わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック4 古色付け 3 

2014-06-20 21:39:53 | 騙しのテクニック
3) 伝世品の経年変化

 ① 発掘品と伝世品では、経年変化に差があります。

  発掘品の多くは、窯場近くのゴミ捨て場の物原や、住居跡、墳墓から出土した物が多いです。

  又、沈没船からの海上り品なども、長い間人の目に触れずに存在していました。一方伝世品は、

  代々人が管理し、大切に保管されていますが、多くの場合、実際に使用していたと思われます。

  それ故、発掘品とは異なる伝世品特有の経年変化が有ります。

 ② 伝世品の経年変化の特徴。

  ) 擦れ(スレ)と擦傷(すりきず): 伝世品には使用痕である「擦れや擦傷」が、大なり

    小なり有るのが普通です。陶器は磁器に比べ弱い為「擦れや擦傷」は多くなります。

   a) スレとは物と物が当たり擦れて、その痕跡が残る事です。当然擦れる回数が多い程、

    痕(あと)は多く顕著になります。日常使用する食器類や厨房用具など、手に持って移動

    する作品に多く見られ、持ち運びが少ない香炉や花瓶、置物(飾り物)などには少ないです

    スレの起き易い場所は、作品に応じて違いがあります。一般に口縁部、高台周辺、突出した

    胴部に多く見られます。抹茶々碗を例に取れば、茶筅あ8ちゃせん)が当たる「茶筅擦り」

    部、口縁部を茶巾(ちゃきん)で拭く「茶巾擦り」、高台の「畳付き」部などに多くみられ

    ます。

    ・ 国宝の耀変天目の見込み部の拡大写真を見ると、茶筅の痕がハッキリ見て取れますので、

      実際に使われた事が判ります。

   b) 口縁部などの角にスレが発生すると、釉が摩滅し素地(胎土)が露出する場合があります

     釉面が擦れる事により、やや白濁し艶が無くなる事があります。この場合染付けなどの

     下絵付けがされた作品では、絵付の色が薄くなった様に見えます。

     又、上絵付された作品では、絵が落ちて仕舞います。

   c) 擦傷とは、強く擦れたり、作品同士の衝突などの結果、線状の傷が出来る事です。

     擦傷の最大の原因は、水で洗う事だそうです。昔は、ほとんどの場合、井戸水や川の水で

     洗う事が多く、微細な砂が含まれる事もあった様です。その結果擦傷が発生します。

   d) 人為的に「擦れや擦傷」を付ける。

     贋作や新陶磁器の表面に故意に、「擦れや擦傷」を付ける事で、古陶磁に見せ掛けます。

    ・ 紙ヤスリ(サンドペーパー)や砥石(といし)などを用いて、釉の表面に傷を付ける

      方法です。

    ・ 自然に出来た「擦れや擦傷」は変化に富んでいますが、人為的なものは。単調な傷と

      成っている場合が多いです。

    ・ 意図的な「擦れや擦傷」の種類

     イ) 本来あるべき口縁や角に無く、スレが発生し難い面などに傷がある物。

     ロ) 擦傷が同一方向に、同じ調子で何本も入っている物。自然な物は、長い年月を掛

       けて、色々な方向や、強弱のある力で傷が入りますので、太さや長さ深さなど複雑な

       擦傷になります。

     ハ) 弗化(フッカ)水素や、目の細かい紙ヤスリ(1500番以上)を用いて釉の艶消し

       を行った物です。

     ニ) 作品の表面に均一に発生した「擦れと擦傷」も人為的に付けた可能性が大きいです

    e) 「擦れや擦傷」は、斜め方向から光を当てると、よりハッキリとした形が見えます。

   ) ホツとニュウに付いて。

以下次回に続きます。

 参考資料: 出川直樹著 「古陶磁、真贋鑑定と鑑賞」 講談社発行。
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