくとも不便になる訳ではない。
仮に簡単な手続きで全国で割引になるとしたら誰でも申し込むだろう。
私が「スピードパス」を申し込んだのと同じ事だ。

この展開は注目する必要がある。

国交省から既存ETC機器の民間利用について発表

2006年03月18日 | ITS
17日に国交省(道路局)から既存ETCの民間利用開放について発表があった。

このブログでは、駐車場や給油所での決済というベネフィットでは消費者は高額な機器を購入したり、買い換えたりしないだろうと指摘してきた。今回の発表は、既存ETCで利用できるような仕組みを決め、開放する、というものだ。

そもそも技術的にはいわゆるIDアプリケーション、つまり「ゲート管理」「料金決済」などに限れば、既存ETC機器をその他の用途に活用することは可能だ。IBAはまさにそれである。
既存ETCでは何ができて、何が出来ないかはこのPDFファイル(国交省)の5ページに詳しい。

技術的には可能だったことが今まで行われていなかった理由はセキュリティである。ETC側は、ETCのセキュリティを確保するために「相乗り」的利用は絶対に認めない。
ハイカ偽造で散々苦労をしてきただけに、一点の隙も与えたくないのだろう。
(しかし、その根本的な原因は世界一高い高速料金にある。その市場規模が裏社会をも動かしてしまうのだ)

今回の発表を見ると、セキュリティ確保は「利用車番号」という仕組みにある。
ETC決済に使われている、ETC「機器番号」は民間に開放せず、事業者ごとにそれに対応する「利用車番号」を発行する。
事業者はその「利用車番号」に決済に必要な個人情報(カード番号等)を紐付けてDB管理し、利用者(車)に請求する。

どうやってETC車載器から「利用車番号」を割り出すのか?
簡単にいえば、事業者の路側器はETC車載器から非公開の「機器番号」を受け取り、路側器内に設置されたブラックボックスで「利用車番号」に変換する。
そのブラックボックスはETC側で管理するのだろう。

要するに、ETC決済のキーとなる「機器番号」にはがっちり防波堤を立てる、ということである。

既存のETCで駐車場も通れると聞けば、すでにクレジット会社に申請して作成したETCカードでそのままどこでも使えると思うのが普通の消費者の感覚だ。
しかし、この仕組みでは新たな契約をしなければならない。しかも「事業者ごと」だ。

これはどうなのだろう。

月極駐車場で毎日利用するなどのケースを除いては、わざわざ新たに申し込みをしてまで使うほどの物ではないような気がするが。