焼き物で使う色は、1000℃以上の高温で焼成している為、紫外線や酸やアルカリで消失する物では
有りません。色の大本は各種の酸化金属です。金属の種類によって発色が異なります。
更に、酸化や還元焼成の違いや、焼成温度、冷却スピードなどによっても変化します。
1) 色釉の原料となる金属には以下の様な物があります。
コバルト(紺、藍)、クロム(緑、茶色、赤)、マンガン(無色、褐色、暗黄、紫)、ニッケ(黄、緑、
茶色、灰色、赤紫)、チタン(黄、橙黄)、アンチモン(白、黄、橙黄)、バナジュウム等があり、
やや有害な物質として、ウラン、カドミウム(淡緑)、セレン等があります。
基礎釉に、色の金属以外にどの様な物質が入っているかによって、又、色の金属がどの様な
状態で有るかによっても、発する色も変わります。
2) 個々の金属に付いて。
① コバルト: 天然の酸化コバルトは中国などで、極く少量算出しますが、現代では、一般に
人工的な酸化コバルトが使われています。天然のコバルトには不純物が含まれ、深みのある
渋い藍色を呈しますが、化学的に作られた純粋の酸化コバルトは、非常に鮮明な藍色になり
ます。
酸化コバルトは還元焼成で、紫掛かった藍色に、酸化焼成で濃い藍紫色に成ります。
) 酸化コバルトは自己主張の強い顔料で、1%程添加するだけで、十分に濃く発色します。
5%添加すると、酸化、還元の別なく、美しい瑠璃(るり)釉になります。
) 呉須(合成呉須)は、酸化コバルト以外に、ニッケル、銅、鉄、マンガン等多くの不純物を
含み、その調合の仕方の違いで、多くの種類の呉須が市販されています。(天然に近い呉須は
旧ゴス、古代ゴスなどと呼ばれています。)
・ 酸化鉄を添加すると、還元で淡い青色に、酸化で黄、又は褐色になり、鉄分が多くなると
暗い黒になります。
・ 酸化マンガンを添加すると、還元で灰紫に、酸化で灰褐色に、焼成温度が低い場合には、
強い紫色になります。逆に高温では、紫色が弱くなります。
) 呉須は染付け用の下絵具として利用されます。1250℃以上で安定的に発色するのは、
酸化コバルトを含む呉須のみです。
3) 瑠璃釉と呉須釉。
① 酸化コバルトを用いた釉に、瑠璃釉と瑠璃海鼠(なまこ)釉があります。
) 瑠璃釉薬は、基礎釉(石灰三号など)に1%程度の酸化コバルトを添加して作ります。
(重量比、外割り)。 但し、基礎釉を選ぶ事により、その色合いも変化します。
・ BaO釉では、やや明るい瑠璃色になります。
・ CaO釉は、やや暗くなります。 即ち、明るさの順序は以下の様になります。
明、 BaO釉 > CaO釉 > ZnO釉 > MgO釉、 暗
) 酸化コバルトを15%添加し、還元焼成すると、瑠璃色にピンクやオレンジ色の結晶が
析出し、瑠璃釉とは、趣が大きく異なります。
② 瑠璃海鼠(なまこ)釉。
) 乳濁釉を基礎釉として、酸化コバルトを1%添加すると、白く濁った紺色の海鼠釉になり
ます。
) 石灰三号100に合成藁(わら)灰100、松灰40、酸化コバルト1を添加すると、柔らかい
色彩の海鼠釉となります。
③ 呉須釉: 酸化コバルトの代わりに、呉須を用いた釉です。
市販されている呉須は、粉末の物とチューブ入りの物があります。後者は主に絵付け用の
絵の具として使います。釉に添加するには、前者(粉)の物を使います。
・ 呉須には、古代呉須、墨呉須、焼貫呉須、青呉須、紫呉須、黒茶呉須など、酸化コバルトに
他の成分を添加し、色違いの呉須にし種類も多いです。
・ 呉須を添加する事で、酸化コバルトとは異なる多種類の青(紺)色を作り出す事が出来ます。
次回クロム釉に続きます。
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