「共謀罪」法案リストに 通常国会で提出検討
【東京新聞】2017年1月5日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017010502000126.html
犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、
政府が、20日召集予定の通常国会に、提出を検討している法案のリストに盛り込まれることが4日、分かった。
政府高官や与党幹部が明らかにした。
「共謀罪」創設の同法改正案は、小泉政権時に三度提出されたが、いずれも廃案になった。
第二次安倍政権発足後も、提出は検討されてきたが、初めてのリスト掲載で、提出の可能性がより高まった。
政府は、リストを、5日に国会に示す。
「共謀罪」は、国民の思想や内心の自由を侵す、との批判が強いが、
政府は、国連が2000年に採択した、国連国際組織犯罪防止条約を批准するために、国内法整備が必要としている。
昨年9月召集の臨時国会への提出も検討したが、公明党が慎重だったほか、環太平洋連携協定(TPP)と関連法の審議を優先させるために見送った。
今回は、20年の東京五輪・パラリンピックを前に、テロ犯罪抑止に不可欠だとして、世論の理解を得たい考え。
政府高官は4日、「そろそろ法案を提出しないといけない」と語った。
提出を検討している法案は、これまでの内容を一部修正し、対象集団を、「団体」から「組織的犯罪集団」に変更。
処罰要件にも、犯罪の実行を集団で話し合うだけでなく、資金の確保といった犯罪の準備行為を加える。
罪名も、「共謀」を使わず、「テロ等組織犯罪準備罪」としている。
ただ、適用される罪は、これまでと変わらず、「法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪」で、600以上が処罰対象となる見込み。
犯罪の準備をしていると認定されれば処罰され、権力側による恣意(しい)的な適用を招く恐れがある。
今夏は、東京都議選が行われるため、都議選を重視する公明党が、再び提出に慎重姿勢を示す可能性はある。
「話し合いは罪」変わらず
政府が、通常国会に提出する方針を固めた『共謀罪』創設法案。
政府関係者への取材で判明した内容などをもとに、その是非を検証する。
新共謀罪を考える
Q&A
Q:共謀罪って何?
A :具体的な犯罪を行おうと、二人以上で「合意」した段階で処罰できる犯罪です。
つまり、「話し合うことが罪」となります。
政府は、「組織的犯罪集団が関与する重大犯罪から、国民をより良く守ることができる」とし、
2003年と2004年、2005年の計3度、共謀罪を創設する法案を、国会に提出しましたが、
日弁連や市民団体などの反対を受け、いずれも廃案となりました。
Q:なぜ反対なの?
A:日本の刑法では、実際に犯罪が行われ、具体的な被害や危険が生じなければ、罪に問わないのが原則ですが、
共謀罪は、犯罪に合意しただけで罪となります。
合意は、会話やメールなどでコミュニケーションを取ることで成立するため、
思想や内心、つまり心の中で考えていることが、罰せられるおそれがあります。
憲法で保障された「思想信条の自由」が侵され、市民生活への悪影響が予想されます。
Q:「目くばせ」でも合意が成立するの?
A:政府は、共謀罪の成立には、「具体的・現実的な合意」が必要だとしていますが、
国会答弁で、
「十分に意思疎通できる仲間同士で、目くばせでも意思を伝えられれば、成立する場合がある」と説明しています。
Q:政府は、「共謀」という言葉を、「計画」に変えるよう検討しているらしい。
A:「共謀」でも「計画」でも、二人以上が犯罪に合意することを意味することに変わりありません。
政府が、共謀罪創設の理由にしている、国連条約の締結に必要なのは、犯罪の合意を処罰できる法律なので、
政府が作りたいのも、合意を処罰する法律なのです。
Q:政府は、犯罪に合意しただけでなく、何らかの「準備行為」がなければ処罰されない、という案を検討しているようだね。
A:準備行為とは、犯行に必要な資金や物品を確保する行為などで、ATMでお金を下ろしたり、現場の下見や地図を買ったりする行為が考えられます。
合意だけに比べ、処罰する条件が限定された印象を受けますが、
実は、犯罪として処罰されるのは、準備行為ではなく、犯罪に合意したことそのものなのです。
Q:準備行為がなくても、逮捕されるの?
A:その可能性はあります。
犯罪の合意が行われた疑いがあれば、準備行為があるかどうかにかかわらず、逮捕などの強制捜査ができます。
政府も、そう国会で答弁しています。
準備行為がなければ起訴はできませんが、まず逮捕などの強制捜査をしておいて、その後の捜査で、準備行為があったかどうかを調べることが可能になります。
(山田祐一郎)
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安倍政権 「共謀罪」大義に東京五輪を“政治利用”の姑息
【日刊ゲンダイ】2017年1月6日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/197066/1
何でもかんでも「五輪成功のため」、は通らない。
安倍政権は、今月20日召集の通常国会で、「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を、提出する方針だ。
3年後の東京五輪開催に合わせ、「テロ対策」の性格を前面に打ち出そうと必死で、
悪名高い名称を、「テロ等準備罪」に変えたが、しょせんは姑息な手段だ。
悪評ふんぷんの共謀罪の成立にまで、五輪の政治利用は絶対に許されない。
共謀罪は、実際に犯罪を犯していなくても、相談しただけで罰せられてしまう。
極論すれば、サラリーマンが、居酒屋談議で、「うるさい上司を殺してやろう」と話しただけで、しょっぴかれる可能性がある。
権力側が、市民の監視や思想の取り締まりに、都合よく運用する恐れもあり、
03、04、05年に、関連法案が国会に提出されたものの、3度とも廃案に追い込まれた。
五輪の成功を名目に、こんなウルトラ危険な法案を、懲りずに通そうというのだから、安倍政権はイカれている。
「東京五輪は確かに重要なイベントです。
とはいえ、開催期間は1カ月にも満たない。
その短期間のテロ対策という理由だけで、法案を成立させては、将来に大きな禍根を残すことになるでしょう。
権力による過度な監視が許されれば、プライバシー権や表現の自由、報道の自由を、不当に侵害することになる。
安倍政権は、『五輪成功のため』という理由をつけて、国民が反対しづらい空気をつくっているようにも見える。
結果、メディアの感覚までも鈍ってしまっています」(聖学院大の石川裕一郎教授=憲法・フランス法)
「五輪成功」にかこつけて、希代の悪法成立を許してしまうのか。
メディアの真価が今こそ問われている。
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「共謀罪」法案 危うさは変わっていない
【信毎web】2017年1月7日
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170107/KT170106ETI090012000.php
うわべを取りつくろっても、危うい本質は変わっていない。
「共謀罪」を新設する、組織犯罪処罰法改正案である。
政府が、20日召集の通常国会に、提出する方針を固めた。
犯罪を実行しなくても、話し合い(謀議)をしただけで、処罰の対象にする。
それが共謀罪だ。
捜査に不可欠な、盗聴や監視によって、プライバシーや内心の自由が侵され、市民運動の抑圧につながる危険性をはらんでいる。
法案は、2000年代に3度、国会に提出され、いずれも廃案になっている。
20年の東京五輪が近づき、テロ対策を前面に出して、再び立法化の動きが強まった。
今回の改正案は、罪名を、共謀罪ではなく「テロ等組織犯罪準備罪」に変え、適用対象を、「組織的犯罪集団」に絞った。
謀議だけでなく、一定の「準備行為」があることも、構成要件に加える。
とはいえ、共謀を処罰することに変わりはない。
法務省は、適用対象は極めて限定される、と説明するが、組織的犯罪集団かどうかの認定は、捜査機関に委ねられる。
何が準備行為にあたるかも明確でない。
改正案は、資金や物品の取得を挙げた。
拡大解釈、恣意的な判断の余地は、依然大きい。
米軍基地や、原発に反対する運動をはじめ、政府の方針に異を唱える市民の活動が、標的にされないか。
乱用の懸念は消えない。
国連は2000年、「国際組織犯罪防止条約」を採択した。
政府は、この条約を締結するには、共謀罪の新設が不可欠としてきた。
日弁連は、共謀罪に反対する意見書を出している。
条約の締結に、新たな立法の必要はない、と指摘。
現行法でも、重大犯罪には、予備罪や準備罪が定められ、組織犯罪を未然に防ぐ措置がとられていることを理由に挙げた。
条約は本来、マフィアや暴力団による、経済犯罪への対処を目的にしたものだ。
テロ対策は、後付けで持ち出されたにすぎない。
日本は、テロ防止に関わる国連の条約を、すべて締結している。
国際的な要請として、さらに共謀罪を導入しなければならない理由は、見いだしにくい。
共謀罪の対象になる犯罪は、600を超す。
実行行為を罰する刑事法の、基本原則が崩れ、プライバシーや、内心の自由を守る盾としての役割が、損なわれかねない。
五輪やテロ対策という大義名分に、共謀罪の危うさが覆い隠され、市民への監視強化が進められようとしていないか。
裏側にあるものを、見据える必要がある。
【東京新聞】2017年1月5日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017010502000126.html
犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、
政府が、20日召集予定の通常国会に、提出を検討している法案のリストに盛り込まれることが4日、分かった。
政府高官や与党幹部が明らかにした。
「共謀罪」創設の同法改正案は、小泉政権時に三度提出されたが、いずれも廃案になった。
第二次安倍政権発足後も、提出は検討されてきたが、初めてのリスト掲載で、提出の可能性がより高まった。
政府は、リストを、5日に国会に示す。
「共謀罪」は、国民の思想や内心の自由を侵す、との批判が強いが、
政府は、国連が2000年に採択した、国連国際組織犯罪防止条約を批准するために、国内法整備が必要としている。
昨年9月召集の臨時国会への提出も検討したが、公明党が慎重だったほか、環太平洋連携協定(TPP)と関連法の審議を優先させるために見送った。
今回は、20年の東京五輪・パラリンピックを前に、テロ犯罪抑止に不可欠だとして、世論の理解を得たい考え。
政府高官は4日、「そろそろ法案を提出しないといけない」と語った。
提出を検討している法案は、これまでの内容を一部修正し、対象集団を、「団体」から「組織的犯罪集団」に変更。
処罰要件にも、犯罪の実行を集団で話し合うだけでなく、資金の確保といった犯罪の準備行為を加える。
罪名も、「共謀」を使わず、「テロ等組織犯罪準備罪」としている。
ただ、適用される罪は、これまでと変わらず、「法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪」で、600以上が処罰対象となる見込み。
犯罪の準備をしていると認定されれば処罰され、権力側による恣意(しい)的な適用を招く恐れがある。
今夏は、東京都議選が行われるため、都議選を重視する公明党が、再び提出に慎重姿勢を示す可能性はある。
「話し合いは罪」変わらず
政府が、通常国会に提出する方針を固めた『共謀罪』創設法案。
政府関係者への取材で判明した内容などをもとに、その是非を検証する。
新共謀罪を考える
Q&A
Q:共謀罪って何?
A :具体的な犯罪を行おうと、二人以上で「合意」した段階で処罰できる犯罪です。
つまり、「話し合うことが罪」となります。
政府は、「組織的犯罪集団が関与する重大犯罪から、国民をより良く守ることができる」とし、
2003年と2004年、2005年の計3度、共謀罪を創設する法案を、国会に提出しましたが、
日弁連や市民団体などの反対を受け、いずれも廃案となりました。
Q:なぜ反対なの?
A:日本の刑法では、実際に犯罪が行われ、具体的な被害や危険が生じなければ、罪に問わないのが原則ですが、
共謀罪は、犯罪に合意しただけで罪となります。
合意は、会話やメールなどでコミュニケーションを取ることで成立するため、
思想や内心、つまり心の中で考えていることが、罰せられるおそれがあります。
憲法で保障された「思想信条の自由」が侵され、市民生活への悪影響が予想されます。
Q:「目くばせ」でも合意が成立するの?
A:政府は、共謀罪の成立には、「具体的・現実的な合意」が必要だとしていますが、
国会答弁で、
「十分に意思疎通できる仲間同士で、目くばせでも意思を伝えられれば、成立する場合がある」と説明しています。
Q:政府は、「共謀」という言葉を、「計画」に変えるよう検討しているらしい。
A:「共謀」でも「計画」でも、二人以上が犯罪に合意することを意味することに変わりありません。
政府が、共謀罪創設の理由にしている、国連条約の締結に必要なのは、犯罪の合意を処罰できる法律なので、
政府が作りたいのも、合意を処罰する法律なのです。
Q:政府は、犯罪に合意しただけでなく、何らかの「準備行為」がなければ処罰されない、という案を検討しているようだね。
A:準備行為とは、犯行に必要な資金や物品を確保する行為などで、ATMでお金を下ろしたり、現場の下見や地図を買ったりする行為が考えられます。
合意だけに比べ、処罰する条件が限定された印象を受けますが、
実は、犯罪として処罰されるのは、準備行為ではなく、犯罪に合意したことそのものなのです。
Q:準備行為がなくても、逮捕されるの?
A:その可能性はあります。
犯罪の合意が行われた疑いがあれば、準備行為があるかどうかにかかわらず、逮捕などの強制捜査ができます。
政府も、そう国会で答弁しています。
準備行為がなければ起訴はできませんが、まず逮捕などの強制捜査をしておいて、その後の捜査で、準備行為があったかどうかを調べることが可能になります。
(山田祐一郎)
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安倍政権 「共謀罪」大義に東京五輪を“政治利用”の姑息
【日刊ゲンダイ】2017年1月6日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/197066/1
何でもかんでも「五輪成功のため」、は通らない。
安倍政権は、今月20日召集の通常国会で、「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を、提出する方針だ。
3年後の東京五輪開催に合わせ、「テロ対策」の性格を前面に打ち出そうと必死で、
悪名高い名称を、「テロ等準備罪」に変えたが、しょせんは姑息な手段だ。
悪評ふんぷんの共謀罪の成立にまで、五輪の政治利用は絶対に許されない。
共謀罪は、実際に犯罪を犯していなくても、相談しただけで罰せられてしまう。
極論すれば、サラリーマンが、居酒屋談議で、「うるさい上司を殺してやろう」と話しただけで、しょっぴかれる可能性がある。
権力側が、市民の監視や思想の取り締まりに、都合よく運用する恐れもあり、
03、04、05年に、関連法案が国会に提出されたものの、3度とも廃案に追い込まれた。
五輪の成功を名目に、こんなウルトラ危険な法案を、懲りずに通そうというのだから、安倍政権はイカれている。
「東京五輪は確かに重要なイベントです。
とはいえ、開催期間は1カ月にも満たない。
その短期間のテロ対策という理由だけで、法案を成立させては、将来に大きな禍根を残すことになるでしょう。
権力による過度な監視が許されれば、プライバシー権や表現の自由、報道の自由を、不当に侵害することになる。
安倍政権は、『五輪成功のため』という理由をつけて、国民が反対しづらい空気をつくっているようにも見える。
結果、メディアの感覚までも鈍ってしまっています」(聖学院大の石川裕一郎教授=憲法・フランス法)
「五輪成功」にかこつけて、希代の悪法成立を許してしまうのか。
メディアの真価が今こそ問われている。
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「共謀罪」法案 危うさは変わっていない
【信毎web】2017年1月7日
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170107/KT170106ETI090012000.php
うわべを取りつくろっても、危うい本質は変わっていない。
「共謀罪」を新設する、組織犯罪処罰法改正案である。
政府が、20日召集の通常国会に、提出する方針を固めた。
犯罪を実行しなくても、話し合い(謀議)をしただけで、処罰の対象にする。
それが共謀罪だ。
捜査に不可欠な、盗聴や監視によって、プライバシーや内心の自由が侵され、市民運動の抑圧につながる危険性をはらんでいる。
法案は、2000年代に3度、国会に提出され、いずれも廃案になっている。
20年の東京五輪が近づき、テロ対策を前面に出して、再び立法化の動きが強まった。
今回の改正案は、罪名を、共謀罪ではなく「テロ等組織犯罪準備罪」に変え、適用対象を、「組織的犯罪集団」に絞った。
謀議だけでなく、一定の「準備行為」があることも、構成要件に加える。
とはいえ、共謀を処罰することに変わりはない。
法務省は、適用対象は極めて限定される、と説明するが、組織的犯罪集団かどうかの認定は、捜査機関に委ねられる。
何が準備行為にあたるかも明確でない。
改正案は、資金や物品の取得を挙げた。
拡大解釈、恣意的な判断の余地は、依然大きい。
米軍基地や、原発に反対する運動をはじめ、政府の方針に異を唱える市民の活動が、標的にされないか。
乱用の懸念は消えない。
国連は2000年、「国際組織犯罪防止条約」を採択した。
政府は、この条約を締結するには、共謀罪の新設が不可欠としてきた。
日弁連は、共謀罪に反対する意見書を出している。
条約の締結に、新たな立法の必要はない、と指摘。
現行法でも、重大犯罪には、予備罪や準備罪が定められ、組織犯罪を未然に防ぐ措置がとられていることを理由に挙げた。
条約は本来、マフィアや暴力団による、経済犯罪への対処を目的にしたものだ。
テロ対策は、後付けで持ち出されたにすぎない。
日本は、テロ防止に関わる国連の条約を、すべて締結している。
国際的な要請として、さらに共謀罪を導入しなければならない理由は、見いだしにくい。
共謀罪の対象になる犯罪は、600を超す。
実行行為を罰する刑事法の、基本原則が崩れ、プライバシーや、内心の自由を守る盾としての役割が、損なわれかねない。
五輪やテロ対策という大義名分に、共謀罪の危うさが覆い隠され、市民への監視強化が進められようとしていないか。
裏側にあるものを、見据える必要がある。