アメリカの新型ウイルス対策の、特に初動の段階での遅れについて、よくまとめられていると思います。
BBCニュース - アメリカが失った6週間 新型ウイルス対策はなぜ遅れたhttps://t.co/JrbkNVrCwy pic.twitter.com/BXVeeMXDFZ
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) May 14, 2020
以下書き起こし:
ロックダウンの終わらせ方を世界が模索している今、そもそもに立ち返るのが大事です。
トランプ米大統領は確かに、ウイルスを水際で食い止めようとしました。
トランプ大統領:
いかに深刻な事態か知ったのは、中国からの入国を禁止する直前だった。
けれども、その入国禁止措置には穴がいくつかあり、もうひとつのホットスポット、欧州からの入国を禁止するまでに6週間かかりました。
トランプ大統領:
ある日いきなり消えるよ。奇跡のように消えて無くなる。
この間、ウイルスがほぼ気づかれずに、米国内で拡散していました。
なぜ拡散阻止にもっと力を入れなかったのか。
まずは情勢を大局から眺めてみましょう。
感染拡大の抑制には、何よりロックダウンが手段として選ばれました。
中国は武漢を、そして湖北省全域を封鎖しました。
続いてイタリアが、北部を皮切りにやがて全国を封鎖しました。
各国の対応を比較する際、最初の感染者や最初の死者の確認を起点にする方法もあります。
ただし、各国の人口の規模を考慮するためには、その国の人口100万人あたり1人が、COVID-19で死亡した日付が大事です。
「100万人中1人死亡」が起きた時点は、国によって異なります。
その日を起点とすることで、各国の対応の速度を比較できます。
イタリアの経験を教訓に、ドイツ、フランス、イギリスは、数日中にロックダウンしました。
イタリアは、「100万人中1人死亡」から全国封鎖まで、6日かかりました。
けれども米国はまだ、全国封鎖を宣言していません。
「100万人中1人死亡」から45日以上経った時点でも。
ドクター・ファウチ:
この国で何が起きているかを見れば、なぜそうしないのか理解できないし、(ロックダウン)すべきです。
アメリカの対応はなぜ遅れたのか?
結局はほとんどの州が自宅待機命令を出しました。
米国の総人口(2019年時点で3億2820人)の92%が対象になりました。
けれどもこの表が示すように、反応の速さは州によって大きく異なりました。
それはこのあと詳しくみますが、対応が州ごとによって異なるのは、各地の事情に沿った理由があります。
米国は大きい国で、ウイルスの打撃は州によってかなり違いました。
加えて米国は、権限が諸外国ほど中央政府に集中していません。
なので、全国一斉ロックダウンの実施は、容易いことではありません。
けれども、米国がウイルス対策で先手を打つ機会をなぜ失ったのか。
その主な理由は、感染拡大の実態がいかにひどいか、情報が不足していたからです。
さて、どれほど不足していたのでしょうか。
1月20日に韓国が、21日に米国が、それぞれ第一番目の感染者を確認しました。
トランプ大統領:
完全に制御できている。中国から来たたった1人だ。
コントロールできている。まったく…大丈夫だ。
🇺🇸疾病対策センター(CDC)は4日後に検査キットを開発し、食品医薬品局(FDA)の承認を申請していました。
🇰🇷すでに、簡易検査キットを各地の検査機関に送っていました。
🇺🇸その12日後に、CDCはついに検査を各地に送付。
🇰🇷すでに結果がすぐに出る検査を実用化していました。
トランプ大統領:
理論上では、どうやら4月になって暖かくなれば、奇跡のように消えるらしい。
本当だといいな。
🇺🇸2日後に、CDCは、自分たちの検査に欠陥があると認めました。
各地の検査機関は、結果をCDC本部に戻すことになりました。
トランプ大統領:
感染者が15人で、それが数日でゼロに近くなるなら、なかなかの成果だと思うよ。
🇺🇸2月末の時点で、全国の100位上の公立検査期間の内、CDC検査を使えていたのは、わずか3カ所でした。
トランプ大統領:
もう検査は届いている。検査は美しい。
必要な人は誰でも検査が受けられる。
🇺🇸3月初め、最初の感染確認から6週間後、米国で検査を受けた人数は3000人でした。
住民10万人中1人です。
🇰🇷これに対して韓国では、10万人中342人です。
トランプ大統領:
「見えない敵」と呼んでいる。
呼び方は色々だが、いずれにしろ気づかないうちに忍び寄ってきたんだ。
🇺🇸3月半ばには検査を受けた住民は10万人中31人に。
🇰🇷同じ時期、検査を受けた住民は10万人中558人に。
米国は4月15日に、検査実施率で韓国を追い抜きましたが、こうした初期の検査の遅れと大統領のメッセージが合わさり、米国の対応に深刻な影響を与えました。
検査による良質なデータが無いまま(2月1日の米人口の検査率 0.000000%、3月1日米人口の検査率 0.0000121%)、各州は実質、実態が分からないまま、2月初めから3月初めまでは手探りを続けていました。
アメリカ市民(3月19日):
自分がコロナにかかるんならそれはそれで、だからって楽しむのをやめませんから。
日々の暮らしがほとんど変わらず続くのをよそに、ウイルスは米国内に広まりました。
トランプ大統領(2月10日):
状態はいい。
4月には消えて無くなると言われている。
(2月25日)
大勢が回復している。
(2月26日)
増えていない、減っている。
インフル注射みたいなものがそこそこすぐにできる。
(2月27日)
インフルになれば回復するわけだ。
(2月28日)
毎年平均3万5000人がインフルで死ぬ。
(3月2日)
それだけ人が死ぬんだから、インフル対策を強化すべきかな。
新型ウイルスの脅威はさほど深刻では無いと、しきりに繰り返したトランプ大統領は、3月13日に国家非常事態を宣言しました。
トランプ大統領:
全州には直ちに緊急対応センターの立ち上げを呼びかけます。
ホワイトハウスはその3日後(3月16日)、社会的距離ガイドラインを発表。
3月22日には、ニューヨーク州が、COVID-19で100人が死亡した、と発表しました。
状況悪化に各州はどう対応したのか?
「100万人中1人死亡」という基準をまた起点にして、人口が異なる各州を比べてみます。
感染の震央になったニューヨークは、4日後(3月20日)にロックダウンしました。
隣の州の状況を見たニュージャージーは、2日後(3月18日)にロックダウンしました。
マルディグラのお祭りでホットスポットになったルイジアナは、6日後(3月22日)にロックダウンしました。
一方で、こちらの各州(カリフォルニアとイリノイとオハイオ)は素早く対応し、100万人中1人死亡という厳しい一線を超える前に、制限を開始しました。
トランプ大統領(3月24日):
影響がまったく無い、あるいはほとんど無い地域もあるのに、どうして国の100%を閉じたりするんだ?
けれども、南部各州もCOVID-19で死者は出ていました。
それでも週全体に行動制限を命令するまで、かなり時間がかかりました。
ジョージアとサウスカロライナでは、住民に自宅待機を命じるまでに、丸2週間もかかりました。
知事が民主党の州では、100万人中1人の死者が出ると、2.5日以内にロックダウンを命じましたが、
共和党所属の知事たちの判断は、1週間以上後になりました。
このパンデミックに完璧な対応ができた国はありません。
ただし、死者数を低く抑えることに成功した国もあります。
対照的にアメリカでは、5月11日の死者の総数は7万5000人。
これはヴェトナム、イラク、アフガニスタンの戦争で戦死したアメリカ人の総計(6万5096人)より多い人が、COVID-19で死亡しています。(5月11日現在)
パンデミック初期の当時、アメリカは感染拡大を抑え込み、もっと多くの命を救うためのいくつもの機会を逃しました。